ファイルベースワークフローが当たり前の様に行われている今、マスターテープの代わりになる長期保存可能な大容量メディアが必要とされている。同時に、D2テープなど古いテープメディアをファイル化し、デジタルデータとしてアーカイブする需要も増えている。これらの需要を満たすメディアとして、LTOが注目を集めているのだ。LTOは耐用年数が長く、十分な実績もあり、容量単価も安い。また、何よりも大容量で転送レートも高速だからだ。ところが、LTOのアーカイブシステムというと高価で、運用も難しいというイメージはないだろうか?
そのイメージをくつがえすべく登場したのがCache-A社のアーカイブアプラインアンスという新しいジャンルの製品だ。
アーカイブアプライアンスとは
Cache-A社のいう「アーカイブアプライアンス」とはどういう製品だろうか。一般にアプライアンスというと、特定の機能に特化し、信頼性が高く、操作も簡単で、価格も安いコンピュータのことである。ともすれば高価で、システム構成や操作方法も複雑になりがちだなのがアーカイブシステムだが、それとは反対に、アーカイブアプライアンスは、低価格でシンプル、信頼性が高くて高機能なスタンドアロンの製品なのである。
製品ラインナップ
Cache-Aアーカイブアプライアンスの製品ラインナップは至ってシンプルだ。小型でデスクトップに設置するスタイルのPrime-Cacheと、ラックマウントも可能なPro-Cacheという2種類のフォームファクタがあり、LTO-4ドライブを搭載したPrime-CacheとPro-Cache4、LTO-5ドライブを搭載したPro-Cache5という構成だ。これらの製品には、対応LTOのほか、ハードディスク容量や外部ポート、メモリの搭載量などが異なる。
[ラインナップ比較表]さらに、Pro-Cache4とPro-Cache5用のオプションとして、ライブラリオプション「Pro-Cache Library24」も用意されている。このオプションは、ライブラリに装填された24本のLTOテープの入れ替えをオートメーション化するものだ。これによって、テープスパニング(テープまたぎ)が自動化され、スケジュールバックアップをより効果的に活用できる。また、Pro-Cacheとライブラリの各々に搭載のLTOドライブを合わせて使用することが可能で、2台のLTOドライブを使用してリストアを同時に行うことも可能だ。このオプションは9月末から提供が開始される予定だ。
[ライブラリ比較表]製品の特徴
スタンドアローンで動作
Prime-CacheとPro-Cacheはどちらもスタンドアローンで動作する。製品そのものは、Linuxで動作するサーバーであり、HDDとLTOドライブと専用ソフトウェアが組み込まれている。そのため、電源とネットワークに接続するだけですぐに使い始めることが可能だ。特別なインターフェイスや接続ソフトウェアのインストールなどは必要無く、設置も運用も非常に簡単に行うことができる。ネットワーク上のどのマシンからでもアーカイブやリストア、本体の設定ができ、必要に応じて、ディスプレイとキーボード、マウスを接続し、本体から設定を行うこともできる。
NASにファイルをコピーするだけの簡単アーカイブ
Prime-CacheとPro-Cacheは、すべてのモデルにハードディスクが内蔵され、電源を投入するとすぐにNASとしてネットワーク上に共有ボリュームを公開する。そして、テープを挿入すると、共有ボリューム上にテープのメディアIDと同じ名前のVTAPEと呼ばれるフォルダが作成される。ネットワーク上のコンピュータからこのVTAPEフォルダにファイルをコピーすると、自動的にデータベースにカタログとして保管され、同時にLTOテープにもアーカイブされるのだ。
ユーザがファイルを特定のフォルダに置くというワンアクションだけで、カタログ化とアーカイブがすべて自動で行われるというのは、これまでの製品にはない簡便さだ。共有ボリュームは、AFP、SMB、NFS、FTPで共有されるので、およそすべてのPCから接続することが可能だ。
Web GUIからの簡単管理
ブラウザからWebGUIにアクセスすれば、カタログ化されたデータ情報を検索したり、リストアすることができる。また、カタログ情報はLTOのテープが挿入されていなくても閲覧可能だ。
図のファイルマネージャー上では、アーカイブしたファイルに検索可能なキーワードを割り当てたり、LTOテープの保管場所情報などを付加することができる。リストアもファイルを右から左にドラッグアンドドロップするだけの簡単操作だ。 その他、ネットワークの設定やユーザ管理などの本体設定もわかりやすいWeb GUIから行うことができる。
外付けHDDやUSB、メディアリーダーから直接アーカイブ
