北陸放送機器展2026のJVCケンウッドブースで画面を眺めていると、ちょうど今、開催中の軽井沢国際カーリング2026のライブ映像が流れていた。しかも、一つの試合を普通に中継しているわけではない。複数のシートで進行する試合から、見たい映像を一つの画面上で選んで切り替えられる。

展示されていたのは、マルチアングル配信サービス「yourLIVE」のデモである。取材時には、カーリング大会の映像を使った実証実験の画面を見ることができた。

最初は「複数のカメラ映像から好きなアングルを選べるサービス」という理解だった。しかし、実際にカーリングの画面を操作すると、その印象が少し変わった。複数の試合が同時進行する競技では、「どのカメラを見るか」だけではなく、「今、どの試合を見るか」を視聴者自身が選べることにも意味がある。

カーリングを見て、yourLIVEの使い方が見えてきた

デモ画面には複数のシートが表示され、見たいシートを選択すると、その試合の映像を確認できる。さらにカーリングでは、一つのシートでもストーンを投げる側とハウス側で見たい場所が変わる。複数の映像を見ながら、試合の状況に応じて視点を切り替えられる構成になっていた。

実際に画面を見ていると、一つのシートではストーンがハウスへ近づき、その間にも別のシートでは試合が進んでいる。そこで「今はこちらを見たい」と画面を切り替える。配信側が選んだ一つの映像を追うのとは異なり、自分の興味に合わせて試合を行き来できる。

こうした仕組みは、オンライン視聴だけでなく、現地観戦を補完する用途も考えられる。観客席では位置によって見えにくいシートが生まれるが、手元の端末から別のシートを確認できれば、会場内で同時進行している試合を追いやすくなる。

カーリング会場全体を捉えた映像。複数のシートが同時に進行しており、画面上で見たいシートを選択できる
yourLIVEの視聴画面。メイン映像の右側に複数のアングルやハウスを捉えた映像が並び、視聴者が見たい映像を選択できる

ライブ映像を見ながら、気になる場所を拡大

画面を操作していて、もう一つ気になった。今回のデモでは、表示している映像の一部をその場で拡大する操作も試すことができた。

マウスカーソルを見たい場所に合わせて操作すると、そのポイントを中心に映像が拡大される。ライブ映像を見ながら、「ここをもう少し大きく見たい」と思った場所を自分で確認できる。

ハウスを大きく表示したyourLIVEのデモ画面。右側には「アングル1」「アングル2」と二つの「サークル」の映像が並び、選択した映像をメイン画面に表示できる
選手を捉えたアングルをメイン画面に表示した状態。右側のサムネイルから、別アングルやハウスを捉えた映像へ切り替えられる
タブレット上でライブ映像を拡大する様子。画面に触れながら、見たい場所を大きく表示して確認できる

カーリングの映像で試してみると、この操作の意味が分かりやすかった。試合全体を確認するときは広く表示し、選手やハウス付近を詳しく見たいときは拡大する。映像を選ぶだけでなく、選んだ映像をどう見るかについても、視聴者側に操作の余地がある。

通常のテレビ中継では、どのカメラを選び、どこをアップにするかは基本的に制作側が決める。今回のデモでは、その一部を視聴者自身が操作できた。映像を切り替えるだけではないyourLIVEの見せ方を実感できるデモだった。

配信する側の仕組みもコンパクト

視聴画面だけでなく、映像を送り出す側の構成についても説明を聞いた。今回のカーリングの実証実験では、受け取ったSDI映像を変換・エンコードし、JVCケンウッド側のサーバーへ送る構成を採用していた。また、会場全体を捉える映像はIP経由で送信していたという。

今回の構成では固定カメラの映像も利用しており、大がかりな機材を新たに現地へ持ち込むことを前提としていない。既存の映像や固定カメラ、IP伝送などを組み合わせながら、視聴者が選択できる映像を増やしていく考え方である。

マルチアングル配信と聞くと、多数のカメラやスタッフ、大規模な送出設備を想像しがちだ。しかし今回の実証実験では、既存の映像や固定カメラを生かしながらマルチアングル化する構成を見ることができた。

振り返ると、展示会場そのものもマルチアングルになっていた

カーリングのデモを見たあと、もう一つの画面を見せてもらった。そこに映っていたのは、今いる北陸放送機器展の会場そのものだった。

会場内には複数台のスマートフォンが設置され、それぞれがカメラとして映像を送っていた。画面上から見たい場所を選択すると、そのスマートフォンからの映像に切り替わる。先ほどカーリングで見ていたマルチアングルの仕組みを、今いる展示会場でも動かしていたのである。

北陸放送機器展の会場を使ったライブ配信デモ。スマートフォンをカメラとして設置し、その映像をPCやタブレット上で確認していた

映像はWi-Fi経由でライブ送信され、カメラとして使っているのはスマートフォンだ。ブースの説明では、SRTなどで映像を送信できる構成にも対応するという。

会場内に設置したスマートフォンから映像を送信する様子。スマートフォンをライブ映像の入力として利用する構成を実演していた

スマートフォンを設置し、ネットワークにつなぎ、複数地点の映像を一つの画面から選ぶ。展示会であれば、「今どのブースが混んでいるのか」「別の場所では何をやっているのか」といった確認にも応用できる。カーリングとは用途が異なるが、「見たい場所を視聴者が選ぶ」という考え方は共通している。

「アングルを選ぶ」から「見たいものを選ぶ」へ

今回の二つのデモを続けて体験したことで、マルチアングル配信に対する捉え方が少し変わった。カーリングでは「どの試合を見るか」を選び、展示会場では「どの場所を見るか」を選ぶ。単に一つの被写体を複数のカメラから見るだけではない。

カーリングのストーンを追いながら別のシートへ移り、気になる場所を拡大する。そのあと振り返ると、展示会場に置かれたスマートフォンからも映像が届いている。JVCケンウッドブースで体験したのは、カメラアングルを増やすことだけではなく、「何を見るか」を視聴者自身が選ぶ配信の形だった。