去る5月27、28日、東京・港区のナックイメージテクノロジー本社において「ナックOpen House in Aoyama 2010」が開催されたのは、すでにニュースとして取り上げたが、28日にAJAのアジア・パシフィック担当REP Pacific Portals Eric Hamilton氏がARRI Managing Director Franz Kraus氏を表敬訪問し、AJAとの今後の協調関係についての非公式の会談が行われた。

ALEXA_AJA_10655.jpg AJA Pacific Portals Eric Hamilton氏(左)とARRI ManagingDirector Franz Kraus氏(右)

AJAはApple ProRes 422コーデックを採用したIo HDにつぎ、レコーダーとしてKi Proを発売しているが、同じApple ProResを採用した仲間としてだけでなく、もう一歩踏み込んだ形での関係を進めていく見通しである。

すでにARRIのWebページにはレコーディングソリューションとしてS.twoやCodex、計測技術研究所の非圧縮レコーダーなどとともにKi Proが紹介されているが、Ki Pro はExpressCard規格に準拠したメモリースロットを装備しており、ALEXAのSxSメモリーを装着することが可能だ。ただし、ファームウェアが対応していないので、現状では認識しないが、今後Ki Proの展開しだいではALEXAで収録したSxSメモリーをKiProで再生することが可能となる。

Eric Hamilton氏は、「SxSメモリーへの対応はユーザーからの要望もあり、検討している。Ki ProのメモリースロットはExpressCard規格に準拠しているので、技術的には特に問題はないが、もう少し時間がかかると思います」と語った。

ALEXA -002.jpg ALEXAはSxSメモリースロットを2基備えており、ProRess422または4444基録が可能

ALEXAがSxS、ProResを採用したということで、Ki Proをプレーヤーとして使えないかと考えたのは筆者だけではないと思う。ALEXAで収録後SxSメモリーをKi Proに挿し込めばPCなしで即座にプレビュー可能だ。しかも、Ki ProからはHDMIやコンポーネントなど様々な出力が可能なので、接続するモニターを選ばないという利点もある。さらに、Ki Proのハードディスクパックにコピーすれば、バックアップになるだけでなく、このパックをFireWire (1394B)接続すれば、簡単にPCとも接続可能だ。現在ExpressCardを装備したPCが少ない現状では、一つの選択肢として考えられると思う。

ALEXAが収録可能なProResは422と4444と2つだが、Ki Proの対応は現状422のみである。転送レートは1920 x 1080/29.97 fpsの場合422が220 Mbps、4444では330 Mbpsなので、スピード的にはなんとか対応できそうだが、「Ki Proは、ProRes 422専用に開発されたものだ。将来的には、ProRes 4444に対応した機種がリリースされる可能性はあるかもしれない」とのこと。もちろん、公式にもKi Proの次期機種の発表はなく、あくまでも可能性の話である。ちなみにKi Proの次期機種としては、もっと小型化されたものがでるのではないかと噂されている。

Alura 001.jpg ARRIとフジノンが共同開発したAluraズームレンズ

ALEXAはARRIとしては初めてのレコーダー内蔵のカメラである。長年映画業界で培ったフィルムカメラの技術をデジタルカメラ化したモノといえよう。映画業界ではフィルムやレンズ、三脚などそれぞれ専門に開発しているメーカーが協調し合って成り立っている。今回ARRIはフジノンとAluraというズームレンズを共同開発しているが、ここまで密接な協業がARRIとAJAの間でなされるかどうか分からないが、ARRIのFranz Kraus氏は、「ARRIRAWに対応したレコーダーは数社から発売されている。我々が開発できないこうしたソリューションを提供してくれるのなら歓迎したい」としており、今後の両者の展開に注目したい。

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。