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SIGGRAPH 2026会場となった米国ロサンゼルス・コンベンションセンター

AI全盛の今、CG/VFX業界ではどんな変化が起きているのか

毎年北米で開催されるコンピュータグラフィックスの学会、祭典であるSIGGRAPH 2026が、今年は米国ロサンゼルスで開催された。

SIGGRAPH(シーグラフ)は、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する世界最大級の歴史ある学会・展示会である。第53回となるSIGGRAPH 2026は、2026年7月19日から23日までの5日間、世界69カ国から、9500人以上の参加者を集め、米国ロサンゼルス・コンベンションセンターで開催された。

SIGGRAPHには、コンピュータグラフィックス、映像制作、アニメーション、VR/ARやゲームを含むインタラクティブ技術の研究者とクリエイター、製品を開発する企業が一堂に会する。新しい映像作品を上映する映画祭でもあり、最新機材を展示する見本市であり、研究論文を発表する学会でもある。産業界と学術の領域を同じ会場で横断して見られることが、SIGGRAPHの大きな特徴だ。

SIGGRAPHで発表された技術は、数年後の映画やゲーム、CM、放送、ライブイベント、映像機器に組み込まれていく。映像作家にとっては新しい表現や制作手法に出会う場所であり、映像プロダクションにとっては、制作工程や人員配置、ツール選定が今後どう変わるかを考える場所である。

映像機器企業にとっては、カメラ、ディスプレイ、レンダリング、伝送、撮影支援技術が、今度どのような制作環境が主流となっていくのかを見極める場所ともいえる。

AI全盛の今、SIGGRAPH 2026で目立ったのは、AI単独の話題ではなく、映像制作のあらゆる工程に入り始めたことだ。

AIで画像や動画を自動生成するだけではない、3Dモデルの作成、キャラクターの動き、リアルな髪の毛や群衆の動きの調整、複雑な背景制作、物理シミュレーション、映像プレビュー、素材のレビュー、完成映像のレンダリングまで、AIが制作環境の全ての工程に組み込まれつつあるのが現在の状況だ。

同時に重要なのが「即時性」である。完成まで長時間待つのではなく、演出や照明、質感、動きをその場で確認しながら変更する。ロケ地での撮影とバーチャルプロダクション、時間をかけた高精細なCGレンダリングの映像とゲームエンジンで生成した映像の境界は、さらに曖昧になった。さらに近年、AIエージェントがCG/VFXツールと連携し、素早く試し、試作を比較し、判断するまでの時間をさらに短縮しようとしている。

それらの状況を反映し、今年のSIGGRAPHは、単純な「AIによる自動化」の展示会ではなかった。Computer Animation Festivalや映画制作のセッションで繰り返し示されていたのは、AI技術が目立たなくなるほど、物語、演出、造形、感情表現が、今後さらに重要になるということだ。

制作が速くなり、誰もが高度な映像を作れるようになるほど、いったい何を描くのか、どこをどう判断するのかこそが人間の役目となってきたのが実感される。人間がAIやリアルタイム技術を使いながら、どれだけ自由に考え、試し、選べるのか。映像制作の競争力が、単純な処理速度から「試行錯誤の回数と速度」の勝負へ移り始めたことが、今年のSIGGRAPHから強く感じられた。

Computer Animation Festivalのアワード(表彰)より

SIGGRAPHの人気カテゴリの一つに、Computer Animation Festival(CAF)がある。短編アニメーション、学生作品、映画VFX、ゲームシネマティック、科学技術映像など、コンピュータグラフィックスを活用した幅広い映像作品を紹介し、優秀作品を表彰する枠組みだ。

さらにその中から選ばれた優秀作品は、会場の大スクリーンで上映されるElectronic TheaterやAnimation Theaterで紹介される。

SIGGRAPH 2026では431作品の応募から43作品が選出された。選出率は約10%という狭き門である。今年の受賞作には、歴史、差別、家族、喪失、包摂性といった、人間の社会性を扱う作品が多い傾向がみられた。

