池 頼広(Yoshihiro Ike)氏といえば、「相棒」や「家政婦のミタ」、「都市伝説の女」などのテレビドラマをはじめ、「かみちゅ!」、「TIGER&BUNNY」、「COBRA THE ANIMATION」などのアニメーション、さらには、「探偵はBARにいる」、「HOME 愛しの座敷わらし」などの映画にいたるまで、だれもが一度は目にしたことがあるであろう数々の人気作品に、ジャンルの枠を超えて最高のサウンドトラックを提供し続けている一流のコンポーザー/アレンジャーだ。
また、池氏は、1987年に映像と音楽の融合を目的としたバンド「AIKE BAND」のメンバーとしてデビューした後、ロサンゼルスを中心に活動を広げ、一流ミュージシャンとの海外レコーディングにアレンジャー/ベーシストとして参加するなど、作曲家としてのみならず豊富な経験を持つミュージシャンとしての一面も持っている。
今回は、そんな池氏が、サウンドトラックを手がけた最新ドラマ「クレオパトラな女たち」でも早速活躍したという「Pro Tools|HDX」の魅力やサウンドについて、都内某所にある自身のプライベートスタジオ「Studio Kitchen」にて、様々なお話しを伺った。
Pro Toolsは、仕事に欠かせない相棒
池氏は、デジタルレコーディング機器の黎明期から、最新のデジタル機材の導入を積極的に進めており、古くはPro Toolsの原型となった音声波形編集ソフトウェア "Sound Designer" (Sound Tools)時代から、Pro Toolsを愛用し続けているとのこと。
「音楽制作という仕事の欠かせない相棒ですし、今となってはPro Toolsがないと生きてはいけないくらい(笑)」と語る池氏は、「最初にSound Designerを導入した時は衝撃でした。ベーシストだった自分の演奏がそのまま画面上に波形で表示されるのには驚かされました。もちろん、レコーディングシステムとしても画期的なものでしたね」と、当時の様子を振り返る。
現在では、あらゆるスタジオのレコーディングシステムの定番となっているPro Toolsシステム。「その汎用性と信頼性の高さは、プロフェッショナルにとってPro Toolsを使い続ける大きなメリットの1つでもありますね」(池氏)
スタジオをPro Tools|HDXにすべて変更
2011年秋にPro Tools|HDXが発表された後、その年末にはすぐに導入をきめたという。「最初に購入したPro Tools|HDXカードのサウンドを聞いた時、サウンドのクリアさと広がりにものすごい衝撃を受けまして、その後はズルズルとスタジオ内のすべてのI/Oを192I/Oから最新のHD I/Oへと切り替えることになってしまいした(笑)」
Studio Kitchenにおいて、レコーディングシステムを主体として利用されているPro Toolsシステムですが、シンセサイザーや音源、各種マイクなどあらゆる録音ソースが、Pro Toolsを介してモニタリングおよびレコーディングされるよう設定されているため、最終的なサウンド全体に及ぼすPro Tools|HDXの音質向上の効果は計り知れないものとなっている。
「個人的には、作曲をしながら出来上がったものからPro Toolsに録っていくパターンが多いです。また、必要があればスタジオで生の楽器(オーケストラなど)に差し替えるといった感じ。さらに、ミキシングまでも、すべてPro Tools|HDXで行なっていますので、サウンドクオリティーの著しい向上を、より強く実感することができましたね」(池氏)
Pro Tools|HDXへスムーズに移行可能
ミッションクリティカルなプロフェッショナルな現場において、制作システムの変更は、作業の進行や効率に大きな影響を及ぼす場合がある。池氏のスタジオでは、非常にスムーズなPro Tools|HDXへの移行が実現されたという。
「まず、最初にソフトウェアのみを先行して「Pro Tools 10」へとアップグレードしました。実は、この時点でかなりの音質向上を感じることができました。あれ?なんかサウンドがちょっと違うぞと!」、次に「入荷時期の関係でHDXカードだけを、変更することになったのですが、今度はDSPパワーの格段に差に驚かされることになりました。作曲時には、新しいAAX DSPプラグインのReVibeをインサートで多用しているのですがストレスもなくサウンドも申し分ありません」と池氏。システムの切替えにあたって従来のHD Accelカード3枚から、HDXカード2枚へと構成が変更されたが、新DSPのパワー(1カードあたり5倍)の処理能力は、有り余るものとなっている様子。
さらに、「昨年末には、待ちに待ったHD I/Oへの全面的な移行も完了したのですが、それまでとは別次元の分解能といいますか、サウンドの繊細さは、まさに驚嘆の一言でした。また、アコースティックピアノのレコーディングの際に、これまでシビアだったマイク・ポジションの幅が、大きく広がったのも嬉しかったです」と池氏は語る。Pro Tools|HDXへのシステム移行後も、ソフトウェアのオペレーションやファイルの互換性などに問題を感じことはなく、進行中だったプロジェクトも滞りなくスムーズに制作が継続された。「プロフェッショナルな方々は、特に慎重にならざるを得ない部分も多いかと思いますが、私の場合は”案ずるより産むが易し”でしたね」(池氏)
低音の音程感とレンジが大きく向上
新しいPro Tools|HDXシステムでは、プラグインおよびミキシングに浮動小数点計算を使用するようプロセッシング・アーキテクチャが変更され、最小の努力で最高の音質を実現することができるよう進化した。池氏は、「元々ベーシストなので、どうしても低音にはこだわりがある方なのですが、それに加えてサウンドトラックの醍醐味でもある劇場などでの迫力あるスーパーローの圧倒的な質量も重要だと考えています。Pro Tools|HDXでは、そういったサウンドに欠かせない低音の音程感とレンジが大きく向上している」と語る。
「超低域でも音程感がシッカリと出てくれるので、その上に乗ってくるモノもすごく安定して聞こえるんですよ。僕の作曲スタイルには最適、望んでいたところがキッチリ音程として出るようになってきたので、作曲していても非常に心地良いです!」と、Pro Tools|HDXを大変気に入られている様子が伺えた。
今秋公開予定の映画「アシュラ」のサウンドトラックでは、すべての制作工程でPro Tools|HDXが120%活躍、また、同氏が手がけた最新ドラマ「クレオパトラな女たち」のサウンドトラックでもドラム、ギター、ピアノなどそのほとんどが「Studio Kitchen」でPro Tools|HDXによって収録されたという。
プロを目指すなら優れた道具を選ぼう!
最後に、池氏のようなコンポーザー・アレンジャーを目指す、多数のPro Toolsユーザーへのアドバイスやメッセージをいただいた。「今回は、色々とPro Tools|HDXの魅力についてお話しをさせていただきましたが、あくまでPro Toolsは大切な仕事道具の1つであると思っています。Pro Toolsを買えば作曲できるようになるわけではありませんし、素晴らしい曲が作れるようになるわけでもありません。しかし、一流の板前を目指すなら、研ぎ澄まされた切れる包丁で修行を重ねたほうが良いのと同様に、作曲家を目指すクリエイターにとって最良のパートナーとなってくれるのがPro Toolsなのではないでしょうか。皆様にも、最新のPro Tools|HDXと最高のサウンドでの音楽制作をぜひとも強くオススメいたします!」(池氏)
ユーザー事例:Technicolor
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