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今回はマイナーチェンジか。どう進化する?

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左がRS 4 PRO、右がRS 3 PRO

小型Roninシリーズの初号機「Ronin-S」の発売後、2年刻みに新作を出し続けてきたDJIですが、前機種DJI RS 3/DJI RS 3 PRO(以下、RS 3/RS 3 PRO)は、小型ジンバルとしてはパワー・安定性・拡張性など、かなり完成度の高い商品であったため、私含め多くのユーザーは「次機種はしばらく出ないのではないか?」と考えていたと思います。

しかし、前機種RS 3/RS 3 PROの発売が2022年6月で、今回もほぼ2年と良い意味で予想を裏切ってDJI RS4/DJI RS4 PRO(以下、RS4/RS4 PRO)を発表してくれました。

■発売日:2024年4月9日

■希望小売価格(税込価格):

  • DJI RS 4:66,000円
  • DJI RS 4 コンボ:79,200円
  • DJI RS 4 PRO:99,000円
  • DJI RS 4 PRO コンボ:123,200円

ざっとスペックを見てみた限りでは、金額やペイロードを含めほぼ変わりは無く見た目もほとんど同じため、マイナーチェンジと言ってしまって問題はないかなと思いますが、そこはDJI。確実に今後の展望を見据えた進化を加えてきております。

今回のレビューにあたり、発売前に実機を触れる光栄な機会をいただきましたので、モーターの限界値ギリギリでの使用も含めてレビューしていこうと思います。では、前機種からの変更点から見てみましょう。

前機種RS 3/RS 3 PROからの変更点

かんたん縦位置モードチェンジ

まず大きな変更点が、追加アイテム無しで縦位置撮影モードへの変更が可能になったことです。前機種までは、縦位置撮影をするには専用の垂直カメラマウント(DJI RS2P19)に付け替える必要がありましたが、今機種からは、カメラ下に位置する水平プレートの中間部分が取り外し可能になり、そのまま縦位置撮影モードに付け替えができるという仕様になりました。

これにより、横位置と縦位置を切り替える必要のある撮影の場合に、持ち歩くアイテム数が減ることになります。

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モータートルクの向上

一番気になるところであるモーター出力について、RS 4は3Kg、RS 4 PROは4.5Kgとペイロード(最大積載量)は据え置きですが、第4世代の安定化アルゴリズムを搭載し、特に縦位置撮影での安定性を向上したということです。またRS 4 PROの方はモータートルクが20%向上しています。

これはスマホやサイネージへの出力といった、縦位置撮影が多いユーザーにとっては前述の縦位置モードチェンジと合わせて嬉しいポイントです。

PROの側も、ペイロードギリギリのモリモリセッティングで使用されるユーザーには有難い順当な進化であると言えます。モータートルクの比較も含め、実際の使用感についてはこの後まとめてお話しします。

新しいフォーカスモーターと15mmロッド採用

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コンボセットには「Focus Proモーター」という新しいフォーカスモーターが同梱されています。 写真を見てピン!ときた方も多いと思いますが、なにやらアンテナのようなものがモーターから生えていますね。これは同時発表の、新しいワイヤレスフォローフォーカスシステムで動作させる為のアンテナであることは間違いありません。

前機種までは、純正モーターをジンバルオペレーター以外が制御する場合、別売のRonin 4D用ハンドグリップを使用して行うことができましたが、このオプションのフォローフォーカスセットのコントローラーは、フォーカスモーターと直接リンクして動作する為、ジンバルからカメラを外した後も、電源さえ取れれば引き続きワイヤレスフォーカシングが可能になります。

これについては、フォーカスマンを含む複数人でのオペレーション前提ではありますが、そういったユーザーにとっては非常に有益な進化ポイントです。

従来のシステムだと、ジンバルから三脚や別の特機に載せ替える必要がある現場では、どうしてもフォーカスシステムを社外品に変更する必要がありました。その場合はフォーカスモーター用の電源を別で用意しないといけなかったりするため、重量が増したり、取り付け部位を工夫しないといけなかったりと、いくつもの難点が発生していました。

