「まだまだDVDが主流だ」とか「ネットではSDの需要がある」とか大局的な事はどうでもいい。現にちまたにハイビジョンテレビが溢れてる。家庭はもちろん、店舗、イベン ト、ショールーム…ならばそこに最高のHD映像を映し出すのが映像を作る者の務めなんだと思う。そしてその最も現実的な方法がBD-Rでの提供であることは間違いない。そしてやっとBD自体の映像クオリティーが取り沙汰されるようになり、ディスクによる画質の違いやHDMI端子の音声との切り離し等、情報は活発に上がってきている。そこで今回はVegasPro9を使ってできるだけ高品位なBDを作ってみる。
高品位BDの為の撮影を敢行
まず映像の方だが撮影時において、レンズ、コーデック、撮影者の技術等、これが高品位だと決めるファクターは数多く個人差もある。そこで一つのバロメーターとなるのがビットレートだ。これはデーターの重さは別にして単純に多ければ多いほどロスが少ないと考えていいはずだ。
現在高画質として注目を浴びているキヤノンのデジタル一眼のEOSムービーで40~45Mbps、先頃発表された同社のビデオカメラXF305は50Mbpsの映像を記録できる。DVDにしてもディスクに焼く時点での劣化はある程度仕方のない事ではあるが、せっかくこれだけの高ビットレート撮影が可能になったのだから、できるだけロスの少ないディスクを作りたい。一般的なNLEソフトもどんどんBDへの書き出しをサポートし始めているが、何も考えずデフォルトのプリセットを使用して実行するとだいたい17~35Mbpsの映像が書き出されているようだ。
これはHDの出初めのころの撮影フォーマットが大体これくらい(HDVは25Mbps)だった事とブルーレイプレーヤーもこれくらいの再生にしか対応できていなかった事に起因しているが、実はブルーレイの規格ではもっと高ビットレートな物もサポートされている。前述の高ビットレート撮影可能なカメラの出現と最近のブルーレイプレーヤーの進歩から見て、40Mbpsに設定してみようと思うが、現行の全てのプレーヤーを検証したわけではなく、ユーザーによっては初期のプレーヤーを使っている場合もあるので使用目的を慎重に考えてほしい。また当然画質を上げるとデーター自体が大きくなるので作品の収録時間も短くなるので注意してほしい。
音声は96khzの高サンプリングレートで
次に音声だがこちらはサンプリングレートを音質の基本と考えてみる。CDで44.1khz。 DVでの記録及び編集が48khzで行われていた事から、現在も主要なカメラは48khzでの収録となっている。少し話はそれるが、言うまでもなく音楽作品の基本といえば音質面ではCD(44.1khz)という事になる。これを売る為のプロモーションビデオが48khzでばらまかれている。これはおかしい。更に最近コンポステレオやCDプレーヤーの普及率が下がり続けている。こうなるとリビングルームのテレビ周りの音響設備の充実の方が現実的だ。事実、最新のブルーレイプレーヤーではHDMI端子を映像と音声別々に出す事によって双方の品質向上を実現している。
そうなると音楽作品もBDで出版するべきではないのかと感じてしまう。もちろん手軽さという意味ではMP3やネット配信という動きは止められそうにはないが、やはり一番いい音で聴きたいという音楽ファンの思いに応える物は出し続けてほしいと考えるのは私だけだろうか。BDでは192khzというとんでもないサンプリング周波数での収録が可能だ。(これは従来のDVDでも可)もちろんこれには収録時においても同等以上のサンプリング周波数で録っておかなければ意味ないが、これには通常のカメラの他にレコーダーを用意しなければならない。
だがこのフィールドレコーダーという分野も最近めざましい進化と低価格化が進んでおり、手軽に使えるようになってきた。とはいうものの、さすがに録音専用機。内蔵されているマイクも非常にクオリティーが高い物が多く、カメラに付いている物とは全くの別物だ。残念ながら今回用意したレコーダーは最高96khzまでしか対応していなかった為、その最高音質で収録する事にする。
蒸気機関車と軽量機材
さてこの高品位BDの為に選んだ素材は風景と美しいサウンドを両方楽しめそうな秩父鉄道の蒸気機関車。始めから出口を意識しての撮影はわくわく楽しい物になった。それでもこの軽装備。良い時代になった物だ。
風景はともかく、蒸気機関車は真っ黒。鉄の質感、重量感までうまく捉えられるか。高ビットレート映像の真価はこういう単純な諧調表現に現れる。
音声収録にはZOOM H4を使用。内蔵のマイクも素晴らしい物だが、これは数ある小型フィールドレコーダーの中で唯一キャノンケーブルで外部マイクを使用できるモデル。先頃モデルチェンジを遂げてH4nとなったが、ラインアウトとヘッドフォンアウトが共通になってしまって同時外部録音とヘッドフォンモニターが同時にできなくなり、この旧モデルは手放せない一品となってしまった。このラインアウトから5DmarkIIの外部マイク入力へ送り、同時に録音する。
5DmarkIIも最新のファームウェアのバージョンアップで録音レベルもマニュアル固定設定できるようになり、レベルマッチングもできるようになったが、さすがにラインアウトからマイクインとなると抵抗入りのケーブルが必要。更にS/Nの事も考えると自作抵抗入りケーブルでマッチングを計るしかない。でもこうする事によって録音はステレオとなり、(カメラの内蔵マイクはモノラル)やるだけの価値はある。レコーダー側で96khzで収録している為、カメラ側の4khzの音声はリファレンス用となる。うーむ。…贅沢だ。詳細はまた次回に!