4K時代に合わせたカメラの変遷期

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2014年9月に発表されIBCに出展。2014年11月から発売が開始されているPXW-X200。デザイン的にはPMW-100からPMW-200になったというイメージで、内容的にはPMW-200の後継機種

2007年にXDCAMのハンディタイプのカメラとしてPMW-EX1が登場して以来この手のハンディカメラが数多く製品化され、現在では放送局でも普通に使われるようになった。特に2014年はカメラのラインナップのほとんどが新製品と入れ替えるような勢いで矢継ぎ早に新製品を投入した年といえよう。ソニーとしては、来るべき4K時代を見据えカメラやレコーダーをXAVC搭載機種に一新するという作戦のようだ。

XAVCは2012年に発売のPMW-F55、その翌年に発売になったPXW-Z100といった4K対応カメラにXAVC Intraが搭載されていたが、2014年に入ってPXW-X180/160あたりからXAVC LongがHDカメラにも搭載されるようになった(PMW-300や400などファームアップで対応する機種もある)。更に民生機用にXAVC Sもあり、将来的には民生機から放送機器までXAVCに統一していくのであろう。

PMW-200の進化型後継機PXW-X200の存在

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操作系だけを見るとPMW-200のほとんど見分けがつかない。右上のSONYのロゴ下にXAVCのロゴがある

さてこうした背景のなかで、昨年PMW-200の後継機といえるPXW-X200が発売になった。4Kの話題が先行している昨今だが、現状はまだHDによる収録が中心となっており、ハンディタイプのHDカメラとしてPXW-X200はその集大成ともいえる機種といえるだろう。PXW-X200は一見するとPMW-200にそっくりなデザインとなっているがレンズやセンサーなどが一新され、フルモデルチェンジされている。

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LCDモニターの蓋を開けるとデッキコントロールなどのキーがある。この辺りはXDCAM EXあたりから取り入れたデザインだろう

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LCDモニターに表示されたクリップのサムネイル。ほかの表示に比べてちょっと動作にもたつきが感じられるが、PXW-X200は基本カメラであり再生機ではない

レンズ、イメージセンサーに期待できる性能

レンズはマニュアル操作に対応した17倍ズームを搭載しており、PMW-200より広角側および望遠側にズーム域が拡張されている。この手の小型カメラでは、車内や一般家庭の室内などで撮影することも多く、29.3mm(35mm換算)とより広角側での撮影に対応したことはワイコンなどを装着しなくても撮影できる範囲が広がったといえよう。こうした狭い空間での撮影では広角だけでなく至近距離での撮影も必然となるが、マクロON時広角側での最短撮影距離は50mm(望遠では800mm)となっている。ただし、オートフォーカス時のみで、マニュアル操作の場合は80cmが最至近距離となる。これは、フォーカスリングがメカ的に結合したフルマニュアルのレンズとなっているため、望遠側の最至近距離である800mmにせざるをえないといった事情があるようだ。

フォーカス、ズーム共にマニュアルでの操作は適度な粘りもあり操作性は良い。この手の小型カメラにありがちなリングに終点がなく際限なく回ってしまったり、実際の回転とレンズの動きにタイムラグがあるというようなことはない。

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レンズはフジノン製の17倍ズームを搭載。広角側は29.3mm(35mm換算)とPMW-200よりワイドに対応した

レンズはフジノン製でプリズムも含めて同社でアッセンブリ供給しているようだが、操作性だけでなくズーム時の歪曲や広角時の周辺光量、望遠時の色収差などコンパクトなレンズながら非常に優秀だ。おそらく、電気的にある程度補正しているのだと思う。ちなみにフジノンには、1/2用のレンズとしてPXW-X200のレンズとほぼ同じ仕様のXS17x5.5BRMがあるが、100万円ほどの価格となっておりPXW-X200のレンズとはF値(F1.4)や最短撮影距離(60cm)など異なる部分があるとはいえ、通常の撮影ではPXW-X200のレンズと遜色はないといえるだろう。

センサーは新開発の大型1/2型 Exmor 3CMOSイメージセンサーを搭載しており、感度F12、SN比58dBとショルダータイプのカメラに匹敵する性能を有している。実際昼間の撮影ではNDを入れないとオーバーになってしまうほどで、日が落ちた暗い屋外でも感度アップしなくても充分撮影可能だ。また夜間の撮影でもザラザラした映像ではなくかなりきれいな映像で撮影できた。

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望遠時の画像。わずかにコントラストの低下があるようだが、シャープな画像だ

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広角時の画像。多少広角特有の歪曲はあるが画像周辺まで描写はしっかりしている

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望遠でこうした撮影をすると倍率色収差によるいわゆる2線ボケが生じやすいが画像ではほとんどわからない

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マクロはオートフォーカス時のみとなるが、広角時には50mmまで寄ることが可能。オートフォーカスに向かない被写体の場合もあるが、ワンショットフォーカスなどで何とか対応できる

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夜間での撮影。実際は画像で見るより暗いシーンだが、感度アップなしでここまで撮影可能だ。SNもよく、通常人が生活する環境ではライト無しで撮影可能だろう

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夜間と同じ場所での昼間の撮影

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太陽をもろに受けているのでフレアによるコントラストの低下はあるが、レンズ内の変な反射などはない

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レンズリモートコネクターが装備されており、デマンドコントロールが可能。平和精機工業のZC-9EXなどが使用可能

気になる記録部分は?

