Vol.07 「Pixotope」セミナーレポートメイン写真

三友は、同社が輸入を手掛けるリアルタイムバーチャルプロダクションアプリケーション「Pixotope」をソニーのCrystal LEDの1.27mmピッチを使ってデモをする「Pixotope × Sony × Mitomo XR Collaboration Seminar 2023」を開催した。東雲のサンエイテレビで行われたセミナーの様子をレポートしよう。

190インチのパネルに高解像度

なんといってもLEDインカメラVFXの主役はLEDだろう。ソニーCrystal LED「ZRD-B12A」。通常、バーチャルプロダクションに使われているモデルはCrystal LEDでも1.59mmピッチのモデルである。私も1.27mmピッチは今回見るのが初めてだ。カメラはVENICEを使用していたが、そのラージセンサーだとLED面にフォーカスを合わせたりもしてみてもモアレを感じることはほとんどなかった。

しかしながら高精細になるということは、それに送り出す画像もかなりの解像度を要求される。今回のパネルは7×7枚で横4.25m×縦2.4mと小ぶりとはいえUHDクラスの解像度を持ち、メディアサーバーもかなりのパワーが必要とされる。ただ、小さめのスタジオなどで被写体からLED面までの距離が取りにくい場所では、モアレに悩まされることが少ないというのは最大の利点だ。

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注目のPixotope

このXRセミナーで自分が注目していたのはPixotopeというビデオプロダクションソフトウェアである。「Pixotopeグラフィックス」というメディアサーバーに相当するアプリケーションと、「Pixotopeトラッキング」というカメラトラッキングソリューションも備える。

バーチャルプロダクションでいうと、グリーンバックに関してはZero Density社の「Reality」、LEDに関しては「disguise」や「SMODE」と棲み分けができている。Pixotopeにいたっては元々グリーンバックに強い印象だったが、LEDまでをもカバーするようになり、その2つの領域を横断できるのは心強い。

それとトラッカーも自社で扱っているというのも、相性などを気にしなくてもいいのは助かる。トラックメンというカメラトラッカーを自社ブランドに取り入れPixotopeトラッキングという名称になった。

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PixotopeトラッキングではなくRedSpyやStarTrackerなどを使用することも可能だ。ただ、Pixotopeトラッキングの利点はマーカーがあってもなくても対応できるといったところにある。マーカーレスのトラッカーはトラッキングカメラの撮影した画像から特異点を見つけ出し、それが追うことでカメラ位置などを判別するのだが、状況によってはその特異点が判別しにくい状況とかもあり得る。

それに精度ということでいうと赤外線マーカーの方が信用できる。なんとPixotopeトラッキングは赤外線マーカーベースのトラッカーも有し、常設スタジオでは赤外線マーカーの安定度が、臨時のイベントの時などは画像認識方式が力を発揮する。しかもどちらかを選択しなければならないということはなく、その2つのハイブリッド方式でトラッキングしている。

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加えて、このトラッキング用カメラを付けなくても、実際に撮影された映像からトラッキング情報を得ることができるピクトープトラッキングフライというソフトウェアもある。これはドローン撮影などに効果を発揮するだろう。

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XRでつなぎ目が目立たない画像

さて、肝心のPixotopeグラフィックについて書いていこう。

今回はLEDインカメラVFXということでグリーンバックには触れないが、初見の印象は190インチというLEDにもかかわらず、撮影されている環境が広いということだった。これは、XRを使った手法でLEDが足りない部分はレンダリングされたCGが補足することでカバーしている。他のメディアサーバーにもある機能だが、特筆すべきはカメラで撮影された画像とCGだけでレンダリングされた画像のつなぎ目が目立たないことである。ソフトウェアが自動でキャリブレーションしてくれるというのは助かる。

XRに触れたので、他のXRの機能についていうと、人物の動きなどをトレースしてCGのバーチャル世界の方にも影響を与えることができるといった機能がある。デモでは、被写体が動くことによって周りの花が揺れるとか、床にあるものを蹴って倒す、といったことができる。ただ、これはフォトリアルといった感じではなく、リアルタイムレンダリングの強みを生かしたライブ配信などの時には効果を発揮するだろう。

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Unreal Engineを内包するPixotope

ただ、自分にとってのPixotopeの一番の魅力はEpic GamesのUnreal Engineを内包しているというところにある。今やバーチャルプロダクションの標準プラットフォームといっても過言ではないUnreal Engine。大抵のメディアサーバーはプラグインなどで連携をとりつつ動作するのだが、Pixotopeだけに関していえば、もう完全に操作画面がUnreal Engineそのものである。その親しみやすさは何物にも代えがたい。

そうなるとレンダリングされた画像もUnreal Engineと同じなのかというと、そうでもないらしく実際本番の時はUnreal Editorを閉じることによって、より高画質でレンダリングすることが可能だ。Unreal Editorを閉じた状態でも、よく使う項目だけをピックアップしてタブレットなどに表示することでリアルタイムに操作することも可能だ。

そして、驚いたことにRTX A6000やRTX 6000Adaといったワークステーション用のGPUが必ずしも必要というわけではなく、RTX 4090でも同じか、それ以上のパフォーマンスを発揮するというのだ。それはビデオ出力をAJAのIoを使っていることで可能にしているということだ。

Pixotopeはハードウェアとして購入することもできるし、ソフトウェアだけ購入することもできる。どちらもパーマネントとサブスクリプションが用意されている。こんなにバーチャルプロダクションに特化した、なんでもできてしまうシステムがあっていいのか?と思うくらい至れり尽くせりだが、まだ日本に入ってきて間もないシステムだけにより一層の進化を期待したい。

WRITER PROFILE

小林基己

小林基己

CM、MV、映画、ドラマと多岐に活躍する撮影監督。最新撮影技術の造詣が深く、建築と撮影の会社Chapter9のCTOとしても活動。