ファイルベース以外にも見えてくるモノとは? By 小寺信良(File based担当)

NAB2010も2日目である。今日はファイルベース以外にも面白いネタをいくつかご紹介したい。

Autodeskのブースでは、昨年のInterBEEで発表されたのSmoke for Macが実働していた。ブース内にMac Pro 4台が用意され、トレーナーの指導に合わせて来場者がチュートリアルにトライできるようになっていた。

DSC02175-s.jpg Smoke for Macのトレーニングコーナー

これまでSmokeのようなハイエンドシステムは、ポストプロダクションでしか導入できなかったわけだが、Mac版が出ることで個人でもフィニッシング作業が可能になってくる。

このような流れはプロの世界では往々にして起こっている。ノンリニアでオンライン編集ができるようになったとき、ポスプロの編集マンが独立していった。またSoftImageがWindowsに移植されたときも、CGプロダクションから多くのクリエイターが独立した。これと同じようなことが、Smokeでも起こるのではないかと思う。

ちょっと経路の違うとこで、ローランドが新しいHDスイッチャーを発表した。SDIだけでなく、DVI/HDMI、アナログコンポジット、アナログコンポーネントなどが混在できる。

DSC02176-s.jpgローランドのマルチフォーマット対応スイッチャー、V-1600HD

各プライマリにスケーラーとフレームシンクロナイザーを搭載しており、外部同期がかからないソースがスイッチングできるほか、解像度の違うソースも拡大・縮小してスイッチング可能。マルチスクリーン出力に対応する機能として、2つのソースをリンクさせてスイッチングするモードもある。これを利用すれば、3D映像のスイッチングもできるだろう。

面白いガジェットとして、Media FloのブースにiPhoneのジャケット型チューナーユニットが展示されていた。

IMG_01715-s.jpg拡張バッテリーとMedia Floチューナー装備のジャケットがいよいよ発売

米国にはワンセグ放送がないため、Media Floという独自の電波網サービスがある。これまでVerizon, AT&Tの対応携帯電話でしか受信できなかったが、米国で最大勢力となったiPhoneでもいよいよMedia Floが受信できるようになる。米国では秋頃の発売になるようだ。

やはり気になるビデオ群 By 石川幸宏(DSLR担当)

2日目の午前は少しHDSLRから離れて、本来のビデオ機器関係に取材を戻し、まずはソニーブースから会場視察。今回はカメラ機材からのインジェストから編集、配信、アーカイブまでコンテンツ制作の一連の作業の流れを統合管理して業務効率を向上させるソリューション提案、『Madia Backborn』を中心にした展示。

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カメラ関係で気になるのは、なんといってもHXR-MC50J。HVR-A1Jのファイルベース後継機種と位置づけられる機種であろう手のひらサイズのコンパクト業務機。1/2.88型のExmor R CMOSセンサーを内蔵し、収録はMPEG-4 AVC/H.264コーデックのAVCHDで収録。64GBの内蔵メモリーに収録の他、メモリースティックもしくは、SDHCカードでも記録可能。さらに先に発売されたNXCAMにも搭載されたスチル系レンズの高性能ブランドである”Gレンズ”を搭載、光学10倍、広角は29.8mm(35mm換算)とワイドも優秀だ。また民生用のデジカメ(Cyber Shot)などに搭載されているGPS機能も搭載しており、この辺も今までの業務機には無かったものなので、今後面白い使い方が増えるかもしれない。価格は北米では2,000ドル以下ということで日本でも20万円以下で入手できるはず。北米では6月下旬〜7月上旬に発売予定。日本でも7月に発売予定。

あまりプレスカンファレンスでは紹介されなかった、1/2インチのショルダータイプのXDCAM EX カメラ、PMW-320Kも初お目見え。

業務用の1/2インチは、実はHDカメラでは需要が多いようだ。PMW-350を出したときに、2/3も良いが1/2型は出さないのか?という問い合わせが多かったらしい。考えてみれば2/3型というのはSD時代の放送・業務系カメラのスタンダードだったが、HDカメラは新たに購入するわけで、この時期少しでも安価な方法と考えれば、1/2型の方が選択枝として選びやすいのは当然だ。しかもファイルベースになって、テープ時代のように中身がそれほどスペースを取らないこともあり、仕様変更にもすぐに対応できるとのこと。

