Cache-Aで実現する四万十町CATVのこれからのアーカイブ

CATV局には、いわゆる都市型と農村地域の活性化のために整備された農村型ケーブルテレビがあるが、サービスの実態から見てその境界は曖昧になっている。今回訪問した四万十町CATVは、十和村村営「十和村ケーブルシステム」が平成18年3月に窪川町と大正町および十和村の市町村合併により平成21年5月に新設された局だが、難視聴地域解消のため、地上波テレビ放送、BSをパススルーで放送しているほか、CSやインターネット、IP電話などのサービスを行っている(FTTH)。

shimanto1.jpg shimanto2.jpg

左奥は窪川四万十会館、四万十町CATVの事務所。右側が新設されたスタジオ

こちらはスタジオサブ

さらに、自主制作番組として、河川や海の監視カメラ映像を流すチャンネルとコミュニティ番組として、町内で行われるイベントの模様などを放送するチャンネル「四万十うぉっちんぐ」の番組放送を行っている。特に幼稚園や小中学校が行う行事は人気があるそうで、親兄弟だけでなく離れて暮らす祖父母や親戚などから再放送の依頼が沢山くるという。

なお、サービス提供エリアは開局当初の窪川地区と今年の2月にサービスが開始された大正地区および窪川地区の一部、来年以降サービスが開始される十和地区(旧十和村ケーブルテレビが平成13年からサービスを行っているがチャンネル数などが異なる)となっているが、すでに四万十町の世帯数である8825世帯の内約6000世帯が加入しているそうである。四万十町は、こいのぼりの川渡しやよさこい祭りといった有名なイベントが行われるほか、龍王の滝、地吉の夫婦杉、沈下橋、小室の浜、興津小室の浜海水浴場など観光の名所も随所にあり、番組の対象は学校関係以外にも数多く存在するが、毎週5本ほどある番組制作は大崎弘和氏と森下克彦氏の2人のディレクターで行われている。

shimanto4.jpg shimant03.jpg

取材用のメインカメラ

編集コーナーがある

1人で週2~3本の番組を撮影から編集、ナレーションなど番組制作にかかわる作業はすべてをこなしている。制作機材は、メインのカメラが4台とノンリニア編集機が2セット、LAN接続されたNASドライブといった構成である。まだ、開局して間がないのだが、過去に収録した素材を新たな番組で再利用したり、映像資産として保存するために当初Blu-rayにバックアップとして保存していたという。

四万十町CATVがCache-A導入した理由は?

shimanto005.jpg

お話をお伺いした森下氏(左)と大崎氏(右)

「完パケたものだけならBlu-rayでも充分な容量なんですが、素材もとなると容量的にちょっときついんです。また、長期保存という面でも不安がありましたね。大容量で長期保存ができて、操作が簡単でしかもコストパフォーマンスの高いバックアップのシステムがないか探していたところ、ビデオ誌でCache-Aの存在を知ったんです。予算的にもなんとか範囲内の価格なので導入を決めました。」大崎氏

導入したCache-Aは、Pro-Cache4というモデルで、1巻のテープに800GBのデーターを保存することができる。操作もWebブラウザーを用いて簡単に行うことが可能だ。ディスクに保存されたデーターをテープに記録するには、ドラッグアンドドロップするだけの操作で簡単に行うことができる。従来テープドライブは、転送レートやテープ上に記録されたデーターの検索などに問題があったが、Cache-Aの転送レートは75MB/sあるほか、テープのロード時に、LTOのテープカセットに組み込まれているMICチップに記録されたインデックスの変更日付を読み、Cache-A本体のデータベースと同じであれば、本体のデータベースからカタログを表示するので、20秒程でテープ内のTapeDirectoryに表示される。

LTOを採用したバックアップシステムのなかには、テープを装填するとそのたびにテープ上のインデックスを読み込む仕様の製品もあり、その場合は1分ほど待たされることになるが、Cache-Aはその必要がない。

「HD化に向けてカメラも編集システムもHD対応のファイルベースで行っているんですが、バックアップやアーカイブでテープを使うのって、なんか時代に逆行しているような気がしたんですが、実際使ってみるとテープに記録している感覚はほとんどないですね。操作も簡単で、転送レートも早いし。素材を含めても1番組当たり20GBくらいなので、Cache-Aのテープ1巻に40番組ほどバックアップできるので容量的にも満足できます。」(大崎氏)
shimanto777.jpg shimanto778.jpg

