2024年ハンドヘルドタイプカメラが帰ってきた

長らくソニーからはXDCAM・NXCAMシリーズのハンドヘルドタイプカメラは出てこなかった。逆にFXシリーズのシネマ系大判センサーカメラのラインナップの充実に舵を切ってきた。ズームワークを多用する撮影が多い場合、なかなか大判センサーカメラをチョイスすることは難しい。

比較的ズームワークを必要とする放送や業務に携わる人々からは、「もうソニーは俺らのことを忘れてしまったんだね」という声が最近よく聞かれるようになっていたのである。NX5Rが発売されて8年の月日が流れ、機材更新を行う必要がある個人のカメラマンや技術会社などは、HXR-NX5Rからパナソニックやキヤノンの4Kカメラに流れてしまったところは意外と多かったと肌で感じている。そんな折、ソニーから新たなハンドヘルドカメラが登場するという話がPRONEWS編集部より入り、驚きをもって今回のレビューを行うことに相成ったのであった。

まずは外観を見てもらいたい。NX5Rと比較するとこんな感じ…。

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NX5R
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Z200

いかがだろうか。Z200はNX5Rに比べ若干小ぶりに見える。全体の印象はFX6に似たような形をしている。

まずもって感じたことは、「お~~!やってくれたね~」というちょっとした感激。箱から本機を取り出し、上部ハンドルを握って持ち上げた瞬間、何に驚いたかというとバランスの良さ。LCDを開きハンドルを持って持ち上げるだけで水平になるバランス設計に内心賞賛を送った。バッテリーを搭載してもこの左右のバランス感は変わらないので、いい仕事をしてるな~と感じた次第だ。

外観で特徴的なのは前部LCDモニターの本体への取り付け方と後部ビューファインダーの折り畳み機構。

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このLCDとビューファーはどちらも解像度が非常に高い。電源を入れた瞬間思わずニンマリしてしまった程だ。またLCDの取り付け位置もかなり前方に位置しているので、高齢化が問題となっているカメラマン達にとってはありがたい仕様となっている。

また、この取り付け方に伴いヒンジ部分が強化されており、LCDが左下にだらんと斜めに下がることはなくなった。また液晶はタッチセンサー方式となっている。後部のビューファーは下に向けることで表示が消えるようになっている。ハンディで撮影する時など、VFの前に体が近付くことでLCDの表示が消えてしまうというトラブルをこの機構で未然に防いでくれる。

またサイズの小さいバッテリーで運用する場合はVFが後ろに出っ張らずカメラのホールド性が向上する。このVFは最大上向きに90°まで上げることができる。本体重量はバッテリ未装着で1.9kgとなっている。NX5Rよりおよそ200g軽くなっている。

光学系は1インチCMOS+バリアブルND搭載

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今回のZ200は2連リングとなっている。とはいっても、アイリスとバリアブルNDは同一ライン上に配置されていて、とても操作がしやすい印象だ。また、この2つのダイヤルが収まっているブロックは一段高くなっているため、レンズグリップベルトに右手を入れて操作するスタイルの時、左手の親指をこの出っ張りの下部からボディーを支えることにより、意外と疲れにくく楽なカメラ操作ができるようになっている。

このブロックのダイヤルやボタンは誤操作防止の出っ張り(ガード)が付いているのでちょっと触れただけでダイヤルを回してしまったり、ボタンを押してしまう様なことを防いでくれる。この辺りは実に理にかなった、よく考えられたフォルムとなっている。バリアブルNDの入り切りスイッチは切れている状態で、オレンジ色のLEDが点灯する様になっている。この何気ない表示もカメラマンに対して誤作動を防止する為のフレンドリーな機能ではないかと思う。

この先のファームアップ時には2連リングのアサインの変更ができる様になるという情報が入ってきている。最近のソニー機の画像認識技術は他社よりも優れているという面もあり、フォーカスに関してはカメラ任せでも問題ないシーンが増えていると感じる。

そのような面もあり今後のアップデートで2連リングをズーム・アイリス・AEなどに割り振りができるようになるのではないかと想像する。リングを2連にすることで筐体寸法を短くすることに成功していると感じる。

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レンズは7.7mm~154.2mm / f2.8~4.5の光学20倍のレンズとなっている。このカメラもご多分に漏れず、全画素超解像ズームを備えており、HD最大40倍、4Kは30倍までで画質を粗くすることなく拡大することが可能である。

1インチCMOSの7.7mmはかなり広角で、35mm換算でおよそ24mmということになる。ズームレバーのズームスピードはメニュー内にノーマルと高速の2種類を選択することができる。ノーマルでは特に遅いという感じはなくごく普通に扱える速度。また高速モードは一番引いた状態から最大ズームまで1秒もかからない(これは全画素超解像ズームを入れた状態)。

サンプル映像は光学20倍を使用。画角の差も本機のほうが広いことがわかる。(アイリスオート)

ズームで気になったところがある。寄りから引きにズームレバーを操作したときのスピード感が、およそ7割くらい引いてきた辺りから早くなる現象がある。これは光学的な問題なのか分からないが、前玉からレンズ内を覗いてレンズの動きを見ていても中玉のレンズの動きは一定なスピードに見える。このあたりを時期ファームでは一定の拡大率に見えるような項目を増やしてもらえればと思う。

また、本機のズームリングは機械的にレンズを動かす機構ではないため、リングはくるくる回る。最大広角から最望遠までは人差し指1本ではギリ回しきれない回転角なので、この辺りももう少し狭くしてもらえると助かる。まあ、このあたりは他社も含め同じような部分ではあるが、制御的にできるのであればなんとか乗り越えてもらいたい部分ではある。

