IMC Tokyo 2011が今年も開催された!
2011年6月8日から6月10日まで、千葉市美浜区にある幕張メッセでIMC Tokyoが開催された。IMC Tokyoは、放送映像関係者や通信関連事業者を対象とした展示会だ。昨年は、Interop Tokyo、IMC Tokyo、デジタルサイネージジャパンの併設展示会を合わせて3日間合計で約13万人もの来場者を集めた。国内のテクノロジーイベントの中でもトップクラスの来場者を誇る展示会の1つといっていいだろう。ここでは、IMC Tokyoについて見て行こう。
今年のIMC Tokyoの展示会場で目立っていたのは電子機器製造販売メーカーが手がける館内で自主放送を実現するOFDM変調器関連の展示だ。館内に設置された地上デジタル放送対応テレビを使って自主放送番組を視聴できる変調器の展示が複数の企業から行われていた。このほかにもスマートフォンやタブレット端末への対応をアピールする製品も多かった。配信者側もiPhoneやiPadを無視できない状態で、アウトプットにかかわるツールは”マルチスクリーン対応”とか”各種スクリーンメディアへの対応”といった表現でiPhoneやiPad、Android端末への対応をアピールしていた。
今年のIMC Tokyoの出展社数は21社で、昨年の16社より多少増えた。増えた出展社にアンテナや電子機器製造販売メーカーが目立つのは、毎年行われている「ケーブルテレビショー」が9月に延期されてセミナー主体の「ケーブルショー」に変更となってたのが関係していると思われる。今年は出展者数が増えたとはいえ、今後、IMC Tokyoがどのように発展していくのか気になるところである。
ニコンシステム~映像評価ソリューションを展示~
ニコンシステムが展示していた製品は3つ。注目はHD-SDI信号を本体に入力してリアルタイムにテープ素材特有のノイズを検査できる映像ノイズ検出装置「VQ-RT101」だ。目視検査を自動化することで、業務の効率とコスト削減を実現することができるというのが特徴だ。昨年のIMC Tokyo 2010では試作機の展示だったが昨年末に発売され、今年のIMC Tokyoでは製品版が展示されていた。さっそくいろいろなDVDのオーサリング現場で、マスターのテープにノイズやエラーがないかのチェックとして使われているという。
MPEG-2 TSやMP4、WMVといったファイルベースのコンテンツをターゲットにしたコンテンツチェッカー「VQ-500」も展示されていた。映像の検査項目として、ブロック歪やフリーズ、ブラックアウト、ビット量測定のチェックに対応している。フォルダ監視による自動検証に対応しているので、大量のコンテンツの検査が可能となっている。
「VQ-1200」はエンコードによってどれだけ映像が老化をしたのかを測定するツールだ。先に紹介した「VQ-RT101」と「VQ−500」は比較対象を必要としないノンリファレンス型のツールだが、「VQ-1200」はエンコード前とエンコード後の映像品質の違いをチェックするリファレンス型のツールだ。原画像と比較した劣化現象を「ぼやけ」「ブロック歪」「ノイズ(ランダム付加ノイズ)」「フリッカー」の4つの評価尺度とPSNRで評価する方法、単独画像の評価はエッジ特徴を抽出し数値化することにより「ぼやけ度」を評価することができる。
マスプロ電工~エリアワンセグシステムとケーブルテレビ関連機器を展示~
狭いエリアに独自の映像やデータをワンセグ技術を配信できるエリアワンセグシステムをメインに展示していた。参考出品の段階だが、マスプロ電工はすでに羽田空港第2旅客ターミナルで実証実験を行っていることや、防災・災害情報や観光情報、商店街情報を狭いエリアに限定したサービスの活用が期待されていることが紹介されていた。
FTTH化を検討しているケーブルテレビ局向けの提案も行われていた。設備費を軽減できるデジタル放送専用の光受信機や、データ通信の高速大容量化を検討しているケーブルテレビ事業者向けのケーブルモデムとケーブルモデム管理装置、ケーブルテレビ事業社向けに導入コストを低く抑える光送受信機などのシステムや機器を紹介していた。
アイティアクセス~コンテンツ自動検査/品質評価・ソリューションを展示~
注目はコンテンツ自動検査/品質評価のソリューションの3つだ。Interra Systems社の「Baton」は、ファイルベースのワークフローに最適な放送局向けの自動品質検査ソフトウェアだ。従来、目視検査で行っていたチェックを自動で行うことにより、労力やコストを大幅削減してくれる。競合ソフトよりも、ビデオレイアウトやビデオ品質などの検査機能を非常に細かく設定できるのが強みで、すでにワールドワイドで140社以上の採用実績があるという。
こちらもInterra Systems社のオフライン詳細解析ツール「Vegaメディアアナライザ」だ。他の評価/検査ソフトと異なり、AV機器などの開発、デバッグやテストをする開発現場向けの製品だ。各種規格に対して適合検査、互換性の検証をしたいという場合や、エンコードされたストリームに含まれる問題点の抽出と解決や修正、製品のパフォーマンスを最適化という場合に使われている。