記録フォーマットはXDCAMのMPEG HD422コーデックに加え、XAVCのIntra Long、MPEG IMX、DVCAMなど様々なフォーマットに対応しており、HDのほかSDでの収録にも対応しているので、DVDやネット用のSD収録から高画質なHDまで用途に応じて選択することが可能だ。

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ボディ後部に整然と並んだコネクターやメモリースロット。USBやHDMIのほかi.LINK(IEEE1394)も装備されている

また、PXW-X200には2基のSxSスロットが装備されており、一方のスロットのメモリーが一杯になったらもう一方に続けて記録するリレー記録も可能となっている。さらに、SDカードスロットも装備されており、プロキシビデオの記録も同時に行うことができる。イベントやドキュメンタリーなどで長回しが必要だったり、メディアの交換タイミングがつかみにくい撮影の場合便利だが、同時に電源の確保も必要だろう。記録時間はXAVC Intraが約100Mbpsほどなので、64GBのメモリーで概ね1時間弱ほどの記録が可能だった。バッテリーは付属のU60で3時間弱の連続収録が行えたので、1本のバッテリーで64GBなら2本分位は撮影できそうだ。

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様々なフォーマットに対応しているが、通常使うフォーマットは放送局やプロダクションなどで決めていることも多い。不要なフォーマットをマスクするような仕組みもこれからはほしいところだ

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UDFやexFAT、FATなど各メディアによって対応非対応があるので注意が必要。また、記録フォーマットに影響することもある

搭載されているメモリースロットはSxSのExpressCardスロットだが、SDHCやXQDといった記録媒体を使用できるようにアダプターが用意されている。XQDはソニーやニコン、サンディスクが発表したもので、その後CFAが採用しニコンのデジタル一眼でもXQDを搭載した機種が発売されている。普及に伴い潤沢かつ安価になるものと思われるが、現状ではほとんどがソニー製で、その後参入したLexarのものが一部市場に出回っている。SxSも海外ではサンディスクのものが販売されているようだが、国内ではほとんど見かけない。XAVCでの収録に対応しているのはSxSとXQDとなっており、ソニー以外のメーカーからも積極的な発売に期待したい。

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各種アダプターにより、SxSだけでなくXQDやSDHCなど様々なメディアに対応可能

SDHCで記録可能なのは転送レートやファイルシステムなどの都合でMPEG HD420、DVCAMまでとなっているが、SDXCは使えるのかとか、2基あるスロットに異なるメディアを装填してもリレー記録できるのか、といった実験を今後機会があれば行ってみたい。また、2基あるスロットメモリーに同時記録できる機能が今年の春サポート予定。この場合も異なるファイルシステムでも記録できるのかや異なるメディアでも同時記録できるかといったところも興味のあるところだ。

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対応メモリーと記録可能なフォーマット。耐久性などを別にすれば速度的にはSxSとXQDはほぼ同等に扱うことができそうだ
※画像をクリックすると拡大します

RECボタンを押す前の映像を記録してくれるキャッシュレックやスロー&クイックモーションREC&ストップを繰り返しても1クリップとして記録するクリップコンティニアンスレック、インターバルレック、フレームレック、プロキシビデオなど様々な便利機能が搭載されている。ただこうした一連の機能は同時に2つまでとなっている。おそらくエンコーダーかレコーディング機能が2系統ありその範囲に限定されるようである。

ワイヤレスLANモジュールは重宝するのか?

PXW-X200にはワイヤレスLANモジュールが標準で同梱されており、ワイヤレスモニタリングやリモートコントロールが可能だ。これにより、Content Browser MobileというアプリをインストールしたスマホやタブレットPCなどから撮影中の映像をモニターしたり、アイリスやズームなどを操作することができる。AndroidならGoogle play、iOSならApp Storeから無料でダウンロード可能となっている。ただし、Androidは4.1~5.0、iOSは7.0以降となっている。コントロールだけならばブラウザからIPアドレスを指定すればよいので、OSのバージョンやノートPCなどプラットホームに関係なく利用可能だ。

実際に手持ちのスマホやiPadにアプリをインストールして試用したところ、録画のスタート/ストップやアイリス/ズームだけでなく、録画された映像の再生確認、R/Bゲインやプロキシ画像のフォーマット設定、Sony Ci Cloudを利用したメタデーターの管理など従来オプションとして用意されていたRCUなどを超えたコントロールや設定が可能だ。また、撮影している映像も手元で確認でき、この映像を見ながら録画のスタート/ストップやホワイトバランスの設定などを行うことができる。ステディカムなどを使った撮影ではこうしたワイヤレスリモートを使うことがあるが、かなりの部分はこれでまかなえそうだ。ただ、それなりにタイムラグがあるので、それ専用に作られたリモートシステムのように画像を見ながらフォローフォーカスするようなことはちょっと難しいだろう。もちろん、こうした撮影以外にも利用できる機能なので、大いに利用したい機能だ。ソニーでもそうした考えがあってLANモジュールを標準添付したのだと思う。