あともう一つ、ズームリングでゆっくりなジワズームを行いたい場合、ズームリングのロータリーセンサーの分解能の問題なのか、動きがいかにもデジタルな感じがする。この問題は他社のカメラも全く同じ問題を抱えているのだが、ズームレバーでの動作は滑らかに動かすことができているのでうまくプログラム的にイージーイーズを搭載できないものか??とソニーさんにご要望です。

今回お借りしたデモ機はまだ製品版ではないので、発売までにブラッシュアップされる可能性もあるので一言付け加えさせていただきます。

編集部註:その後製品版では、このリクエスト部分も解消されている。著者も製品版を手に入れて実践投入し重宝しているとのこと。(2024.09.13追記)

手振れ補正は正直凄い!

手ブレ補正のスタンダードモードは光学式手ぶれ補正となっている。手ぶれ補正モードOFFと画角は変わらない。アクティブモードは光学手ブレ補正+電子補正となっており、ちょっとオーバーな表現だがアクションカメラ並みに補正してくれる。アクティブモードに切り替えると見た目20%位クロップされるような感じになるが、最大広角が7.7mmのためクロップされたところでそれほど狭くなるといった印象はなかった。

このクロップした範囲をうまく使い電子補正してくれる。X-Y軸以外にZ軸(回転方向)も補正できていた。このアクティブモードはとにかくきれいにピタッと止まる。感心したのはパンをし終わったあとの逆戻り現象が非常に少なく、違和感がないことだ。ハンディでの移動撮影なども電子補正範囲を超えた揺れに対しては対処しきれない部分はどうしても出るのだが、自分の中では十分使える範疇に収まってると感じた。

DISPLAYの表示には右下に小さく水平マーカーが表示されるので、撮影中はそれを頼りに水平を取ることが出来る。冒頭に書いたように重量バランスの良さがここに来て効いてくるのであった。

オーディオは4ch

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この辺りはFXシリーズと共通の様。ch1・ch2 CANON 3ch(L/R)3.5φ。上部にはMulti Interface Shoeを装備。各チャンネルごとに外部マイク、内蔵マイク、M.Iシューを割り当て可能となっている。

IN、OUT系

PXW-Z200と同時に発売されるHXR-NX800は外観はほぼ同じで、SDI出力とTC(in/out)が省かれた廉価版が同時に発表のようだ。PXW-Z200はHDMI(A Type) USB、SDI TC RJ45ポート2.5φリモート端子を備える。HDMIは通常とは違い90°水平となっている。重いHDMIケーブルを使う場合は端子部に力が加わらないように取り回しに注意する必要がある。

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TCはIN,OUT切り替え方式

メディアスロットは、SDXCならびにCFexpressタイプAのデュアルスロットを搭載

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各スロットのREC機能をRECボタンにアサインすることが可能。この機能をうまく使えば、例えばブライダルなどの撮って出し用の収録などで活用可能。メインのAスロットのRECを止めることなく、撮って出し専用のBスロットを必要な部分だけをかいつまんで収録することが可能となる。

驚愕の起動スピード

とにかく起動してREC状態になるまでが速い!電源を入れ液晶表示が出るまで約1秒。その後レンズがフォーカスを素早く探し、2秒もかからないうちにRECできてしまうという驚愕な速さだ。この速さは今までのハンドヘルドカメラにはなかったアドバンテージだと思う。このあたりは放送用カメラを世に送りだしてきたソニーのこだわりなのだろう。

オートフレーミング機能

最近の展示会ではよくPTZカメラのデモ展示が目を引いてきたわけだが、その中で実現されつつある被写体を自動で追尾して撮影する機能が本機にも搭載された。PTZカメラと違い自動でカメラを振るということではなく、フレーム内の人間を検知し、フォーカスや切り取りサイズを自動で調整することができるのである。

この機能は、記録・HDMI出力(SDIでは出力不可)にそれぞれクロップ・全体映像の、どの映像を出すのかをメニューで設定できる。

狭いところではあるが、どんな感じに動くのか動画にしてみたので確認してもらえればと思う。

クロップレベル「小」はオートフレーミングの反応がうまくいかなかったために未実行

消費電力は標準的な収録状態では約20W、デュアルRECやS&Q記録HDMI,SDIその他USB(無線通信デバイス)等フルで使う場合およそ37Wとなる。BP-U70で3時間30分程度はいけるのではないだろうか。

まだまだ紹介したい機能がある…

ざっとではあるが、実際に触ってみての感想だ。今回、まだまだ紹介しきれていない機能がいくつも存在する。例えばネットワーク系の機能もメニュー内やアサインボタンに割り振られているので、これらの機能を使ってライブ配信やビデオサーバーへのデータ転送なども対応している。細かい仕様などはメーカーHPなどで確認していただけたらと思う。

満を持して市場に投入されるソニーの新型4Kハンドヘルドカメラ。 小型化を意識しながらも重量バランスや高画質なVF・LCDなどを搭載。また細かい部分のブラッシュアップを行うことで機能的・人為的エラーの回避をデザインで克服するなどカメラマンからの要望に答えを出した。また、カメラ操作に不慣れな人でもAutoモードにすることで、それなりにカメラ任せで撮影できてしまうという手軽さを兼ね備えたソニーからの回答を我々はどう受け止めるか楽しみだ。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。