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2009 International CESの第1会場ラスベガスコンベンションセンター(左上)。第2会場のサンズエキスポセンター(右上)。ラスベガスコンベンションセンター前に出現するCESロゴ巨大オブジェ(左下)。展示会場内(右下)

2009 International CESの第1会場ラスベガスコンベンションセンター(左上)。第2会場のサンズエキスポセンター(右上)。ラスベガスコンベンションセンター前に出現するCESロゴ巨大オブジェ(左下)。展示会場内(右下)

デジタル家電、オーディオ機器などに関する世界最大の見本市2009 International CES(Consumer Electronics Show、日本語公式サイト、以下CES 2009)が1月8~11日の4日間、米国ラスベガスで開催された。金融危機で景気後退が心配されている米国での開催であったが、昨年と変わらない数の2,700社の出展があった。この出展数は、日本の家電・エレクトロニクス系展示会CEATEC JAPANの4倍ほどの規模になる。

今年のCES 2009においても、各社の新製品が目白押しであり、盛況なブースは昨年以上の盛り上がりであった。CESは一般消費者向けの家電製品を多く取り揃えており、プロ用機器は含まれない。そのため、CESにおけるリサーチや商談次第で、今年1年の大型家電量販店の傾向が分かってくると考えてもいい。

それでは、今後の家電業界の行方を考えるうえで、CES 2009全体を通して今年の傾向を捉え、10のトレンドとして紹介しよう。

PRONEWSが選ぶCES 2009の10のトレンド

1●各社から3D立体視テレビの出展が相継ぐ

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NVIDIAのブースの人気コーナーであった、立体視で楽しむギターゲーム

NVIDIAのブースの人気コーナーであった、立体視で楽しむギターゲーム

各社が立体視専用のメガネを使う 3D 立体視テレビを展示した。ハリウッド映画業界の立体視流行の影響もあって、ホームシアターを想定した特設シアターを設けているところもあった。立体視にはさまざまな方式があるが、主流はRealD社の偏光立体視と、液晶シャッター方式の2つだ。裸眼立体視のディスプレイは歓迎されていないようにみえた。また、NVIDIAによるPCゲームやSONY PS3の3Dゲームを立体視で楽しむデモも見られた。画質が向上したことにより、長時間見ていても目が疲れない機構が、今後の浸透へのキーとなる。

2●テレビやビデオ機器のジェスチャー操作

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テレビのジェスチャ操作例。写真は日立製作所ブースにて

テレビのジェスチャ操作例。写真は日立製作所ブースにて

多機能化、複雑化したリモコン操作は誰もが面倒だと感じているだろう。CES 2009では、手振り身振りを使ってテレビを操作する「ジェスチャー・インタフェース」の試作品が見られた。東芝、日立製作所、パナソニックの各社はプロトタイプデモを公開した。この分野においては、家電業界全体が、より使いやすいもの、解りやすいものを作ろうという意気込みが感じられた。

3●エコとグリーンコンピューティング

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大型テレビの脇には、必ずといっていいほど、消費電力の表示が見られた。写真はパナソニックブース。

大型テレビの脇には、必ずといっていいほど、消費電力の表示が見られた。写真はパナソニックブース。

大型ディスプレイの開発企業はいずれも、いかに電力消費が少ないかをアピールしていた。リサイクルや低消費電力をウリにした「グリーンコンピューティング」が流行し始めている。

4●テレビ上のウィジェットが浸透

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テレビを見ながらYouTubeも見られるサムスンのテレビ

テレビを見ながらYouTubeも見られるサムスンのテレビ

PCの画面上に常駐して、各種情報を表示するためのミニツールがウィジェットだ。CES 2009では、大型テレビもネットに繋がるようになり、ごく普通に画面上にウィジェットを表示できるようになってきた。テレビのウィジェットは、スポーツ観戦、ニュース分野、映画を楽しむときの付随情報などを表示し、テレビをより楽しむための情報として使われているようだ。さらに、テレビだけではなく、カーナビやフォトフレーム、携帯情報端末にウィジェットが載る事例もあった。

5●有機ELディスプレイテレビがさらに新時代に

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ソニーの折れ曲がるOLEDディスプレイ。ビヨンセのPVが表示されている。