一方で、『The Lost Bus』『The Witcher Season 4』『Untitled John Wick Game』など、映画、配信ドラマ、ゲームの最前線を示す大型作品も選ばれている。今年のCAFから見えてきたのは、CGが「現実には存在しないものを見せる技術」から、「現実に起きたことや、人間が持つ根源的な感情を、より深く体験させる技術」へと広がっていることだ。

Best in Show(グランプリ)
[Apart]

監督:Pola Maneli
制作:Social Popcorn Films

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Apart 作品の一部
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監督Pola Maneli氏、受賞の様子

Apart 公式予告編

舞台はアパルトヘイト体制下の南アフリカ。人種によって社会が分断されていた時代に、境界を越えて友情を育む二人の少年が描かれる。ある命を救う行動をきっかけに、二人は自分たちを隔てる憎悪と向き合うことになる。

脚本には著名な映画監督Spike Leeも参加している。本作は、伝統的な手書き風アニメーション、3DCG、2.5次元表現という手法を組み合わせている。約1万8,000フレームを、250人以上のクリエイターが制作した大規模な短編だ。

版画や木版画を思わせる荒々しい線と質感は、南アフリカにおける反アパルトヘイト運動のポスターでよく見られた表現を想起させる。滑らかで均質なCG映像を目指すのではなく、印刷物のかすれや切り絵の不安定さをあえて探すことで、過去の記録が動き始めたかのような感覚を生み出している。

映像表現の技法そのものが、作品の歴史的メッセージになっているのが特徴の作品だ。

Best Student Project(学生奨励賞)
Beyond Words(フランス語表記でAu-delà des Mots)

制作:Creative Seeds(フランス)

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Beyond Words 作品の一部
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監督のAntoine Barbannaud氏ら受賞の様子

北欧神話を思わせる世界を舞台に、父を亡くした少女と、戦いへ向かう母親の関係を描いた作品。
母娘の間に生まれた距離や不安が、謎めいた狼の姿となって現れる情緒的な作品。
題名の『Beyond Words(言葉では言い表せない)』が示すとおり、台詞で説明するのではなく、表情、身体の動き、視線、生き物の存在によって、言葉にできない感情を表現している。

制作には、Creative Seeds校が持つ独自の「Hunter」という制作パイプラインと学内のモーションキャプチャ設備を使用。130以上のショット、毛皮と布のシミュレーション、6体のキャラクター、複雑なフェイシャルアニメーションが組み合わされている。

注目すべきなのは、技術要素の多さで勝負するのではなく、映像表現のすべてが、母娘の心理的な距離を描くために演出されている点だ。この作品への評価から、学生作品であっても、単に商業映画の品質へ近づくことだけではなく、独自の世界観や感情表現をどう成立させるかが重視されていることがうかがえる。

Jury’s Choice(審査員特別賞)
18 Months

監督:Paulo Garcia、Natalia Gouvea
制作:Zombie Studio

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18 Months 作品の一部

ニューヨークの地下鉄駅で、生まれたばかりの赤ん坊が発見される。
その子を見つけたDannyと、パートナーのPeteが、やがて赤ん坊を養子として迎えるまでの実話をもとにしたストップモーションアニメーション作品である。

題名の「18 Months」は、二人が赤ん坊を家族として迎えるまでに歩んだ18カ月の道のりを示している。

「親になるとは何か」「家族とはどの時点で生まれるのか」を観客に考えさせる作品だ。手作りの人形とセットを用い、ソフトウェアは主に編集や画面上の修正に限定している。最先端CG技術の場であるSIGGRAPHで、あえて手作業中心の作品が高く評価されたことは興味深い。

一コマずつ人形を動かす時間が、家族が少しずつ形成されていく時間をうまく表現しており、わずかな動きの揺らぎが登場人物の戸惑いや喜びを伝えているのが特徴だ。

The Lost Bus

監督:Paul Greengrass
主演:Matthew McConaughey

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The Lost Bus 撮影風景

Apple TV公式予告編

2018年にカリフォルニア州で発生した大規模山火事、キャンプ・ファイアを背景に、スクールバスの運転手と教師が子どもたちを避難させようとする物語。Apple TVで配信されている。