しかし、このシステムは独立しているため、ジンバルから載せ替えてそのままオペレートすることが可能になります(フォーカスモーター用の電源は必要になります)。

さらに、従来のLiDARユーザー向けに新しいFocus Pro LiDARも発売されます。筆者はLiDAR未経験なのですが、測距点が77%増加し約20m(全モデルの3倍)先の被写体まで捉える事ができるようになりました。これによりMFレンズでのAF化がさらに使いやすくなります。

また、モーター取り付け用ロッドに関しても、従来は12mmという独自規格であったものが、ついに汎用性の高い15mmロッドへと変更されたため、他のロッドサポートシステムとの互換性が生まれ拡張性がぐんと高まりました。 これも筆者も含めて、フォーカスギアを多用する方々にとっては待ちに待った変更点であると思います!

ジョイスティックでズームが可能

ジンバル本体のジョイスティック横に、切り替えスイッチが増設され、従来のジンバルの軸制御に加え、ズーム操作が可能になりました。 ズーム操作可能な対象は2パターンあります。

1つは、ジンバルとBluetooth接続したカメラのズーム操作で、パワーズーム機能が付いたレンズであればジョイスティックの上下で操作可能になります。また、ソニー製品に採用されている「全画素超解像ズーム(デジタルズーム)」も操作可能なため、ソニー製品との親和性が高まりました。

もう1つは純正フォーカスモーターによるズーム操作です。純正モーターにはF、I、Z(フォーカス、アイリス、ズーム)のモード表記があり、下のボタンでモード切り替えが可能です。これをズームモードに切り替えると、ジョイスティックで操作可能になります。

また、これではズームモード中は軸操作ができなくなると筆者は考えまして、試行錯誤した結果、別売のRonin拡張ベースキットに入っている、ハンドルユニットをケーブルで繋げば、本体ジョイスティックでズーム操作、ハンドルユニットで軸操作を同時に行う事ができました。

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ちなみに、2つまではフォーカスモーターを同時装着・制御可能です。今後3軸同時操作ができるようになるかはまだ情報が入ってきておりません。

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大容量バッテリーの発売

DJIのヘビーユーザーの中には、写真のようにジンバル・ワイヤレストランスミッター・LiDERレンジファインダー・フォーカスモーター(場合によってはカメラ給電も)を全てDJI製品の同時運用でお考えの方もいらっしゃると思います。 その場合、電力供給をバッテリーグリップ一本に収束できるメリットがある反面、従来のバッテリーグリップ(BG30)では容量不足に感じてしまうかもしれません。

そこで、今回大容量化されたバッテリー(BG70)も発売します。 容量アップにより、約2.5倍長く可動できるようになるため、よりスマートな現場運用が可能になります。 また、RS 3/RS 3 PROでも使用可能です。

※標準付属は、RS4 BG21、RS4 PRO BG30バッテリーになります。
※写真はBG30の取付例。
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ちなみにこちらのフルDJIセットでは、外部バッテリーを装着せずに全て本体から電源が取れるため、カメラ周りのトータルが3kgちょっと(カメラ+レンズ=約1.6kgの場合)と、比較的軽量にセッティングすることができます。

画面オートロック機能

こちらは結構地味な追加機能ですが、ジンバルを一定時間操作せずに放置すると、画面が低輝度になり、ロックされるので誤操作を防ぐ事ができます。ロックまでの時間は「オフ・30秒・1分・2分」から選択可能で、画面を下から上にスワイプする事でロックが解除され再度操作可能になります。

一旦アシスタントにジンバルを持ってもらう際など、画面タッチによる意図しないモード変更を防ぐ事ができるため、こちらも結構有難い追加機能だと思います。

クイックリリースプレートのデザイン変更

カメラ取り付け用のクイックリリースプレート(Arca-Swiss/Manfrotto互換)のデザインが変わりました。

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15mmロッドの取り付け穴が一体型になり、剛性も上がったため、ロッドの安定性も劇的に向上しています。

