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欧州では、ニュース制作現場においてもIPベースのインフラ活用が広がりつつある。今回紹介するのは、英国ITN Productions社(以下:ITN)が新たに立ち上げた低遅延IP対応のプロダクションコントロールルーム(PCR)の事例だ。本プロジェクトは、放送インフラのIP設計を専門とする英TecheX社がシステム設計・統合を担当し、TAG Video Systems社(以下:TAG)およびMatrox Video社(以下:Matrox)の技術を組み合わせて、ライブニュース速報向けに高い応答性を実現するソフトウェア定義型モニタリング/マルチビュー環境が構築された。

ニュース制作に求められる"低遅延"と"柔軟性"

ITNは、大手公共放送局のデイリーニュースを2つのニュースルームから制作・配信しており、今回のプロダクションコントロールルーム(PCR)の新設では、制作におけるレイテンシーの低減と高い柔軟性の両立が大きな目的とされた。

システムの中核を担うのはTAGの「Realtime Media Platform」。Matroxの「Convert IP」デコーダーを組み合わせることで、新PCR内において応答性が高く、構成変更可能なモニタリング環境を実現している。

TechexのSenior Strategic Account Manager – Global AccountsであるJohn Treadwell氏は次のように述べている。

Treadwell氏:TAGとは長年のパートナーであり、今回のTAGとMatroxの統合を活用したシステム設計において、当社の経験を最大限に活かすことができました。ITNと緊密に連携しながら要件定義、設計検証、プロジェクト遂行を進めました。稼働開始後も、システムの進化を支援する形で協力関係は続いていきます。

ソフトウェアベースの統合モニタリング基盤

TAGのRealtime Media Platformは、プロービング、モニタリング、可視化、分析機能を統合したソフトウェアベースのプラットフォームである。適応型アーキテクチャにより、効率的な負荷分散、高速なモザイク生成、リアルタイムトランスコードをすべてIPドメイン内で実行できる。

ITNは新PCRにおいてSMPTE ST 2110およびJPEG XS対応を活用し、ライブニュース制作向けに将来的な拡張にも対応できるモニタリング基盤を構築した。

1〜1.5フレームの超低遅延マルチビュー環境

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今回のシステムで特筆すべきは、マルチビューワー表示における低遅延性能だ。遅延は1〜1.5フレームにまで低減された。これは、PCR内の10台の4Kマルチビューディスプレイを駆動するMatroxの「ConvertIP」(ST 2110 – HDMIインターフェース)によって実現している。

ITNのLead Media EngineerであるJames Wickes氏は次のように語る。

Wickes氏:TAGの導入により、従来型制作サブで求められていた低遅延と信頼性を維持しながら、オールIPモニタリングワークフローの俊敏性を実現できました。Matroxの「ConvertIP」は画面上でその応答性を提供し、さらにTechexが両社の技術を一体化したアーキテクチャとしてまとめ上げてくれたことで、制作ワークフローを将来にわたり支えるサブを構築できました。

この低遅延は、「ConvertIP」デコーダーがIP信号をネイティブHDMI出力へと変換する際、確定的なタイミング制御により体感上ほぼ遅延を感じさせない設計によって実現されている。10台すべての4Kディスプレイ間でフレーム精度の同期を維持できるため、オペレーターがソースを切り替える際に不可欠な「ライブ感」を損なわない。

MatroxのTechnical Marketing ManagerであるDaniel Maloney氏は次のように述べている。

Maloney氏:Matrox ConvertIPシリーズは、まさにこのようなプロジェクトのために設計されました。複数の4Kディスプレイ環境でこれほど低遅延なマルチビュー性能を実現したことは、強固なパートナーシップがIPベースのコントロールルームに即応性と信頼性をもたらすことを示す好例です。

柔軟性と即応性を両立するIPネイティブ環境

低遅延に加え、TAGのOperator Consoleにより、PCR内の担当者は現在の制作内容に合わせてマルチビュースクリーン構成を迅速に変更できる。必要な情報を自ら選択・配置できるため、制作現場の主体性を高める設計となっている。

TAGのChief ArchitectであるPaul Briscoe氏は次のように説明する。

Briscoe氏:ITNの新PCRは、IPネイティブなモニタリングが放送品質の応答性に到達できることを示す好例です。ニュースルーム環境では、情報伝達の即時性が極めて重要です。同時に、ソフトウェア定義システムの柔軟性も求められます。本プロジェクトは、先進的なオールIPコントロールルームがライブ制作のリアルタイム要求を十分に満たせることを実証しました。TechexのアプローチはTAGとMatroxの強みを統合し、ITNがインフラではなく制作そのものに集中できる環境を実現しました。

ベースバンド同等の即応性を実現したIP制作環境

新PCRの本稼働により、ITNは従来のベースバンド環境に匹敵する即応性を維持しながら、IPネイティブ設計をベースとした、より柔軟で適応力の高いコントロール環境を手に入れた。

本プロジェクトは、緊密なパートナーシップによって実現された成功事例であり、標準規格に基づく低遅延モニタリングおよびマルチビュー環境が構築可能であることを示す実証例といえる。

Matrox ConvertIPシリーズ

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Matrox ConvertIPシリーズは、あらゆる環境でIP伝送への移行を可能にする、柔軟性の高いAV over IP対応のエンコーダー/デコーダー。SMPTE ST 2110およびIPMXに対応し、HDMI・SDI・HDBaseTとの相互変換をサポートする。 非圧縮・圧縮の両形式に対応し、 高品質で低遅延なIPベースの映像伝送を実現する。

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