本作には複数のVFXスタジオが参加している。CAFではCinesiteが手掛けた映像が選出される一方、SIGGRAPH 2026のProduction Sessionでは、aが別の角度から制作過程を紹介した。

チームはUnreal Engine上に北カリフォルニアの広域なデジタルツインを構築し、バーチャルロケハン(ロケ地を探して決める)、交通シミュレーション、撮影計画に活用したのが本作の特徴。

撮影計画が変更された際には、実写を予定していた一部の場面をフルCGへ切り替える対応もできたそう。

デジタルツインによるリアルタイム撮影技術の価値は、完成映像をそのまま描画するためだけのものではない。撮影前にカメラ位置や車両の動きを検証し、実写とCGの境界を事前に設計する「試作のための映像」として使われている。

映画VFXが、撮影後に映像を修正する工程から、企画、撮影、編集、VFXを一体化したプロダクション全体の設計へ変わっていることを象徴する事例だ。

The Witcher Season 4

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The Witcher Season 4の1シーン

Netflix公式予告編

Netflix配信の大規模ファンタジーシリーズ『The Witcher Season 4』も、CAFのAnimation Theaterに選出された。

Cinesite社がVFX制作に参加し、VFX、CG、コンポジット、アニメーション、クリーチャー、FX、環境、ロトスコープアニメーションなど、多数の部門がクレジットされている。

古代や異世界をテーマにしたファンタジー作品では、怪物や魔法だけをCGで作るのではない。城、森、戦場、群衆、空、地形、衣装の一部、身体の損傷表現まで、画面のほぼすべてが、さまざまなデジタル処理を受けている。

しかもテレビシリーズでは、映画よりも短い納期で多数のエピソードを完成させなければならない。そのために重要となるのは、一枚のすごいCG/VFX映像だけではなく、複数拠点での制作や、制作メンバーが変わっても品質を安定させる制作パイプラインである。

映画級のVFXを、毎話、一定の品質で生産する仕組みそのものが現代の映像制作の競争力になっている事例だ。

Untitled John Wick Game – Reveal Trailer

開発:Saber Interactive
映像制作:DIGIC Pictures

Saber Interactive公式リビールトレーラー(初お披露目の予告編)

『Untitled John Wick Game – Reveal Trailer』は、Electronic TheaterとAnimation Theaterの双方に選出された。

映像には、雨に濡れたニューヨーク、ネオン、黒いスーツ、銃器、暗い室内など、キアヌ・リーブス主演の人気アクション映画『John Wick』シリーズを特徴づける視覚要素が登場する。

『John Wick』の本質は、単なる銃撃戦ではない。カンフーのような近接格闘と射撃を連続させる、流れるような身体の動き、照明と美術による非現実的な都市空間、暴力を儀式のように見せる編集とカメラワークが、『John Wick』シリーズ固有の映像言語を形作っている。その表現のファンも多い。

ゲームでは、そういったファンが好む要素をゲームプレイヤー自身が操作できる仕組みに変換しなければならない。

選出された映像は、完成版のゲームプレイそのものを示す映像ではないが、映画の視覚的DNAを、ゲーム内の世界、キャラクター、アクションへどう移植するかを示す良い事例となっている。

ゲームの映像そのものが独立した映像作品としてCAFに選出されることも、近年、映画、ゲーム、リアルタイムCGの境界が薄れていることの表れだ。

今年の受賞作と注目作品に共通するのは、CGやAI技術そのものを見せることを最終目的にしていないことだ。

『Apart』の複合的なアニメーション技法は歴史を現在へつなぐために、『Beyond Words』のキャラクター技術は母娘の感情を伝えるために、『18 Months』のストップモーションは家族が形成される時間を見せるために使われている。

『The Lost Bus』の炎とデジタルツイン、『The Witcher』の大規模VFXパイプライン、『John Wick』のゲーム映像の表現も同様だ。

技術が成熟するほど、観客に意識されるのはソフトウェアではなく、複雑な人物の感情、映像から感じられる炎の熱さ、見たことのない怪物の重さ、映像から容易に想像できる都市の湿度といった表現である。ある意味今年のCAFで高く評価されたのは、技術を忘れさせるほどの表現を持った映像作品だったのかもしれない。

