変わりゆくカメラのラインナップ

記録フォーマットとカメラの性能はバランスをとって企画・設計されるのが一般的で、おのずとその用途も決まってくる。ところが、最近は編集フォーマットを採用したレコーダーが出現し、記録フォーマットとカメラのバランスより、ワークフローを重視する現場も増えてきている。ファイルベースワークフローが一般化することで、記録フォーマットがなんであろうとほとんどの編集システムは対応しているものの、圧縮コーデックを統一することで、コーデックの違いによる画質の差や記録メディアの統一など実務面での効率を求めているのであろう。

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ソニーはHDCAM SRを頂点にXDCAMやNXCAMなど用途に応じたコーデックを用意することでそれぞれのビジネスモデルに最適なシステムを展開しているが、ユーザーは必ずしもメーカーの思惑通りの使い方をするとは限らない。XDCAMはベータカムやデジべの後継として主にENG主体のフォーマットという位置づけであったが、ベータカムがそうであったようにドラマなどの制作用としても使われるようになり、そうした用途向けにXDCAM HD422シリーズが開発された。こうした流れもあり、カメラはショルダータイプが主流で、小型ビデオカメラとしてXDCAM EXが発売されているが、撮像素子が1/2型ということもあり、制作用スモールサイズカメラといったイメージだ。今回もっと取り回しの良い小型ビデオカメラとして登場したのがPMW-100といえる。

小回りの効く出来のいいPMW-100

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レンズリングは1つでズームとフォーカスを切替使用。フルオートボタンで簡単に撮影可能

小型ビデオカメラは、記者カメや女性カメラマンのほか、ドキュメンタリーやディレクターカメラとして使われることが多いため、小型軽量で扱いが簡単なことが望まれる。PMW-100はバッテリーやメモリー、フードなど実際に使用される状態で約1.8kgという質量だ。手にとった感じも見た目のイメージより軽い。レンズは5.4-54mmの10倍ズームで、最短撮影距離もワイド時1cm、テレで80cmとなっており、手持ち撮影を行う場合でも遜色はない。ただ、ワイド側は35mm換算で40mmとなっており、もう少しワイド側がほしいところだ。

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レンズは5.4-54mmの10倍ズームを搭載。オプション0.7倍のワイドコンバーターが用意されている。ワイド側は35mm換算で40mm、もう少しワイド側が欲しいところ

オプションで0.7倍のワイドコンバーターが用意されているが、欲をいえばワイコンなしで30mmほどの画角が欲しい。この手の小型カメラでは階段や廊下、狭い室内、自分撮りなどを撮影することが多いからだ。レンズ部分は質量に影響するため、軽量化のために犠牲になっているのかもしれない。ちなみに、同じサイズの撮像素子を搭載したNXCAMのHXR-NX70Jのワイド側は26.3mmだ。画質的な問題もあるがちょっと残念なところである。

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夜間シーンの撮影。感度アップは最大にしてある。通常撮影に比べノイズ感はあるが、色つきなどかなりしっかりした画像で撮影できた

小型ビデオカメラの撮影では、照明なしのいわゆる場明かりだけで撮影することも多く、特に暗いところでの撮影では、カメラの感度が問題になる。PMW-100は新開発のExmorセンサーを搭載しており、低照度から高輝度まで広いダイナミックレンジを持つという。

実際夜間の撮影を行なってみたところ、さすがにノイズは増えるものの、かなりしっかりした撮影ができた。画像を見るとかなり明るく見えるが、節電のためかなり暗いシーンである。

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ナイトショットでの撮影。赤外領域での撮影になるため、ほとんど色がない世界になるが真っ暗闇でも撮影できる

また、ナイトショット機能を装備しており、取っ手の先端にあるマイク下部分の赤外照射により、明かりのない暗闇でも撮影可能だ。ただし、赤外撮影となるため、ほとんど色の無い世界になる。ナイトショットでの撮影は赤外照射が届く1m程が撮影範囲といえるだろう。従来撮影不可能だったこうしたナイトシーンから一般的なデイシーンまで幅広く撮影できる。

記録フォーマットはMPEG2 HD422のMXF 50MbpsのほかMXF 35MbpsやXDCAM EXでも採用されているMP4ファイル形式での35Mbpsおよび25Mbps記録、DVCAMフォーマットによるSD記録にも対応している。入出力端子はHD-SDI、HDMI、i.LINK、コンポジットなどが装備されており、外部モニターやレコーダーなどを接続できる。また、6種類のガンマカーブのほか、シネマライクなガンマカーブを4種類プリセット。スタンダードガンマはユーザーによる微調整も可能となっている。小型ビデオカメラとはいえ、ショルダータイプのXDCAMカメラと組み合わせた撮影でもトーンなどの調節を行うことで、制作用サブカメラとしても使うことができそうだ。