Prime-CacheにはUSB端子が6つ、Pro-Cacheにはそれに加えてsSATAとExpressCard端子が搭載されている。これらの端子を使用して、外付けのストレージやUSBメモリを接続し、直接LTOテープにアーカイブすることができるため、プロジェクトデータのバックアップや完パケデータのアーカイブも手軽に行える。テープスパニング機能を利用すれば、LTOテープの容量より大きなストレージもテープをまたいでアーカイブすることができるため、長尺もののプロジェクトデータやドキュメンタリーの収録素材など、巨大なアーカイブも可能だ。
また、メディアリーダーを使用すれば、SDカードやコンパクトフラッシュ、SxSカードなどの収録メディアを直接読み込むことも可能だ。ファイル収録では、テープと違ってメディアを使い回すためにマスターが存在しない場合が多いが、収録データをLTOにアーカイブしておけば、マスターテープ代わりになり、万が一の場合でも安心である。さらには、接続した外付けHDDやUSBメモリに直接リストアすることもできるため、リストアしたデータをすぐに利用したい時などに便利だろう。
ネットワークマウントとスケジュールバックアップ
Cache-A製品には、同一ネットワーク上にある共有ボリュームをマウントして、スケジュールバックアップする機能も搭載されている。現在のバージョンでは、NFSとSMBで共有されているボリュームしかマウントできないが、将来的にAFPもサポートされる予定だ。この機能を使えば、日時指定だけでなく、毎週月曜日や週末のみといった繰り返しスケジュールも設定できる。注意が必要な点として、同じボリュームを繰り返しバックアップする場合、テープメディアの性格上、差分バックアップではなく毎回フルバックアップになるので、常にテープの容量に注意を払う必要があることだ。しかし、9月末に発売されるPro-Cache用のライブラリオプション、Library24を使用することで24本ものテープの入れ替えが自動化され、最大36TBもの自動アーカイブシステムも構築可能である。
TOCを含む自己記述型メディアを作成
Cache-A製品は、過去にアーカイブしたすべてのテープのカタログデータを本体内に持つため、テープを挿入しなくてもテープの中身を検索したりブラウズすることが可能だ。しかしそれだけでなく、LTOテープメディアにもTOC(Table of Contents)と呼ばれるインデックス情報を記録する。これは最近話題のLTFSとよく似た考え方だ。テープ内にディレクトリ構造などを含むインデックス情報を記録しておくこと(自己記述型)によって、Cache-A製品同士であればLTOテープのやりとりがよりスムーズに行えるようになるばかりでなく、本体のカタログデータベースが破損した場合でも、テープを挿入するだけでカタログの再構築が行えるようになっているのだ。
さらに、テープ上のTOCと本体のカタログ情報はLTOテープのMICチップを利用して比較され、常に内容が同じになるように設計されている。そのため、離れた場所にある複数台のCache-Aで同一テープにアーカイブした場合でも、テープの内容とカタログにずれが生じるようなことはない。
Cache-A社は、独自の方法でテープ内にインデックス情報を内包させているため、LTO-4でもこの仕組みを利用できるのだ。独自形式というとアーカイブとしての汎用性がなさそうに思えるが、Cache-Aの記録フォーマット自体は一般的なTAR方式を採用している。TARはUNIXの世界では30年の歴史を持つ、実績と信頼のある、汎用性の高いフォーマットである。そのため、インデックスによるブラウズはCache-A製品同士でしか機能しないが、Cache-AでアーカイブしたLTOは一般的なUNIXのコマンドラインからでもリストアすることが可能である。アーカイブが将来に渡って読み出せるかどうかは、フォーマットの汎用性が重要だが、その点に置いてもCache-Aのアーカイブ方式であれば安心が保証されていると言えるだろう。
まとめ
このようにPrime-CacheとPro-Cacheは様々な用途へフレキシブルに対応し、信頼性の高いワークフローを安価に構築することが可能な製品だ。今回の記事内で挙げた使用例は、ほんの一例で、組み合わせることでさらに多くの使い方があるだろう。Library24の発表によって、より大規模なシステムにも対応が可能になっただけでなく、本体とライブラリオプションをセットで購入しても300万円以下という価格には驚きだ。中小規模の制作会社やポストプロダクション、ケーブルテレビ局でも導入しやすい価格帯ではないだろうか。今後は、メタデータの読み込みやLTFSへの対応など、さまざまなアップデートが予定されている。SDKもより充実し、他社製のMAMともより緊密な連携が可能になるだろう。ますます進化するCache-A製品に今後ともご期待頂きたい。
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