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標準添付のLANモジュールを装着したところ。コネクター的にはUSBなので、今後他のワイヤレスオプションなども開発されるのかもしれない

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Wi-Fiネットワークの設定はNFCやWPSに対応しているので簡単にリンクできる

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スマホでモニタリングや録画スタート/ストップといったコントロールや設定が可能

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Content Browser Mobileというアプリをインストールすると様々な設定も可能になる

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モニタリングと録画スタート/ストップなど撮影に必要な設定が1画面で表示。縦位置と横位置では表示のレイアウトが異なるようだ

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スマホ側からアップロード画像のレゾリューションなどを選択可能

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Content Browser Mobileに対応していなくてもブラウザからIPアドレスを指定することで、コントロールが可能

XAVCは当初4Kのカメラに採用され、デジタルシネマだけでなく4Kを業務用に利用するためのフォーマットという位置づけだったが、昨年あたりからHDにも対応し、HDと4Kのブリッジ的フォーマットという位置づけになったようである。

ベータカムがアナログからデジタルに移行を図った時代、MPEG IMXを含め全てのフォーマットに対応したVTRが発売されたことがあったが、ある意味それに似たコンセプトといえるだろう。思うにVTR時代から様々なフォーマットを世に送り出してきたソニーは、2014年辺りからフォーマットの集約を図りだしたとも見て取れる。そういう意味ではPXW-X200はその集大成で、今後SDは切り捨て、HDや4Kへ向かって行くのであろう。

PXW-X200とPMW-200の主な仕様

PXW-X200 PMW-200
質量 約2.8kg
(レンズフード、BP-U30、SxSメモリー1枚含む)
約2.7kg
(レンズフード、アイカップ、BP-U30、SxSメモリー1枚含む)
外形寸法 168×161×331mm 172×164×317mm(突起部含まず)
消費電力 約18W
(記録時、LCD OFF、EVF ON、I/OセレクトOFF、Wi-Fi OFF時)
約12W
(記録時、VF ON、LCDモニターOFF、I/OセレクトOFF時)
連続動作時間
  • 約4.5時間(BP-U90)
  • 約3時間(BP-U60)
  • 約1.5時間(BP-U30)
  • 約6時間(BP-U90)
  • 約4時間(BP-U60)
  • 約2時間(BP-U30)
撮像素子 1/2型ExmorCMOSイメージセンサー
RGB3板式
1/2型ExmorCMOSイメージセンサー
RGB3板式
有効画素数 1920×1080 1920×1080
感度
(2000lx、反射率89.9%)
F12
(1920×1080/59.94iモード)
F11(標準)
(1920×1080/59.94iモード)
最低被写体照度 0.02lx(標準)
(1920×1080/59.94iモード、F1.9、+18dB、64フレーム蓄積、ガンマON、50%ビデオレベル)
0.12lx(標準)
(1920×1080/59.94iモード、F1.9、+18dB、64フレーム蓄積)
SN比 58dB 56dB(Y)(標準)
ビューファインダー 0.45型液晶852(H)×480(V)約123万画素相当 0.45型、852(H)×480(V)(相当)
LCDモニター 3.5型、960(H)×3(RGB)×540(V) 3.5型、852(H)×3(RGB)×480(V)
レンズ 5.6~95.2mm(35mm換算29.3~499mm)
17倍F1.9
5.8~81.2mm(35mm換算31.4~439mm)
最短撮影距離
  • 800mm(マクロOFF)
  • 50mm(マクロON、ワイド端)
  • 800mm(マクロON、テレ端)
  • 800mm~∞(マクロOFF)
  • 50mm~∞(マクロON、ワイド端)
  • 735mm~∞(マクロON、テレ端)
録画モード
  • XAVC Intra(MPEG-4 AVC/H.264):
    111Mbps(CBR)
  • XAVC Long(MPEG-4 AVC/H.264):
    50Mbps(VBR)、35Mbps(VBR)、
    25Mbps(VBR)
  • MPEG HD422(MPEG-2 422P@HL):
    50Mbps(CBR)
  • MPEG HD420(MPEG-2 MP@HL):
    35Mbps(VBR)、25Mbps(CBR)
  • MPEG IMX(MPEG-2 422P@ML):
    50Mbps(CBR)
  • DVCAM:25Mbps(CBR)
  • MPEG HD422(MPEG-2 422P@HL):
    50Mbps(CBR)
  • MPEG HD420(MPEG-2 MP@HL):
    35Mbps(VBR)
  • MPEG-HD(HQ):35Mbps(VBR)
  • MPEG-HD(SP):25Mbps(CBR)
  • DVCAM:25Mbps(CBR)

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。