触れればわかるその良さ
リリース間もない 液晶モニター LMD-940Wの魅力に迫ってみたい。まずは筐体。9インチという液晶サイズを保ちながら、Victor DT-V9L3Dよりも一回り以上小さいサイズに収まっている。もちろん厚みも小さい分、運搬時やクレーンへの取り付けも容易になると思われる。下部にネジ穴もあり、三脚に乗せ使用可能で、さらにはアームでの固定も可能だ。
肝心の液晶部はどうだろうか?SONYといえば、中古市場でも人気が衰えないBVMシリーズのCRTモニターラインアップが頭に浮かぶ方も多いだろう。今回のLMD-940Wでは、まさにBVMシリーズを強く意識したLCDモニターとも言える。滑らかな階調表現と色再現領域の広さを謳っているだけに、他社製のモニターとの比較でもその良さが実感できる。特に黒の沈み具合が良く、暗部でもつぶれる事無く見えたことは賞賛に値する。
視野角については約170度。特に広くはないが、色変化の抑えられた表示になっているのは確か。従来は、あまくなっていたSD信号のモニタリングにおいても、比較的引き締まっているため実用範囲内だと思われる。 残像感についても、3種類のI/P変換機能によって、極力抑えた表示が可能だ。気になるHDMI入力でのレイテンシー(遅延)も、I/Pモードに「フィールドマージ」を選択すれば問題無いレベルである。 液晶パネルにおいてグレアかノングレアでは大きな差であるが、ロケーションモニターとしてはノングレアパネルの方が好まれるだろう。今回のLMD-940Wでは、ノングレア採用で写り込みも抑えられている(標準付属品の保護パネル装着時は、多少写り込みがあるのでご注意を)。
細部までに宿るSONYイズム
SONYならではの細かい機能性もなかなか魅力的である。操作部においては、今回採用されたジョグダイヤル方式は、思いの他、使いやすい。上、下、enter key、exit等ボタンが並ぶのがインターフェースとしては、定番であるが、ジョグダイヤルひとつで操作をカバーしてしまうことは便利かつ新鮮な体験となるだろう。また、操作パネルのバックライトもON/OFF切替できる等、配慮も行き届いている。メニュー部が日本語に対応している点も良心的である。もちろん、簡易波形表示、音声のレベルメータも備えている為、ロケーションモニターとして力不足な点は無いだろう。
そんな期待感あふれるLMD-940Wだが、残念な点は、スタンド部だ。今時、角度調整が折りたたみ式のバーを出すか出さないかの二択、というのはいかがなものだろうか?付属品のACアダプターの大きさも折角のスリムさが犠牲にしてしまうのは残念なところだ。
総評
Panasonicから7.9型LCDモニター BT-LH80Wが出たのが2007年6月。SONY LMD-940Wは、果たして2年間のブランクを埋めるほどの出来なのかどうかは、実際目にするまでは懐疑的だったが、その不安も実際に手に取ることによって払拭された。液晶パネルの進化もあり、良いモニターと評せるだろう。価格を抑えてのリリースなど、緻密なマーケティングと他社との徹底的な差別化から生まれたこのモニターは、SONYの本気度が窺い知れる。これで、ようやく9インチのCRTから脱出できるのではないだろうか。