一足先に開催されるプレスカンファレンス
恒例のNAB展示会前日の日曜、プレスカンファレンスデーだ。未だ会場が設営を終わらない中、各社新製品や新サービスをこの日に発表する。数年前に比べ各社派手さはなく、小規模になったことは否めない。本日開催されたプレスカンファレンスから見えてくるものを、PRONEWSのラスベガス特派員Fantastic4の面々に伝えてもらおう。
対照的なストーリーを語るパナソニックとソニー By 小寺信良(File based担当)
開会前から予想されていたことだが、やはり今年は3D映像をいかに作っていくか、というところに各メーカーとも注力してきている。もちろんそこは新しいポイントなので外せないが、本日のプレスカンファレンスでは、パナソニックとソニーのアプローチの違いを大きく見せつけられた格好となった。
パナソニックは今回、マイクロフォーサーズ互換のカムコーダ、「AG-AF100」を発表した。AVCCAMクラスのカメラである。
マイクロフォーサーズ互換、「AG-AF100」ご存じのようにマイクロフォーサーズはパナソニックとOlympusが推進するデジタル一眼のフォーマットで、レフ構造をなくして常時ライブビュー表示とすることで大幅にコンパクト化したラインナップを展開している。比較的球数がそろってきた交換レンズ、そしてフランジバックの短さを生かして、マウントアダプタを使えばほとんどのレンズが付いてしまうという柔軟設計ゆえに、動画でのニーズは決して小さくないことだろう。
ソニーのほうは、今回はHDCAM-SRを大きくフィーチャーしてきた。HDCAM-SRのカムコーダのPLマウント版とも言える「SRW-9000PL」は、これまでF35とレコーダの組み合わせでしか実現できなかったシネマレンズでの撮影を、カムコーダレベルで実現するものである。
「SRW-9000PL」でPLマウントラインナップを拡充パナソニックのスタイルは、コンシューマから伸ばしていってプロ機に到達するという、ボトムアップの開発スタイルである。かつてDVフォーマットからDVCPRO HDをモノにしたわけだが、それと同じ方法論をAVCCAMで実践しようとしているのがわかる。
一方今年のソニーは、ソニー厚木の開発力にモノを言わせた、トップダウンの物作りだ。PLマウントのカムコーダも、F35から徐々に下に下ろしていくというスケジュールで動いている。ある意味うまく市場を棲み分けているとも言えるが、数年後に両社がお互いの領域に到達したとき、再びP2 vs XDCAMのようなガチンコ勝負が展開されるということだろう。
小型カメラで両社揃い踏み By 石川幸宏(DSLR担当)
プレスカンファレンスでは、どこもが下馬評通りのS3D三昧で些か飽きていたところに、パナソニックとソニーがそれぞれ小型の面白いカメラを発表してきた。
パナソニックが今年年末に発表するというAG-AF100はまさにDSLRとビデオの中間を行くもの。同社のDSLR機LUMIXのGH1/GF1などと同じ、シングルチップのマイクロ4/3(フォーサーズ)を採用、1080/720Full HDはもちろんレンズ交換式、12.1メガピクセル、16:9MOSだ。またネイティブの1080/24pにも対応する。収録はAVCCAMだが、記録メディアにSD/SDHCのほかに新仕様のSDXCを採用する模様。もちろんダブルスロット対応。
ソニーは、SRの新フォーマットSR Liteなども新ネタも出たが、カメラとしてはスーパー35mmカメラシリーズとして、来春正式発表で何も仕様は明かされていないが、一見RED ONE風な小型カメラのモックアップを披露した。価格は5万ドル以下になるという。またプレスカンファレンスではサラリと一瞬で流されたが、XDCAM EXのショルダータイプで1/2型3CMOSセンサーを搭載したPMW-320Kも発表になっている。
本日はまだ展示会場には入れないので、キヤノンEOSブースも気になるが、EOSムービーに端を発したDSLR市場に触発されたニューカマーが沢山あることを期待して、明日のエキジビション初日に乞うご期待。
ステレオスコピック3D、ライブ配信ソリューションに注目 By 秋山謙一(3D担当)
2010 NAB Show開幕2日間のプレスカンファレンスを通じて感じたのは、映画から家庭へと市場が拡大する可能性のあるステレオスコピック3Dを、どのように普及させるのかに目を向け始めているということだ。Blu-ray 3Dによるコンテンツを増やすことはもちろん必要だが、肝心の3D対応テレビの普及促進のためには、Blu-ray 3D以外のコンテンツも必要になる。ステレオスコピック3Dの新コンテンツ候補にはライブ3Dの注目が高まっているようで、各社からソリューション展開が始まっている。
プレスカンファレンスでは、クォンテルがブロードキャスト向けのステレオスコピック3D制作ソリューションを発表したほか、パナソニックがステレオスコピック3D対応2眼カメラレコーダを使用したプロモーションビデオ映像をプラズマディスプレイで上映した。ソニーは、ESPN 3Dといった海外放送局のスポーツ中継コンテンツをReal D方式の4Kプロジェクタで投影した。
ステレオスコピック3Dのライブ中継は、スタジアムなど、実際にある程度の奥行き感を持っている被写体の方が有効に活用できるようで、ソニーのサッカーの試合映像やゴルフのプレー映像は、現場の空気感を生々しく伝えるのにも一役かっているようだった。これらの映像は、複数の視点でスイッチングしたときに、視点位置が大きくズレない映像であったこともあって、スッキリと見て楽しめるコンテンツに仕上がっていたことが印象的だった。
デジタルがもたらす効率化を目の当りにする By 猪蔵(NEW stream担当)
展示会前々日夕方から前日は、各社数珠つなぎに記者向けに発表会を行うのが恒例となっている。会場から受ける印象は不景気での縮小というよりも、より効率化や最適化された現れなのではないかと思う。まずは、足を一歩踏み入れた所感である。
プレス用に大量に配られる印刷物は、今年から姿を消し、そのほとんどがデジタル化、ペーパレス化された。必要に応じて、ネットからダウンロード、印刷するスタイルとなった。昨年までの分厚いNABカンファレンス冊子に変わり、iPhoneアプリも用意されている。まさに過渡期のNABかもしれないと実感する。また取材する側にも多くの変化が見られる。1から原稿を記するスタイルからその素材を入手する部分から伝えていくプロセスジャーナリズム手法を取り入れている記者を多く見かける。それは、Twitter等のソーシャルアプリによるものだ。またそれを受けてか「ライブ中継」も旬になっている。我々もその一端を担っている。そのUstreamOEM供給元Telestream社からは、Unveils Wirecast Pro and V4.0のリリースが発表された。ワイアレスIPカメラなどの活用が期待される。会場だけではなく、参加していない人々もこの賑やかしに参加できるのではないかと思う。
効率化を行うという意味ではプレス発表をネット上のみで済ませる企業も多くなったように思われる。プレスカンファレンスを行わず、ネットで先行して情報を流し、見たい人は会場に足を運んでほしい。参加できなくても情報と雰囲気は共有できるよというスタンスになっている。ソニーは、今年1月のCESにおいてUSTREAMでプレスカンファレンスを行うなどその部分では非常に積極的だ。動画をふんだんに使用したアーカイブ「Video ON」も用意されている。しかしふたを開けてみないとわからないのがNAB。情報を入手しながら先に進みたいと思う。