「QE1000」は、基準映像と評価対象映像を入力するフルリファレンス型の映像品質客観評価検査ソフトウェアだ。NTTサービスインテグレーション基盤研究所が開発した国産のソフトだ。国際標準化を達成した映像品質評価アルゴリズムを搭載し、ユーザの体感する映像品質を高精度に測定可能なのが特徴だ。評価値のグラフを確認できたり、インサービス映像品質監視が可能で、最適なエンコードパラメータの解析にも使用することができる。
DXアンテナ~エリアワンセグシステムやギャップフィラーシステムを展示~
エリア限定のワンセグシステムを展示していた。ホワイトスペースの実証実験にも参加していることや、地下街や屋内で店舗情報、屋外で幅広い範囲にワンセグサービスを提供できることが紹介されていた。
災害などでの停電時に対応した地上デジタルギャップフィラーシステムのデモが行われていた。災害時による停波時も地上波デジタル波を発射するギャップフィラー用ヘッドアンプや、携帯電話のワンセグ端末で放送受信ができるエリアワンセグシステム、本体内蔵のバッテリーにより放送波1波の継続提供が可能といった近日発売予定のヘッドアンプが稼動していた。
メディアグローバルリンクス~館内デジタル自主放送システムを展示~
新製品は病院や学校、ホテルなどの既存アナログシステムをそのままデジタル自主放送を実現する「MD2810」だ。学校など館内のテレビの使われていないチャンネルに映像を流すことができるシステムだ。施設内のアンテナを使って簡易的に自主放送が実現できる製品だ。
ダイナコムウェア~DynaFontの魅力や実例をアピール~
同社のフォントが従来の印刷物だけでなく、電子書籍での使用やサーバーライセンスでの使用、外字ソリューション、ダイナフォントの採用事例などを紹介。最近同社のフォントが使われた映像作品の具体例として、エイベックス・マーケティングのDVD『お江戸でひらがなあそび』が上映されていた。
イノコス~HDエンコーダのクオリティを実演デモ~
DiviCom Electra 8000を中心に、Harmonic社のソリューションを展示していた。Electra 8000は、MPEG2やH.264に対応したHDエンコーダ。映像の品質も特徴で、実際に映像をオンエアしてクオリティをアピールしていた。
中日電子~スカパー!有料配信システムをアピール~
館内デジタル自主方法システムを展示していた。注目は新製品のホテル向けスカパー!HD番組有料配信システムで、課金の対応や管理がPCで可能というのが特徴。また、一般の視聴制限に対応したシステムは視聴制限がかかってるチャンネルを選択すると短時間映像が再生されてしまう「チラ見」と呼ばれる現象が起きる場合があるが、同システムはチラ見が起きないのもウリになっている。修学旅行の生徒が間違ってチャンネルを合わせても、未成年に見せたくない映像をカバーできるように配慮されているのが特徴だ。
フロントで管理する放送システムの管理画面。お客さんが間違えたて購入した場合など、フロントのほうで視聴の管理が簡単にできるようになっている。
アイベックステクノロジー ~超低遅延H.264コーデックをデモ~
低遅延H.264コーデック「HLD-3000」と低レートMPEG-2エンコーダ「MC-1000」の2機種が展示されていた。HLD-3000は昨年のInter BEE 2010やケーブルテレビショー2010でも展示されていたが、IMC Tokyo 2011では新しく搭載したFOMA回線での利用を想定した300Kbps程度の超低レートモードをの実演が公開。川崎市にある同社の屋上に設置した情報カメラ映像と幕張会場を約300KbpsのFOMA回線を想定した映像伝送のライブ中継で、具体的にパフォーマンスをアピールした。
来場者の多くはカメラの前で手を振ったりして、遅延のなさを体感していた。ライブでの掛け合いやスポーツ中継、放送局の送り返しでの運用などに期待できそうだ。
ダイコー通産~情報通信用ケーブルを展示~
ダイコー通産は、ケーブルやネットワークカメラ、光モジュールなどを展示していた。ブースではTFCの同軸ケーブルがブース中央にドラムの状態で展示して、代理店であることをアピールしていた。国内ではJ-COMのような大手に搬入実績もあるという。国産のケーブルは銅や被覆の供給不安定で値段が安定しないといった問題が起こるが、海外製のTFCは価格も供給も安定しているところも優位なところとのこと。
コンドーブロードキャスト~マルチスクリーン配信ソリューションをデモ~
SeaChange社のマルチスクリーン配信ソリューションを展示していた。国産オールインワン型番組自動送出装置「ADC-1」の実機も稼動した状態で展示されていた。「Universal MediaLibrary」ストレージは国内初公開だ。
シーティーシー・エスピー~スマートフォンへ動画配信にも対応したエンコーダーを展示~
注目はアダプィブビットレートストリーミングに対応したライブエンコーダー「Spinnaker」だ。従来はプレイヤーが違うとフォーマット(コンテナ)も違ってくるので、それだけの台数のエンコーダーを用意しなければならなかった。Spinnakerは、マルチコンテナ対応のライブエンコーダなので、これ一台で1つの入力をPC向けiPhoneやiPad、Android端末にもエンコードして配信に対応できる。
Yahoo!JAPAN~映像プラットフォームの新サービス「vipo」をアピール~
