ニコンからNIKKOR Zレンズの135mm単焦点レンズを開発中と公開されてから久しいですが、それがついに満を持して「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」(以下:Plena)として登場しました。
私は待ってました!この明るい135mm単焦点を。
今回はそのレンズの実機を手にできたのでインプレッションを紹介します。
各社の交換レンズでポートレート写真家に人気の135mmですが、かつて1995年に「AI AF DC-Nikkor 135mm f/2D」が発売されて以来、135mm単焦点レンズが一本もニコンからは登場していませんでした。
前作の135mmは、独自のボケ味コントロール機能を内蔵し、レンズ鏡筒にあるDCリングを回して球面収差をコントロールして被写体の前後のボケ味を調整できる特殊なレンズでした。
今回、ニコンから一体どんな性能の単焦点135mmレンズが出てくるのか?とても楽しみでしたが、どんな謳い文句のレンズになるのか、全く想像がつきません。
もしかしたら、ボケ味のコントロールができるなど、前作のAI AF DC-Nikkor 135mm f/2Dをブラッシュアップして、何か新しいギミックを前面に目立たせた仕様で発表されるのかな?と勝手に想像していました。
それがなんと、光学性能を極限まで追求して設計した明るい中望遠135mmに仕上げたとニコンがアピールしているじゃないですか。なんと、特別なギミックを搭載しなくても、収差を徹底的に排除して、直球勝負で描写性能の高さの極みを目指した魅力の135mmレンズを出してきたんだなと!
このレンズは、よっぽどのニコンの自信作なのかなと思いました。
固有名称を冠した質感の高いNIKKOR Zレンズの自信作
今回の135mmは、NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctに続き、固有名称を冠する2本目のレンズとして「Plena」と名前を提げて登場しました。
Plenaは、空間が満たされているという意味を持つラテン語、「Plenum」に由来しており、満潮時の海の輝きや人の心が満たされている様子を連想させる言葉なのだそうです。
Plenaの鏡筒は金属製でズッシリと重く、表面がマット仕上げで高級感たっぷりです。
Plenaの固有名称を冠するにふさわしいこだわりを注ぎ込み、比類のない描写力を達成。
レンズ構成の最適化を図ることで開放F値1.8から円形度の高いボケ形状を実現し、Zマウントのポテンシャルを存分に活かしたS-Lineレンズ屈指の解像度で被写体を立体的に描写します。
と公式にメーカーが謳っています。
なんだか、そこまでニコンが言うならば使ってみるのがドキドキしてきますね。NIKKOR Zレンズにハズレなしと云われている人気のニコンZ用交換レンズ群の頂点に立つ驚愕の高性能なレンズをその言葉から期待してしまいます。
とろけるような滑らかさで優しく被写体を浮き上がらせるボケ味
そもそも、ニコンのZマウントは内径が55mmでフランジバックが16mmの大口径・ショートフランジバックで設計されています。ですから、ニコンFマウントレンズよりもレンズの後玉を大きく設計できるわけです。
そのメリットは、より明るいレンズを設計できるし、特に広角レンズ開発にメリットがあると聞いていました。
今回Plenaは大口径・ショートフランジバックのZマウントのポテンシャルを活かした明るい中望遠単焦点レンズとして製品化されたのです。Plenaは開放F値で周辺光量が落ちず四隅まで明るく再現されます。また、口径食を極力抑えて開放F値で画面周辺まで点光源のボケが真円に近いボケとなり、渦巻き状のボケを抑制。
このようにボケの形状と質を追求し、画面全体に光が満ちることで主題の輝きと美しいボケが調和し、幻想的な表現を可能にするレンズなのだそうです。
Plenaのレンズ構成は14群16枚(SRレンズ1枚、非球面レンズ1枚、EDレンズ4枚を含む)。逆光対策にNIKKORレンズ史上最高の反射防止効果を持つ新コーティング「メソアモルファスコート」を採用。直入射光・斜入射光に関わらず、ナノクリスタルコートを凌駕する反射防止効果を発揮し、様々な入射光に起因するゴーストやフレアを大幅に低減。
さらに垂直方向からの入射光に対して高い反射防止効果を発揮する「アルネオコート」との相乗効果で、逆光時にも抜けの良いクリアーな画像が得られゴースト・フレアを低減しています。
最短撮影距離は0.82m。絞り羽根は11枚(円形絞り)。最小絞りはF16。フィルター径は82mm。重量約995g。マルチフォーカス方式を採用し、近距離撮影時にも解像感の高い映像が得られます。
STMによるAF動作が高速・高精度なため、動く被写体もシャープに捉えられるという魅力のレンズです。
今後のNIKKOR Zレンズへの期待
今回試させていただいたPlenaは鏡筒部品が金属製で、手にした瞬間にひんやりした触感が指先に伝わってきます。開放からシャープな画像が得られ、四隅まで滑らかで美しいボケ味の仕上がりに満足できるレンズで、所有欲を満たす質感の高い道具に仕上がっていると私は思いました。
今後もニコンから、Plenaのような究極の画質を目指した交換レンズが大口径・ショートフランジバックニコンZマウントを最大限に活かして生まれてくると嬉しいですね。
現在ロードマップで公開されていてまだ見ぬ最後の一本の単焦点35mmや、これから発売されるだろうNIKKOR Zレンズの新製品にどんな物が出てくるのか?このPlenaを実際に手にして、今後のNIKKOR Zレンズの新たなる可能性にさらに興味が湧いてきました。
赤山シュウ
1986年3月、東京写真専門学校報道写真学科卒業。在学中に、サンケイスポーツ新聞社写真部でアルバイト。ホテルニューオータニ写真室を経て有限会社植田カメラに入社。在職中、故植田正治氏より生き方としての写真を学ぶ。25歳から独立し、写真撮影で生計を立てていく。
人物の魅力、関わり合いを通して地域の素晴らしさ、地元ながらの生き方を訴えるフォトグラファーをめざす。