ファイルベースのお宝お蔵出し! By 小寺信良(File based担当)

NAB3日目である。筆者は会期より一日早く帰国するため、これが最後のレポートとなる。

HDCAM SRと言えば、高画質HD記録や2K、4Kの記録ができるテープメディアとしてハイエンドの世界で使われているフォーマットである。そのHDCAM SRのコーデックをMPEG-4 SStPというが、このフォーマットを通じて本格的にファイルベース化していく計画があるようだ。

プレス向け資料でのみ説明され、一般に展示はされていなかったが、HDCAM SR専用のメモリーメディアが2011年に登場する。サイズはSxSよりもやや大きめで、インターフェースも独自規格になるという。このサイズで容量が1TBある。現行のHDCAM SRの120分ラージテープでもデータ容量としては400GBなので、2本半がこの1枚に入ることになる。

DSC02262-s.jpg 現在開発中のHDCAM SR用メモリーメディア

すでにエンジニアリングサンプルの段階まで開発がすすんでいるというこのメディア、どのように使うのかを考えてみると、やはりSRのカムコーダがファイルベースになると考えるのが妥当だろう。現在SRのカムコーダは「SRW-9000」と、今年のNABで発表された「SRW-9000PL」があるわけだが、もっと小型のSRカムコーダが出現する可能性も出てきた。さらには容量と転送レートが破格に高くなることで、2Kや4Kのカムコーダが登場するとも考えられる。

さらに収録デッキがメモリー化したり、このメディアだけでサーバ運用するなど、いろいろな可能性が考えられる。ただ、現状のテープもランニングコストや棚管理のメリットがあるので、平行して残っていくだろうと思われる。

もう一つ開発中のものとして、PCIスロットに挿すタイプのキャプチャ/出力ボードも展示されていた。I/Oカードの上に乗っているドーターカードがエンコーダ・デコーダになっており、リアルタイムでMPEG-4 SStPにエンコード、デコードできるようになる予定。

IMG_0197.JPG 開発中のMPEG-4 SStPリアルタイムエンコーダ付きI/Oカード

こうなってくると、放送局の送出サーバも現在はMPEG-2 50Mbpsで運用しているところがほとんどだが、HDCAM SRのファイルフォーマットをMPEG-4 SStPの440Mbpsで運用、という線も出てくるだろう。ファイルフォーマットとしては、これの半分の220Mbpsもあるので、HDCAMのアーカイブをこれに変換してライブラリ化するという考え方もある。

いずれにしろ来年の正式リリースを前に、いろいろ用途を勝手に予想してみるのも面白いだろう。

DSLR周辺から見えてくる新しいジャーナリズムのカタチ By 石川幸宏(DSLR担当)

展示会3日目は、最初の2日間(時間がなくて)全く足を踏み入れなかったサウスホールのアッパー(2階)から。

最近CNNなどのディレクターがキヤノン5DmarkⅡなどのDSLR機を持って、ムービーを撮りながらワンマンENGをこなしているという話は先月のDSMC/DSLR特集でも書いたが、リーマンショック以降の昨年では、The New York Timesなどの有名新聞社でも記者達が次々と解雇され、新聞社の終焉とまで言われていた。

しかし、その彼らがいま、これまでの文筆専任業から片手にDSLRを持って街へ繰り出し、写真とムービーを撮りながら新たなデジタルコンテンツ記者として活躍している。キンドルやiPadの登場により、ニューパブリシティとも言える新しいタイプのコンテンツが登場、これまでの彼らのノウハウが動画と親和性を持つ事で、また違ったカタチで息を吹き返しているという。

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Content Central Pavilionでは、そのThe New York Timesから、記者たちが集めたコンテンツをリアルタイムで閲覧出来る新しい新聞のカタチ、『Times Reader 2.0』を展示。Adobe Airをエンジンとしたニュースサービスで、価格は1週間購読で$4.62。同じIDで最大5人まで同時閲覧出来る。これまでの新聞形式のテキストに静止画、ムービーが貼付けてあり、新たなカタチで新聞記事を楽しむ事ができる。もちろん現在でも、いままでのニュースペーパーも大量に印刷されているのだが、年代とともに次第にこちらのユーザーに移行していくのかもしれない。