また、プレートには位置決め用のガイドが標準装備されました。これは非常に優秀で、カメラ底部にガイドを合わせネジを締める事で、ネジ1本でもしっかりと固定され、フォローフォーカスなどを付けた場合でも2点留め並にしっかりと留まるように設計されています。ネジ1本で不安な場合は、ガイドを外して2点留めも可能です。

さらに細かい変更点

  • ジンバル側のUSB-Cの接続ポイントが、前側(従来と同じ)が二ヶ所、後ろ側に一ヶ所に振り分けられました。後ろ側はカメラ制御の端子になり、前機種だとカメラの種類やセッティングによってはケーブルが届かないことがありましたが、少し距離が近づいた形になりました。
  • 操作画面のデザインはそのままに、設定項目の振り分けが少し変わりました。詳細設定の項目では、「画面ロック」「サイレント」設定の代わりに「画面」「フォーカスモーター」設定が表示されます。RS 3では「設定」にまとめられていた項目が振り分けられ、項目へのアクセスがしやすくなりました。
  • SuperSmoothモード→車載モードへ。ジンバルモーターセッティング画面で、オートチューンをする際に、前機種ではモーターの剛性を高くセットする「SuperSmoothモード」が選べましたが、今回は「車載」という項目に変更されました。 これは、第4世代RS安定化アルゴリズムによるカーマウント専用のチューンナップで、 カーマウント撮影では常に振動がある状況で且つ、かなりモーターパワーを使用するので、この仕様変更はむしろ使い分けがし易くなったと捉えて良いと思います。
  • RS 3→RS 4はチルト軸が長くなりました。これはPROではない方のアップデートのみですが、ほんの少しチルト軸が長くなった事で、アクセサリーの取り付け範囲が広くなりました。
  • トリガー機能にFPVモードが割り当て可能に。 本体のトリガーを押している間は、カメラの向きがロックされるジンバルロックモードが標準ですが、こちらに全軸追従のFPVモードが割り当て可能になりました。 これにより、いつでもスムーズにFPVモードに移行できるようになり、撮影パターンの幅が広がります。

RS4とRS4 PROの違い

こちらは前機種RS 3とRS 3 PROの違いとほとんど変わりません。 ペイロード、アームの長さ、対応アクセサリーなどです。 なので、使い分けも同様に小型軽量のカメラセッティングでの運用か、大型重量級かの違いになるかと思います。

RS 3とRS 4 パワー比較

モータートルクが20%向上という事でしたが、筆者も普段の撮影でも限界値近くの重量セッティングになることもあり、どのくらい違いがでるのか気になったので、独自セッティングでペイロード限界付近でのパワー比較を行ってみました。

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セッティング内容は写真の通り、

  • 大型シネマレンズ
  • 社外フォローフォーカス×2
  • 外部バッテリー(50wh程度)
  • 社外ワイヤレストランスミッター
  • 4×5.65 NDフィルター×1

で、総重量は4.1kgでした。

ペイロード自体は4.5kgなのですが、これは標準位置でのカタログスペックで、経験上4kg超えたあたりから突き出し状態(所謂ブリーフケースモード)などポーズを変えて静止していると、微振動が発生する場合があります。 これは、パーツの取り付け位置などにより、標準位置以外では軸ごとの負荷が変わってくるためだと思うのですが、これらから、個人的に限界値は4kgちょっとであると考えております。 そこから、今回はこの重量・セッティングでのテストにしました。

結果としては、明らかに安定性は向上していると思います。 RS 3 PROでは、低位置にしたあたりから微振動が発生してきておりましたが、RS 4 PROではほぼ皆無でした(ちなみに収録画面には振動は出ていません)。

特にスポーツモードにした場合では、RS 3 PROではパワー不足からか若干カメラが振られる印象でしたが、RS 4 PROではしっかりと追従してきている感触でした。