編集システム横のCache-A。NAS接続で、LAN環境があればどこにでも設置できる

Cache-Aの操作画面。ファイルやフォルダーコピーならドラッグアンドドロップで操作できる

Cache-Aに採用されているテープドライブは、LTOドライブで、エンタープライズ系の基幹業務用のバックアップシステムとして開発されたものだ。したがって信頼性が高いだけでなく、長期にわたる保存性や将来新しいドライブが発売されても2世代まで下位互換が保たれるようになっている。なお、Cache-Aでは、1巻のテープに800GB記録が可能なLTO-4ドライブを搭載したPro-Cache4とPrime-Cacheというモデル。1.5TBの記録が可能なLTO-5ドライブを搭載したPro-Cache5というモデルがラインナップされている。

バックアップやアーカイブの目的は様々だが、地域に密着したCATV局の多くは、その地域ならではの風習や伝統芸能、景観などを丁寧に収録している。こうした映像はその地域だけでなく重要な文化遺産となりうるものでもある。特に過疎化が進む地域では伝承する若者も少なくなり、映像での記録は非常に貴重な資産となるだろう。

「実は、四万十町CATV以前の素材がDVテープで300本以上あるんです。これもアーカイブしようと目論んでいるんですが、いったんキャプチャーしてからCache-Aでバックアップという作業になるので、手間隙がかかってなかなか進まないですね。DVのデッキがあるうちに何とかしたいと思っているんですが。」(森下氏)

CATV局の自主放送が始まったころのVTRはUマチックがほとんどであった。おそらく歴史のあるCATV局には当時記録したUマチックのテープがまだ残っているのではないだろうか。すでにUマチックのVTRは製造中止になり、修理もままならない状態だ。その後もベータや8ミリビデオ、MⅡなどCATV局に導入されたであろうフォーマットはいくつかある。もちろん、CATV局に限らないが、こうしたアナログ記録のデッキはすでにあるいは近いうちに修理すらできない状況になるだろう。貴重な映像をアーカイブするには今が最後のチャンスなのかもしれない。

「バックアップやアーカイブの作業は始まったばかりなので、Cache-Aのテープの数も数本しかなく、どのテープに何が記録されているかは大体すぐにわかるんですが、これから300本以上あるDVテープや毎週制作している番組などでCache-Aのテープが増え、更に年月がたって担当者が変わったりしたときのことを考えると、ファイルネームやフォルダー、テープのインデックスなど、どこにどんな映像があるのか、誰が見てもわかるようにしなくてはならないと思ってます。」(森下氏)

通常は年度や年月でテープを分けたりインデックスを制作することになるだろうが、四万十川桜マラソンの過去の映像全部といった場合や○×町長さんの参加した行事を検索したいというような場合ファイル名だけでなくそのファイルの内容を説明したインデックスの作成が必要になってくるだろう。

shimantoTVprog0.jpg shimantoTVprog1.jpg
番組「四万十うぉっちんぐ」より、大正あゆまつり。アユの火振り漁を紹介

 四万十川まつりから、地元よさこいチームの踊り披露

Cache-AではWeb GUIから、クリップ毎またはフォルダ毎、テープ毎にキーワードやロケーション情報を埋め込んで検索語とすることができるようになっているので、後で検索に便利なようにインデックスを作っておけば、こうした用途には有効だろう。ただ、適切なインデックスのルールを決めておかないと後で検索したときに必要のないファイルがやたらヒットしたり、必要なファイルがヒットしないというようなことが起こりがちなので、最初のルール作りが肝心であろう。また、Cache-Aは、将来のバージョンでMXFのメタデータ読み込みに対応する予定となっているので、撮影時の素材などはカメラ側で自動的に記録されるメタデータを検索に利用できる。

また、検索用のデータベースを別途作りたいというような場合でもテープ側のインデックスに頼らなくても、本体内のデータベースにはsqlとXML形式で情報が保存されているので、それをテキストなどに書き出す事でデータベースを作成することもできる。Cache-AはOSにLinuxを採用しているほかMySQLという比較的一般的なソフトを利用しているので、プログラムなどある程度知識があれば、外部のDBなどと連携をとったり、テープ毎の内容をリスト化してインデックス用にプリントアウトすることもできるだろう。

財団法人 四万十町地域振興公社
〒786-0011
高知県高岡郡四万十町香月が丘1434番地1
四万十町ケーブルネットワーク
http://www.shimanto.tv/

WRITER PROFILE

編集部

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。