txt:ざきさん 構成:編集部
暑い中国で熱いBIRTV2025開催
2025年7月23日から26日までの4日間、中国の北京にある中国国際展覧センターでBIRTV2025(中国放送機器展)が開催された。このイベントでは自国中国の企業が数多く出展し賑わいを見せていた。映像・配信ディレクターであるザキさんこと私が特に注目したブースを偏愛を持って紹介する。
ソニー:PXW-Z380(中国型番)に注目集まる!
昨年に引き続き、本展示会開催直前に新製品を発表したソニー。
初日にお披露目イベントがあり、実機ももちろん展示されていて、非常に注目を浴びていた。
PXW-Z300(中国において型番はZ380)
PXW-Z280の後継機ということで、3連リングのフルマニュアルが復活。前回のPXW-Z200で搭載されていたオートフレーミング機能も搭載。
特徴的なのがビューファインダーが取り除かれて、その部分にMIシューが配置されたこと。それによって、よりコンパクトになってカメラカバンへの収納も容易になった。
さらに、USB Power Delivery (PD100W以上) 対応で電源供給が可能に。バッテリー切れやAC電源を忘れても手持ちのPDがあれば簡単に電源確保しやすくなった。ファインダー部分もフレキシブルLCDアームが搭載され、ファインダーのポジションによっては見辛かったりすることもあったが、アームの動きの自由度が増したためより使いやすくなっている。
プロフェッショナル需要に向けての機種となっていた。
ソニーは中国のカムコーダー需要を非常に意識した展開をしていたのがとても印象的だった。
実際に持ってみた感想は、
- グリップの位置が変わったことによって、持った時のバランスは良くなったと感じた
- ビューファインダーがなくなったことは賛否両論あると思うが、コンパクトになったのは良いと感じた
- シネマラインのUIになったZ200と違い、PXW-Z280のメニューを引き継いでいるためZ300に乗り換えても違和感がない操作ができるのがとても良いと感じた
富士フイルム:シネマカメラ「GFX ETERNA」やポータブルレンズ「LA30x」レンズに注目
2025年に正式発表されるという富士フイルム初のシネマカメラ「GFX ETERNA」も中国においても注目度の高いものになっている。CineGear2025でのアップデート以来、今回のBIRTV2025で新たな発表はないため、レンズの紹介をしたい。
FUJINON LA30x7.8BRM-XB2
富士フイルムは新製品「LA30x」レンズを紹介。これは従来の「LA16x」モデルの後継で、ポータブルレンズとしては最大の30倍ズームと4K高画質に対応する。
また、20ピンインターフェースを備え、ロボット撮影システムにも利用可能。さらに、中国市場で需要が高い縦型動画撮影にも対応しており、今回は縦撮影用のデモ展示も準備している。
YoloLiv:ライブ配信エコシステムを強化する最新カメラとスイッチャーを発表
YoloLivは、ライブ配信向けに最適化された新製品群を展示。ブースでは、「YoloCam S7」「YoloCam P7」、そして新型スイッチャー「Yolobox Extreme」を中心に、配信エコシステムの未来を提示した。
YoloCam S7:ライブ配信・ライブコマースに特化
「Yellow Cam S7」は、ライブ配信やライブコマース用途に特化したミラーレスカメラ。マイクロフォーサーズ(M4/3)マウントを採用し、パナソニックやオリンパス製のレンズに対応する。現行モデルではコントラストAF(AF-C)を搭載しているが、次期モデルでは位相差AF(PDAF)へのアップグレードが予定されている。
特筆すべきはAIコンポーザー機能で、撮影環境に応じて自動的に画質を最適化。ISO感度は100〜400まで対応しており、ローライト環境でも安定した描写を実現する。販売開始は8月末〜10月末が予定されている。YoloCam P7:PTZ機能付き、ワイヤレス100m伝送対応
「YoloCam P7」は、4K 60fps対応のPTZカメラ。YoloLiv製スイッチャー「YoloBOX」と組み合わせることで、最大100メートルまでのワイヤレス接続が可能。内蔵バッテリーで最大4時間駆動でき、コンサートやスポーツなど、電源が取りづらい現場での運用にも最適だ。
Yolobox Extreme:プロ仕様のスイッチャーが進化