Real-Time Live!(リアルタイムCGデモの発表)より

(約1時間20分の全編公開)

SIGGRAPHの目玉イベントの一つであるReal-Time Live!は、リアルタイムCGに特化したデモンストレーションイベントである。

生成AIによる3Dアセット制作、解剖に関する科学映像、髪の毛のモデリング、プログレッシブレンダリング、キャラクターロボット、ライブ映像加工、会話型AIキャラクター、巨大ジオメトリの圧縮再生という全8件のデモが披露された。

ここでは、その中でも特に今後の映像制作との関係が深い3件を取り上げたい。

Real-Time Live!では、完成した映像を上映するのではなく、ステージ上で技術を実際に動かしてみせる。採択チームは限られた時間の中で、事前収録映像に頼らず、その場で入力し、その場で結果を示す。

処理が止まる、ネットワークが遅れる、ロボットが思いどおりに動かないといったリスクも含めて、技術が本当にリアルタイムであることを観客に証明する場でもある。

今年のラインアップを通して見えてきたのは、「リアルタイム」という言葉の意味が変わったことである。

これまでは時間のかかっていた表現がリアルタイムでできていることが評価されてきた。今年は、人間の言葉、会話、身体動作、編集操作に、システムがその場で応答することが重視されている。

リアルタイムは表示速度から、人間とコンピューターの間に成立する「応答」のリアルタイム性へと広がっているのだ。

Create Interactive 3D Assets in Seconds!(Best in Show受賞)

発表:2023年創業の生成3D AI企業VASTと香港大学の研究者らが率いるチーム

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3Dアセット生成の様子
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会場の観客からのプロンプト(指示文)から3Dアセットを生成している様子

入力画像から、テクスチャ、リグ(骨格)、アニメーションを備えた3Dアセット(素材)を数秒で生成するシステム。静止した3D形状を作るだけではなく、生成されたキャラクターや物体は骨格を持ち、動かせる状態で3Dシーンへ追加される。

ステージでは、観客が自分のスマートフォンからプロンプト(指示文)を送り、その入力をもとに生成されたアセットが画面の同じシーンへ次々に登場した。

観客は完成したデモを見るだけでなく、デモの内容を変化させる参加者にもなったのだ。

従来の3D制作では、モデリング、UV展開、テクスチャリング、リギング、アニメーション設定が、それぞれ独立した工程として存在した。

このデモは、それらを短時間で連結し、プロンプトから動くアセットまでを一つの流れにまとめる。

実際の商用制作には、形状やリグの精度、アートスタイル、物理挙動、権利処理などのさまざまな課題が残るが、企画会議、プリビジュアライゼーション、教育、参加型イベントでは、3Dコンテンツ制作の入口を大きく広げる技術だ。

Olaf: Bringing an Animated Character to Life in the Physical World

発表:Disney Research

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映画とそっくりな動きをするオラフのロボット

そう、あの『アナと雪の女王』の気さくな雪だるまオラフを、物理的なロボットとして動かすデモだ。

オラフはアニメーションの中では自由に身体を変形させることができ、頭が大きく、首や脚が細い。通常の歩行ロボットとは大きく異なる身体比率を持つため、単純に二足歩行技術を当てはめるだけでは、オラフらしい動きにならないのだ。

Disney Researchは、アニメーターが作った参照動作と強化学習を組み合わせ、オラフらしい動きを物理ロボットへ移した。二本の非対称な脚を柔らかなフォーム素材の外装内部に隠し、腕、口、目には限られた空間へ収めるための特殊な機構を用いている。

強化学習では、歩行の安定性だけでなく、着地時の衝撃音を減らすことも評価基準に含めたそう。大きな頭を動かす首のアクチュエーターが過熱しないよう、温度情報も制御に組み込んでいる。雪だるまだけに熱に弱いのだ。