Yahoo! JAPANがIMC Tokyoに初出展して、ビジネス向けのオンライン映像向け映像プラットフォーム「vipo」をアピールしていた。ビジネスとして映像配信を行う場合に問題なるのがプラットフォーム選び。もし、自社で配信するとなる立ち上げると、コストも難易度も非常に高くなる。vipoならば、課金サービスにはすでにYahoo! JAPANの有料サービスの決済を管理するサービス「Yahoo!ウォレット」があったり、広告展開やマルチデバイス対応など、難しい知識がなくても映像を使ったビジネスができる。映像配信のワンストップソリューションをアピールしていた。
イメージニクス/ビデオトロン~あらゆるメディアを再生するメディアプレーヤーを初公開~
メディアプレーヤーの「MP-90HD」がIMC会場で参考出品として初公開された。AVIやWMV、MXFなど各種映像ファイルをリアルタイムにSDIに変換して出力することができるプレーヤーだ。PhotoshopのPSDやJPEG、PNG、TARGAといった静止画もHD-SDIから出力が可能。1UのラックマウントPCと液晶モニタはタッチパネルが標準で、直感的に再生操作が可能になっている。局内のサブで特定の素材を流したいというときに素材を選択してオンエアタイミングで流すのに使用したり、デジタルサイネージの結線でSDIで出力しないといけないという場合のプレーヤーとしても使えるだろう。
USBに収録した素材も直接再生が可能だ。
「LM-90HD/SD」は、緊急放送時に付き物のL字を中心とした映像合成装置だ。L字プリセットパターンは10種類、BG(バックグラウンド)入力は3面装備している。音声も持つことが可能で、プリセットパターンに連動して自動再生が可能。L時でなにかをやりたいというときのすべての合成機能をこの1Uの筺体に内蔵しているというイメージの機器だ。
ミハル通信機~館内デジタル自主放送システムを展示~
ブースで大々的に展示されていたのが、館内デジタル自主放送システム「MR3000X」シリーズだ。低コストで導入したいという場合は「MR3000X」(発売中)、放送局、競技場向けは「MR3100X」(6月受注開始)、4つのSD映像を搭載しているのが「MR3200X」(6月受注開始)、IPネットワーク配信に対応しているのが「MR3300X」(8月受注開始)がラインナップされている。キャッチフレーズは「機能2倍、サイズ1/2、価格1/3」で、価格やラインナップで競合製品との差をアピールしていた。
ブロードキャスターズイノベーション
日本テレビ放送網
日テレのブースは、日テレアプリ、日テレソーシャルネットワークゲーム、低遅延映像伝送システムの3点が展示されていた。特に目を引いたのは、低遅延映像伝送システムだ。従来の中継先では、アナログ放送を受信してその映像を見てカット割の現場のディレクションが行われていたが、今年の7月にアナログ放送が廃止される。しかも、地上波デジタルになると2.5秒の遅延があるで送り返しには使えない。そこで、日本テレビ放送網とテクノマセマティカル、日テレITプロデュースの共同で開発をしたのが、ここで紹介する低遅延送り返しシステムだ。インターネット回線をもちいて、0.1秒という遅延を実現している。PCのほかにiPadやiPhoneに対応のデコーダソフトがあり、レートも200kbpsから1Mbpsまで自由に設定できる。
インターネット回線があればいいので、インターネットが使えるところがあれば世界中どこでも対応が可能だ。海外で行われたサッカーのワールドカップで導入した際にはアナウンサーから好評だったという。
radiko
ブースではIPサイマルラジオ「radiko.jp」のサービスの紹介が行われていた。来場者の多くは地域判別に興味があるようで、同様の質問をいろいろな人が行っていた。
NHK
放送波で送られてくる番組と、ネットワークで送られてくる番組に関連する情報とを組み合わせた放送通信連携サービス「Hybridcast」のデモが行われていた。従来の電波で提供される映像に、インターネットから情報を付加するという規格だ。例えば、放送波のみだと字幕は英語と日本語しか提供できないが、Hybridcastを使えばいろんな言語を提供できることをデモしていた。今後は事業展開を含めた放送業界全体全体のサービスとして検討をしていくとのこと。
TBS
映像伝送に3GやWiMAXを使ったモバイルハイビジョン中継の紹介が行われていた。ビデオカメラやスマートフォンから中継が可能になるというものだ。出来上がったばかりのシステムで、これから、細かい問題点を解決していく段階だという。SD対応のモデルで実際に使われた一例として、プロ野球のドラフト会議で指名された選手の中継に導入されたことがあるという。
高速ファイル転送する技術「Storm」のデモも行われていた。放送局では取材した映像を本社に伝送したい場合は、衛星伝送やFPUを使って行われている。しかし、インターネットも高速になり、光回線を使えば、伝送することも可能だ。それらのインフラにTBSではファイル転送アプリケーション「Storm」を使って、ネットワークに左右されないで回線の帯域を無駄なく使うことを実現している。TBSによる100%オリジナルで開発したプロトコルを用いたもので、この技術は特許出願中であるという。