2025年3月に発売された「Yolobox Extreme」は、11インチのOLED大画面を搭載したオールインワン型スイッチャー。HDMI入力は8系統(うち4系統が4K対応)、出力2系統に加え、USB、ラインイン、Type-C端子も備える。プロ仕様の「プレビュー/プログラム」表示に対応し、従来モデルと比較して大幅に操作性が向上した。
内蔵バッテリーは最大10時間の連続使用が可能。最新のSnapdragon 8 Gen2を搭載し、処理能力も飛躍的に向上している。
総評
YoloLivは「配信に必要なカメラ+スイッチャー+ワイヤレス伝送」を一体化した独自のエコシステムを提案。特に、モバイル性と画質、操作性のバランスに優れた設計は、プロ・セミプロを問わず注目に値する内容となっていた。今後の正式リリースに期待がかかる。
PMI:一度は使ってみたい!ポータブルスモークマシン「Smoke Ninja Pro」
PMIブースでは、ポータブルスモークマシン「Smoke Ninja Pro」が注目を集めていた。今回披露されたのは、第3世代にあたるハンドヘルドタイプのスモークマシン。軽量・小型ながら、プロの現場でも活用できるパワフルさと安全性を兼ね備えている。
わずか3分の噴出で最大約100m2(約1,000平方フィート)をカバー可能。スチル撮影や小規模スタジオでの映像収録に最適だという。また、アタッチメントの付け替えにより、スモークの質感を自在に変化できるのも特徴のひとつ。アクセサリーなしでは密度の高い濃いスモーク、ノズルを変えれば霧のような繊細な演出も可能だ。
本体はUSB-Cで充電可能なリチウムイオンバッテリー式。着脱も簡単で、起動もほぼ一瞬。すぐに演出を始められる即応性が心強い。
安全性にも徹底して配慮されている。使用されているのは「植物性グリセリン」。万が一の吸引や誤飲、目への接触にも問題がないと複数の試験で検証済みだ。
演出モードは3種類。
- Fogモード(霧)
- Dry Iceモード(ドライアイス風のもくもく煙)
- Steamモード(湯気のような繊細な煙)
さらに、別売りアクセサリーを装着すれば、スモーク入りバブル(煙の入ったシャボン玉)の生成も可能。ライティングと組み合わせることで幻想的な演出が広がる。
遠隔操作が可能なリモコンも同梱されており、演者が身に付けて煙を出すといったギミック演出にも対応。ウェディングフォトやポートレート撮影、ステージ演出など幅広いクリエイティブに対応する、新たな表現ツールとなりそうだ。
Smoke Ninja Proは、クリエイターやアーティストの表現力を解放するためのツール。誰でも簡単に"魔法のような"演出を生み出せる
と、担当者は語る。今後、日本市場での展開にも期待が高まる。
OSEE:コンパクトスイッチャーミキサー「GO STREAM X3」
個人的に一番気になったのは同社のコンパクトスイッチャー&ミキサーの「GO STREAM X3」。
非常にコンパクトで軽くてボタンのライトがカラフルで可愛らしいこの製品。
HDMI inが3つとHDMI outが1つ、AudioはXLRが2つとLINE、その他サウンドパットも付いていて小さいのに内容が充実している。サイドにはSDカードも挿入できるので、レコーディングも可能。
お守り代わりに持つのにもちょうど良いこの製品。非常に欲しいところだったが、Audio入力でBluetooth対応という部分が日本で販売するためには技適申請が必要なため、発売はしばらくないとのことだ。
しかし、こういう製品こそすごく面白いし使ってみたいと思えた製品だ。技適が通って日本に来てくれるのを望むところだ。
キヤノン:縦型のショートドラマ撮影に対応

日本では縦型動画の撮影というとライブコマースでの用途と考えがちだが、近年中国ではライブコマースのみならず、縦型のショートドラマコンテンツが流行っている。
その傾向を踏まえてキヤノンではカムコーダーやシネマカメラも縦型撮影を意識した展示がされていた。
XF605、EOS C80、EOS R5 Cが中央で縦型で展示されており、縦型撮影の需要の高さが伺える。さらに縦型でカメラを使用するとUIも中のメニュー表示も縦型に適した表示になっており、縦横どちらで使用しても使いやすいし、キヤノンの縦型動画撮影に対するこだわりを感じる。
ざきさん(tot,Inc.)|プロフィール
ディレクター / 旅人
1983年埼玉県生まれ。派遣OLの傍ら音楽活動していた生活からパンデミックをきっかけに映像業界へ転身。
撮影から配信までこなし、機材とお酒と旅をこよなく愛す。