DSLR周辺機材では、イギリスのVITEC(ヴァイテック)グループ傘下に集結した、カメラ周辺機器メーカーからもDSLRを強く意識した製品が多く出てきた。KATAバックからは、軽量&丈夫でDSLRリグを装着したまま入る『Capsule』が3サイズ。

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マンフロットからは三脚の新製品、504システムが登場。初のブリッジ型のヘッドを採用、4段階のダイヤル式カウンターバランス調整ダイヤル、そして舟の部分の横にネジ穴を設け、モニターやライトなどが三脚雲台に取り付けられるといった工夫がなされている。

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足もDSLRを意識したシングルカーボンも用意された。その他ではLitepanels製品は小型の2機種のみが同社で扱われており、その中の新ラインナップとして注目は、ストロボもライトも両方できるLEDライト、MicroPro Hybrid。手動でもストロボが焚けるのは画期的だ。

どこを見ても3Dリグばかり。2台揃えてやってみよう By 秋山謙一(3D担当)

NAB Show会場を歩いていると、10数年前に始めてNAB会場を訪れたときを思い出した。当時は、ノンリニア製品の普及に弾みが付き始めた当時、あちこちのブースにも関連製品が置かれていて、編集システム、プラグイン、周辺機器…。いったい何から取材すればいいのかと戸惑った。今年のNAB Show ステレオスコピック3Dフィーバーは、似たようなものかもしれない。

それは、ハイエンドの限られた人だけが携わるステレオスコピック3Dの時代の終わりを意味する。収録から書き出しまでファイルベースで行えるようになったからこそ、再脚光を浴びているステレオスコピック3D。会場内は、とにかくやってみようぜ!という雰囲気がプンプン充満しているのだ。

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3Dリグの中で目に付いたものの中には、SCREEN PLANEがキヤノン製デジタル一眼カメラを使ってEOS 7Dボディを2台同架していたり、VISION RESERCHが高解像度ハイスピードカメラを2台同架してスーパースローモーション・ステレオスコピック3D映像を提案したりしていた。

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STEADYCAMは、視点を移動させながらの収録には欠かせない。これもまた、カメラレコーダーを2台同架させるものが出展されていた。さらに、ファイルベースの取り組みもあった。コンパクトプラッシュ利用の映像収録デバイスを提供しているConvergent Designが、手のひらサイズのnanoFLASHを2台使って同時に同期記録するためのnano3D Kitを発売予定だ。

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あっという間に、ステレオスコピック3Dの収録・編集パーツが出揃ってきた今年のNAB Show。1つも見当たらずに不思議だったのが、ステレオスコピック収録用のプロンプター。3Dリグは、もともとハーフミラーを使っている構造でもあるので、実現までには、もう少し工夫する時間が必要なのかもしれない。

またあの赤い奴がやって来た! By 猪蔵(NEW stream担当)

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会場もまだすべて見れていないのだが、あいつが来るということなので黙ってはいられない!会場を後に遠く離れた、トロピカーナホテルで「RED USER Y 2010 」に参加した。RED Digital Cinema社の新機種、EPICの実機のお披露目とあるというのだから黙ってはいられない。聞くところによると3000人の事前予約があり、さらには登録していない人があふれていた。

EPICはDSMC(Digital Still Motion Camera)を具現化したRED初のモデルで、すでに米国時間4月8日からファーストロットの実機が出荷されており、5Kのカメラ本体で約300万円、レンズや周辺機器を含めると400万〜500万円という。

日本での販売価格は、正規パートナー契約代理店の西華産業から近く告知されるので注目しておきたい。なお低価格版REDとも言える「SCARRET」は今秋発売予定。レンズ一体型、新しいREDマウントタイプ、そしてB4マウントと3機種がケース展示されていた。

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また会場にはお披露目と合わせていくつかのREDの周辺機器が展示されていた。中でもモーションコントローラーのCMOCOSは、REDのデザイン以上にインパクトのある筐体。しかし機能はそのデザイン以上に秀逸。各3Dソフトウェアに対応し、トラキングデータを使用することができる。RED専用というわけではないが、最適化はされているという。