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3.5インチWVGA(852×480)のLCDモニター搭載

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PMW-100のカラーバーをHD-SDI出力で波形モニターで表示

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入出力端子はHD-SDI、HDMI、i.LINK、コンポジットなどが装備されており、外部モニターやレコーダーなどを接続可能

小型ビデオカメラは、サブカメラ的な位置付けだけでなく現場によってはメインのカメラとして使用されることもある。求められる性能や機能もユーザーによって高度なものが要求されるようになってきた。メーカーもこうした多岐にわたるユーザーの要望に応えるべく製品開発を行なっており、すでに市場には数多くの製品が出回っているものの、やはり全てのユーザーが納得できてはいないようだ。

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記録フォーマットはMPEG2 HD422 MXF 50Mbpsのほか、MXF 35MbpsやXDCAM EXでも採用されているMP4ファイル形式35Mbpsおよび25Mbps記録、DVCAMフォーマットによるSD記録にも対応

特に記録コーデックは機種やメーカーによって異なるほか、編集コーデックという選択肢もでてきており、カメラとの組み合わせは多岐にわたる。

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記録媒体はSxSメモリーカードで2基のスロットを装備

小型ビデオカメラのルーツは民生用のコーデックを採用したサブカメラ的な位置付けだったが、最近ではレンズ交換可能な製品や大判センサーの搭載など、従来制作用であるカメラの領域まで進出している。ただ、小型ビデオカメラの利点である取り回しの良さとの兼ね合いもあり、あまり欲張った仕様にすると中途半端な製品になりかねない。

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取り付けネジ穴部分。ねじ山部分は金属が埋め込まれているが、軽量化のためか底部はプラスチック樹脂製だ

理想的には撮影状況に応じて様々なカメラを使い分けしたいところだが、昨今の経済状況からも何台ものカメラを所有するわけにもいかず、いきおいで小型ビデオカメラに対する要求項目が多岐にわたり厳しくなってしまうようだ。運用上でも異なるフォーマットのカメラを持つことで、バッテリーやメディアなども多岐にわたる可能性もあり、ある程度の共通化が望まれる。

レンズ、センサー、記録部分をユーザーが自由に組合わせて使用できるようになるとありがたい。カメラとVTR一体化の黎明期にはベータカムやMⅡ、S-VHSとカメラ部分はメーカーの壁を超えて組み合わせることができたし、バッテリーも選択可能だった。時代に逆行するようにも思えるが、レコーダーやデジタル一眼が業界に受け入れられている背景には単にシネスタイルというくくりだけではなくこうした事情もあるように思う。

主な仕様

  • 撮像素子:1/2.9型”Exmor”CMOSイメージセンサー単板式、有効画素数1920×1080
  • ゲイン:-3、0、3、6、9、12、18dB、AGC
  • レンズ:5.4~54mm(35mm換算40~400mm)F1.8~F2.9
  • 手ブレ補正:レンズシフト方式、ON/OFF可能
  • 入出力端子:SDI OUT(HD-SDI/SD-SDI切り替え可能)、HDMI、VIDEO OUT(HD-Y/COMPOSITE)/GENLOCK IN(VIDEO OUT/GENLOCK IN切り替え式)、A/V OUT(AVマルチコネクター)、i.LINK IN/OUT、TC IN/OUT、USB(ミニType B端子)
  • 表示部:0.24型ビューファインダー(アスペクト比 16:9、392×224)、3.5型LCDモニター(アスペクト比16:9、852×3RGB×480
  • メディアスロット:ExpressCard/34×2
  • 外形寸法:167×164×278mm(突起部含まず)
  • 質量:約1.5kg (本体)、約1.8kg (レンズフード、アイピース、BP-U30、SxSメモリー1枚含)
  • 電源:DC12V(11.0~17.0V)、約12W(記録時、VF[ON]、LCDモニター[OFF]、I/Oセレクト[OFF]時)
  • 記録フォーマット(UDFモード/MXF):MPEG HD422(HD422 50)、MPEG HD(HD420 HQ),DVCAM
  • 記録フォーマット(FATモード/MP4):MPEG HD(HQ)、MPEG HD(SP)、 DVCAM

URL:http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201204/12-048/

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。