ソニーの折れ曲がるOLEDディスプレイ。ビヨンセのPVが表示されている。

ソニーだけでなく、韓国メーカーも、OLED(有機発光ダイオード)方式を使用した美しく薄い有機ELディスプレイを展示した。ソニーの折れ曲がるOLEディスプレイを含め、各社のディスプレイ競争はますます特殊になり、薄く大きくという段階に入っている。その一方で、単なるスペック争いは購買層にとっては意味がないものと気付いてきていることもあり、今後は低価格化が進む段階に入っていきそうだ。ここまでくると、自然と淘汰されていき、付加価値競争へと移っていくだろう。

6●4Kレベルの超高解像度の世界に突入

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東芝のCELL TVは、4K×2K の解像度を誇る

東芝のCELL TVは、4K×2K の解像度を誇る

東芝のCELL TVの存在が際立つが、ついにコンシューマ家電も4K解像度(横4000ピクセルの超高解像度)に足を踏み入れた。しかし、HD解像度では不満足な映像で、今後まだまだ綺麗になると感じた。確かに4K解像度の映像は美しく生々しいが、コンテンツの不在も議論に上り始めている。

7●超小型プロジェクターの幕開け

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3Mの超小型プロジェクターMPro 110

3Mの超小型プロジェクターMPro 110

携帯電話に搭載したものから手乗りサイズまで、超小型プロジェクターが登場した。ただし、明るさを示すルーメン値が、通常のプロジェクターの1/100程度であることから、現実的な利用にまではあと一歩という感は否めない。次世代の製品に期待したい。

8●ネットブックという新しいカテゴリが確立

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HP のネットブックvivian tam editionはデザイン性も重視

HP のネットブックvivian tam editionはデザイン性も重視

昨年は、Eee PCをはじめ各社の小型PCが出揃い、全世界的に爆発的に売れた。従来頭打ちだと思われていたノートパソコンの市場に、「ネットブック」という新しいカテゴリーが生まれた年となった。小型、安価、性能はそれほど求めない代わりに、バッテリーが長持ちするなどの特徴がある。今年のCES 2009では、この新しいネットブック市場に向けた製品も登場した。ソニーのVAIO TypePや、HPのvivian tamのコラボレーションモデルなど、デザインに力を入れたものも出てきた。

9●ネットワーク化するデジタルフォトフレーム

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ネットワークウィジェット表示機能を持つIPEVO製フォトフレーム

ネットワークウィジェット表示機能を持つIPEVO製フォトフレーム

日本とは異なり、欧米では、そこここに写真を飾る文化がある。そのためか、フォトフレームは、より安価なものから、有機ELを使ったとても美しい表示ものまで、さまざまなものが出てきた。同時にデジタル化、ネットワーク化も顕著になってきていた。より高機能化し、枕元に置くウィジェット機能を持ったチャンビーフォトフレームもあった。

10●無線機能とサービス連携の時代

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YouTubeへのビデオ自動アップロード機能を持つ無線LAN搭載SDカードEye-Fi

YouTubeへのビデオ自動アップロード機能を持つ無線LAN搭載SDカードEye-Fi

これまでは無線機能のなかったデジタル製品に、普通に無線機能が搭載される時代になってきた。例えば、ソニーのデジタルカメラCyberShot G3では、無線機能だけではなくWebブラウザ機能も持ち、写真サービスとの連携まで考慮されている。日本でも12月に発売となった、SDカードにWi-Fi無線LAN機能を内蔵したEye-Fiは、どのデジカメにも使え、YouTubeへのビデオ自動アップロード機能も搭載したと、CES 2009会場のあちらこちらで話題の中心となっていた。

不況なんて吹き飛ばせ! 新たなビジネスモデル構築が活性化

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こうしたトレンドに見られるさまざまなデジタル家電機器が登場する一方で、デジタルコンテンツの流通に関しても新しいビジネスモデルが模索され始めている。例えば、ビルボード Top 1000曲が最初からメモリに入っているミュージックプレーヤーの登場もその1つだ。PCやネットとは関係無く、メモリで音楽を購入する。CDでも iTunes Store でも無い、最初から音楽が入っているメモリという新しいデジタルデータの流通経路が考え出されていた。

CES 2009の時期に、オバマ次期大統領がデジタルテレビ移行の延期を提案したことにより、CES会場内でも関係者の話題を集め、議論を巻き起こしていた。この不況下だからこそ、CESに出展した各社は、どこがビジネスになって、どこに注力すべきなのか、ますますどん欲に追求しているように感じられた。新しいビジネスモデルの構築に向けた取り組みが活性化していきそうだ。

(安藤幸央)

WRITER PROFILE

安藤幸央

安藤幸央

無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPHをはじめ、 国内外の映像系イベントを独自の視点で紹介します。