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HDSLR関係ではレンズ各メーカーが、HDSLRに対応した、シネレンズのシリーズを出している。Carl Zeissはもちろん、ライカ、アンジェニューといったレンズメーカーが今回新たなラインナップを発表している。写真はPanasonic LUMIXにOptimレンズ+0.75倍のWide Angle アダプターを展示。

いまやHDSLRの登場によって、カメラ部を基本として、レンズ、ライト、モニター、マイク、そしてその後のノンリニア編集まで、クリエイター側自身のデザインでチョイスできる、コンポーネントスタイルなシューティングスタイルを予感させている。

ステレオスコピック3D中継、タイムライン編集の効率化進む By 秋山謙一(3D担当)

今回のNAB Showにおけるステレオスコピック3D関連のブースは、ある意味、お祭り状態ともいえそうだ。10数年前に低価格のノンリニア編集システムが続々と登場してきたときと重なる。各社のブースに関連製品が溢れて、どこから見ていいのかという部分でも、同じような状況だ。

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今回の目玉の一つは、ソニーブースの後方で展示されていた3D中継トレーラーだろう。All Mobile Video社からソニーが受注し、2010年夏に運用が開始される。高さ5m以上、長さ25mというトレーラーは、米国内で走行できる最大サイズに近いものだそうだ。ソニー製カメラ、スイッチャーなどを採用し、3ality Digital社の3Dリグを中継車内からリモート操作で調整する機能をもたせている。Inter BEEでソニーは生中継・スイッチングソリューションを出展していたが、今回のNAB Showで中継車が加わったことで、中継システムがかなり強化されたことになる。

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編集面では、アドビ システムズがCreative Suite 5を発表したが、Production Premiumでは64bit OS限定対応となっている。Premiere Proでは新たに画像処理エンジンAdobe Mercury Engineを搭載することで、NVIDIA製GPUを使用してGPUコンピューティングを行い、タイムラインプレビューの高速化を行っている。今回、CINEFORM社のneo3Dを使用して、タイムライン上に配置された映像のコンバージェンスポイントなどをリアルタイムに調整できることを、NVIDIAブースとCINEFORMブースでデモしていた。ハイエンドフィニッシングシステムを使用せずに、低価格なノンリニア編集ソフトウェアでもステレオスコピック3D制作が可能になって来た。

究極のライブ配信を求めて! By 猪蔵(NEW stream担当)

さてさて、かつてのLow-fiなストリーミングから隔世の感がある2010年。Ustreamによってインフラは僕らの手の中にある事は言うまでもない。

この新しい流れは何と呼べばいいのだろうと自問する。「ストリーミング?Webキャスト?UST?」かつてないほどクオリティーの高さでIPの中を駆け抜ける映像たちにしばし考え込んでしまった。各ブースで聞くとやはり「ストリーミング」だという。と会場を歩きつつ目に入ってきた看板が…。Stream or Die!そうかそうなのかこれでいいんだ!

ありがとうNEWTEK。この看板で目からうろこが落ちた。鳴り物入りでStreamingが我々の間をにぎやかしたのが約10年前。それから時代は革新的に進化していた。Streamingも同様成熟域にあるのであった。

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さてここからはかなり個人的思い入れの強い下りとなる。かつてISDNでのストリーミング時代からNEWTEKが送りだしてきたVideoToaster(AMIGA版も含む)は、強い味方だった。その後カタチを変え、現在のTricasterに生まれ変わっていく(その間にTrinityなどいくつものエピソードがあるが割愛)。今回、外会場に展示されたMINI中継ステーションこそ究極の中継システムではないか!もちろんインフラの問題はあるが、これ一台あれば…と妄想しつつ、また会場に戻るのであった。