ディズニーリサーチが目標としたのは「転ばずに歩く産業用ロボット」ではない。観客がオラフだと感じるロボットを作ることだ。

物理的に最適な動きと、キャラクターとして正しい動きは必ずしも一致しない。強化学習やPhysical AIが、工場や物流だけでなく、物語と感情を持つキャラクター表現にも使われ始めたことを示す象徴的なデモであった。

Runway Characters: Real-Time Expressive AI Characters from a Single Image

発表:Runway

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Runway Charactersで生成されたキャラクター群
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1枚の猫画像から、AIキャラクターとして対話している様子

解説動画

一枚の画像から、会話に合わせて表情、口、頭部を動かすリアルタイム映像キャラクターを生成するシステム。写実的な人物だけでなく、イラスト、アニメキャラクター、ファンタジー上の生物、企業マスコットなどにも対応し、キャラクターごとの追加学習を行わずに動かせるとされている。

利用している AIシステムは RunwayのGeneral World Model「GWM-1」を基盤とし、完成したフレームから順番にストリーミング配信される。一般的な生成動画モデルが、始まりと終わりのある短い映像を作るのに対し、Runway Charactersが作るのは、会話が続く限り生成され続ける映像だ。

キャラクターは完成した映像作品ではなく、その場で振る舞う AIエージェントになる。接客、学習支援、ゲームキャラクター、案内端末、ブランドマスコット、オンラインイベントなどへの応用が考えられる。

長時間利用した際の顔や画風の一貫性、感情表現、視線、割り込みへの対応、ネットワーク遅延などの検証は必要だが、一枚の画像を「話し続ける存在」に変えたことは、生成AI映像の大きな転換点といえる。

今回のReal-Time Live!から大きく三つの潮流が見えてきた。

  • 普通に話す言葉、自然言語が制作のための操作方法になったこと
  • リアルタイム技術が画面の外へ出て、ロボットや身体的な学習体験へ広がったこと
  • 最終結果だけでなく、作り、確認し、考え、修正するまでの時間がとても重視されていること

AIが作品を一瞬で完成させることだけが、制作の未来ではない。人間がより多くの案を試し、比較し、判断できるようにすることも、リアルタイムCG技術の重要な役割であることが強く示された Real-Time Live!であった。

SIGGRAPHから読み取れる映像制作のこれから

SIGGRAPH 2026を通して見えてきたのは、AIが映像制作を丸ごと自動化する未来ではなかった。

人間が働きかけ、システムが反応し、その結果を見て人間が次の判断を下す。この循環を、できるだけ途切れさせない制作環境こそがAI時代のCG/VFXだ。

CAFの受賞作では、技術が物語や感情を支え、技術が観客からはわからなくなるほど作品に溶け込んでいた。

Real-Time Live!では、自然言語、身体動作、会話、編集操作に、その場で応答するシステムが並んだ。

今後、映像プロダクションに求められるのは、AIツールを導入したかどうかだけではない。AI、ゲームエンジン、シミュレーション、カメラ、トラッキング、編集環境をどう組み合わせ、人間の判断を、いかに速く、正確に映像制作へ反映していくのか、その工程が問われる。

映像機器メーカーにとっても、高精細、高感度、高速処理といった単体性能だけでは十分ではない。機材がどのようなメタデータを持ち、他のシステムとどう接続され連携し、撮影から仕上げまで一貫して情報を保てるかが、製品価値の一部になる。

低遅延、高精度、操作性、共通フォーマットといった、これまで裏方だった要素が制作現場の競争力を左右するようになってきたのだ。

生成AIの進化によって、とりあえずの映像を作るための技術的なハードルは下がり続けている。だからこそ最後に問われるのは、何を作るのか、なぜ作るのか、どの結果を選ぶのかという人間側の判断である。

SIGGRAPH 2026は、コンピュータグラフィックスが、人間の代わりに完成品を作る技術ではなく、人間と共に考え、試し、次なる映像を作る技術へ変わりつつあることを示していた。

次回のSIGGRAPH 2027は、2027年8月8日から12日の5日間、米国アナハイムで開催されることが発表された。

続くVol.02の記事では、ソニーのOpenTrackIO、映像系の論文から注目の話題をピックアップして紹介する。