どうしていますか?ハイビジョン画像の出口

手頃なハイビジョンカメラが出てもう5年程経つだろうか。今やコンパクトデジカメでもフルハイビジョン動画が撮れるようになり、そのテクノロジーはもう常識化したように見える。そして技術は進み、720pやHDVからフルハイビジョン、テープからメディアへ、デジタル一眼等、撮影技術は第三、第四世代へと進化していっている。

にも関わらず未だにSDでの撮影がなくならないのは何故なんだろう?これはSDでの撮影を選択するプロ達の言葉を聞けば明解だ。中にはそのデータの重さ故にHDを嫌う人もいるが、ほとんどの人は出力、使用環境を理由に揚げる。確かにいつの時代も新しい技術が各家庭に浸透するには時間がかかる。ただし今回は事情が違っているはずだ。2011年の地デジ化に向けて、すでに各家庭にはハイビジョンテレビが用意されているし、ネット環境もハイビジョン映像を楽しむのに十分な速度と低価格化も進んでいる。

これに合わせてテレビ放送、ネット配信、ゲーム、家庭用カメラ等はどんどんハイビジョン化が進んでいるのだが、一つだけこれらの歩調に乗り切れてない物がある。それは配布用メディア、はっきり言及するとブルーレイに他ならない。 映画をハイビジョンで記録できるDVDに代わる次世代メディアとしてリリースされたブルーレイとHD-DVDだったがHD-DVDがあっさり撤退を決め、唯一のハイビジョンディスクとなったブルーレイ。しかしその普及は予想を数段下回る低調ぶりだ。

彷徨えるブルーレイ

これはいったいどうしてなのだろう。原因の一つにネット配信をあげる人もいる。このままメディアそのものが必要なくなるのではないかという考えもあるが、ことハイビジョン映像に限って言えばネット配信がそれほど活発に伸びている様子もないし、レンタルや業務用及びプライベート映像等ではDVDというメディアが相変わらず活躍している。前述したプロ達が今もSD撮影を選択する理由はここにある。ならばなぜブルーレイがそれに取って代わる存在にならないのだろう。

理由は意外にも出版環境にある。HD-DVDと覇権を争っていたころ、本丸は当然ワーナーやユニバーサルといった大手映像出版社だった。海賊版の流出等に頭を痛めていた出版業界に対して両者が徹底してプレゼンテーションを行ったのはコピーガードであり、ブルーレイは更に海賊版が現れた時に流出元を追跡調査できるようなシステムとワールドワイドな機構を作り上げ彼等の信頼を得た。

それはそれで素晴らしい事ではあるのだが、実は今、皮肉にもその事がブルーレイの普及低迷に大きな足枷となっているのは否めない。つまりブルーレイで何かを出版しようとすると必ずこのコピーガードと幾つかの作品登録をしなければならず、それだけで相当な費用がかかってしまう。それがないとプレス業者は作品を受けとってくれない。さらにオーサリングにもいろいろ取り決めがあり、ソフトも現在のところシナリストしか認められていない。このオーサリングだけでもかなり高額で、大量に売れる作品でなければとても回収できないような初期費用がかかってしまうのだ。

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従来のDVDプレスように気軽にDVD-Rを作ってそれをマスターにしてプレス業者にまわすというような事が現在のところ不可能なのだ。これがブルーレイの利用普及を大いに妨げていると言わざるを得ない。

そうだ!ブルーレイを使おう!

そこで今俄然注目を浴びているのがBD-Rとそのデュプリケートによる保存や配布だ。もちろんこれには前述したような規制はなくデュプリケーターもそろそろ出回ってきている。コピーガードがない物なら単純なメディアコピーなのでDVDのデュプリケーターとさほど変わらない価格で発売されているようだ。正式なプレスの敷居が高い分、多くない枚数ならこちらの方法の方が現実的だ。

そういう事情もあるので、今回より三回に分けてBlu-ray規格の40Mbpsのビデオや24bit192khzのオーディオに対応しているVegas Pro 9 及び DVD Architect Pro 5を使った理想的なオーサリングワー クフローを紹介しハイビジョンでの保存・再生・配布をもっと身近に感じていただければと思う。

WRITER PROFILE

ふるいちやすし

ふるいちやすし

映画作家(監督・脚本・撮影・音楽)。 日本映画監督教会国際委員。 一般社団法人フィルム・ジャパネスク主宰。 極小チームでの映画製作を提唱中。