また、肝心の縦位置モード(もちろんこちらも同じ重量)でも、RS 3では微振動が発生してきたのに対して、RS4ではほぼ発生はせず動きも滑らかで安定していました。

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作例

  • Dancer:前芝光祈(マエシバミツキ)
  • 機材協力:株式会社 LIGHT UP
  • Special Thanks
    中野谷晃平
    瀬戸祐樹
    松岡達也

今回、ジョイスティックでズーム操作ができる様になったので、ソニーの28-135mmパワーズームレンズを装着して、ワンオペドリーズームに挑戦しました。 縦位置でのドリーズームは流石に横幅が狭くて難しかったですが、割と上手くいったと思います。 3Dロールと組み合わせたりしても面白そうですし、カメラワークの試行錯誤が楽しみです。

改善してほしいところ

RS 3/RS 3 PROの時点でかなり完成度が高く、さらにブラッシュアップされたRS4/RS4 PROですから、改善点というのはもはやトレードオフでしかないようにも思われるのですが、 一応使った感想の一環として少し気になったポイントを列挙させていただきたいと思います。

縦位置ではDJIトランスミッターが付かない

縦位置へのスムーズなモードチェンジを謳っている今機種ですが、カメラ下に装着されるDJIワイヤレストランスミッターは、縦位置に変更する際は構造上取り外す必要があります。他に上手く取り付けられないかとかなり試行錯誤したのですが、カメラ側からマジックアームなどで付け直すしか方法が見つかりませんでした。

また、縦位置変更時には、改めてジンバルバランスは取りなおす必要がありますので、この縦位置変更機能は、ワンマンオペレーション・軽量装備での運用が割と前提になってくるのかなと思います。 もちろん、縦位置にしてもモリモリ重量セッティングは装着可能ですので、以前のように下部カメラマウントを持ってきて付け替えるよりはほんの少し時間短縮になるのかな?と思います。

個人的には、荷物が減るので気に入っています。

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付属ケーブルの長さは据え置き

これはRS2時代から言われていたように思いますが、付属のUSB-Cなどのケーブル長が30cmとかなりギリギリの長さであるところに変更はありませんでした。 オプションを複雑に付け出すとケーブル長が足りなくなってしまうというケースがあり、個人的にはもう10cmで良いので長いケーブルをせめて1本入れて欲しいなぁ、、、と。

水平カメラマウントが前機種と互換性がない

これまた水平カメラマウントについてですが、RS 3とRS 2では取り付け部位の形が同じだったため互換性があり、サードパーティ製のカメラマウントを相互に付け替えが可能でした。しかし、今機種では見た目はほぼ同じものの、ほんの少しだけ形が違うため、マウントは装着不可になっています。拡張性の面でも、この辺りはできるだけ互換性が欲しかったなと思いました。
※純正垂直カメラマウント(DJI RS2P19)も使用不可です。

まとめ

ハンズオンの結果で見ても、今回はマイナーチェンジという印象でした。 しかし、大事なところはしっかりブラッシュアップし、ユーザーの声も取り入れてくれている感じのする好印象なアップデートだったなと感じました。

フォーカスモーターの拡張性など、明らかにDJI製の他システムとの互換性や展開を見据えた計画性が見えてきたので、今後の追加オプションやファームウエアのアップデートがとても楽しみです。

個人的にはモーターのパワーアップだけでも嬉しかったので、すぐに買い替える予定です。

初めてDJI製ジンバルの導入を考えていらっしゃる方も、値段も初期価格は前機種と全く同じなので、迷わず新型の購入でも良いかなと思います。

現在RS 3/RS 3 PROのユーザーで、軽量セッティングとワンオペが主で、縦位置モードチェンジに魅力を感じない方は買い替え不要な気がしますが、操作系も使い易くなっているので思い切って買い替えも、決して損はしないと思います。 一応、新型フォーカスモーターはRS 3/RS 3 PROにも対応可能ということでした。

少しでも興味のある方は、是非購入をご検討ください!

北下弘市郎(株式会社Magic Arms 代表)|プロフィール
映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター。大阪生まれの機材大好きっ子。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。