日常生活から蛍光灯が一掃され、どこもかしこもLEDライトに替わっているわけだが、映像業界ではそれより早くLED化が進んでいる。様々に形を変えられるLEDはアイディア一つで光の質も色もガラリと変えられる。
特に今回のInter BEE 2024はその傾向が顕著に出ていて、ホール6に設定されたエンターテインメント/ライティング部門のエリアではライトメーカーがこぞって自社の特色を出せるライトを所狭しと配置している。各社メーカーそれぞれの特色が顕著に出始めたLEDライトやそれ以外のライト、またはライトアクセサリーで筆者の気になったものをいくつか紹介していこう。
Aputure
高い信頼性で映像業界や写真業界をも席巻しているAputureだが、今回の目玉と言えるのはブースの天井を埋め尽くす感じでトラスに備え付けられた「INFINIMAT 20’×20’」だろう。
これだけ大型のスクエアな照明を実現できるのはAputureならではと言えるだろう。INFINIMAT 20’×20’はINFINIMAT 8’×8’を4セット組み合わせて構築されていて、バルーン状のソフトボックスパックが発光面の全体を覆い柔らかな光を作り出している。
もちろんカラーコントロールに定評のあるAputureだからこその幅広いカラーコントロールが可能で、2,000kから10,000kまでの色温度コントロールやガンマとマゼンタの調整、そしてRec.2020までカバーしているすぐれものだ。ブースには20’×20’よりも小型な1’×2’や1’×4’などのパッケージも設置してあるのでぜひ足を運んでいただきたい。
NANLITE
照明業界では定番と言えるNANLITEだが、ブースを見回して筆者が一番気になったのは水浸しになっている照明機材だ。
なんということでしょう… 照明機材を冷やすのに一番手っ取り早い水をぶっかけるということが実際に行われているのかという衝撃を覚えたが、そうではなく防塵・防滴性能を実際に目にしてもらうために水浸しにしているという。
それもNANLITEのフラッグシリーズと言える「Evoke 900C」が水浸しになって展示されているのは本当に衝撃だが、実はすごく理にかなった製品だと言える。ロケ先で突然の雨や雨のシーンを撮影する場合には、養生する手間と時間を考えれば本当にありがたく、演出の幅も広がるというものだ。
ぜひ会場で水浸しのEvoke 900Cをご覧いただき、他のNANLITE製品もご確認いただければと思うところだ。
KPI
KPIでも様々な特色を持った照明機材が展示されているが、やはり一番目をひくのは大きなLightstarの「LMSA-P2000T」だ。サイズは900mm×3,000mmと大型で、出力は2,000W。CRIは95、TLCIは97と安定した光源で、バルーンタイプのならではの柔らかい光を作り出している。2,700kから10,000kと色温度も当然コントロールでき、光源の芯もうまく拡散されていて柔らかい光が作り出されている。
LMSA-P2000Tは参考出品とのことだが、その下のクラスのLMSA-P1000Tや円形のLMSA-P1000やLMSA-P500も展示されているので、そのへんも含めて実際に柔らかい光を体感していただきたいと思う。
Phottix
大型ではないものの、目を引いたのがPhottixの「C60a」だ。Inter BEEの会場でよく見かけるのはバルーンタイプのディフューザーで拡散光を生み出している製品が多い中、C60aはLEDのパネル自体を湾曲させている。これは、何が違うかといえば光源の芯の残り具合が変わってくる。
バルーンタイプのディフューザーは光源の芯が残り光にムラができてしまう分、うまく使えば綺麗なグラデーションを作り出すことができるが、これは使い慣れたプロができる技だ。片やC60aは芯のない光を作り出してくれるので、誰にでも使いやすい光を提供してくれるのだ。
また最大出力は50Wで色温度は2500kから8500kでコントロールでき、ガンマとマゼンタの調整も行えるようになっている。芯のない光を求めるならこの一台という製品だろう。
SMDV
ライトメーカーではないが、今回のInter BEE 2024では注目を集めているライトアクセサリーメーカーのSMDV。ここではやはりFlip Bounceを簡単に紹介したい。
一見するとバルーンタイプのソフトボックスと思われるかもしれないが、上記でも述べたようにバルーンタイプのソフトボックスでは光源の芯が残りやすい。まんべんなく同じ光量でライティングしたいとなると面倒なことになりがちだ。 そこを解決してくれるのがFLIP BOUNCEの考え方で、光源から放たれた光を直接ディフューズするのではなく一度バウンスさせてからディフューズさせている。それにより、広い光源をディフューズさせていることになり、より光源の芯が残らない美しいライティングを行えるようになっている。
今回、サイズのラインナップも3種類に増えたので、そのへんの違いなどもぜひ会場でご確認いただければと思う。
以上、3日間にわたり駆け足で紹介してきたが、筆者も3日間では到底回り切ることができていない。筆者が注目したポイントが偏っていることなどはお許しいただければ幸いだ。
ただ、年に一度の映像の祭典がこうして60回を数え、コロナ禍なども乗り越えて今年も開催されたことは映像業界にとってはありがたいことである。また来年今年以上に盛況になることを願ってやまない。