アクションカメラの映像を、さらに高品質の領域へ。次世代型1/1.3インチ 8KイメージセンサーとデュアルAIチップを搭載し、画質や音質のクオリティーにこだわって開発された「Insta360 Ace Pro 2」が登場した。

スペックの向上を筆頭に、2.5インチフリップ式タッチスクリーン、新開発ウインドガード、直感的な操作性とAI編集など、Ace Pro 2ならではのユニークな特徴を備えた仕上がりとなっている。

概要

Insta360 Aceシリーズでは、これまでにスペックの異なるエントリーモデルのAceと上位モデルのAce Proの2機種が、昨年11月21日に同時に発売されている。360°撮影を最大の武器として商品開発を続けてきたInsta360(Arashi Vision)が、初めて本格的なアクションカメラの土俵に参入したのが、このInsta360 Aceシリーズである。その次世代機となるAce Pro 2については、ティザー広告が今年の10月16日より公開、前機種の発売から一年足らずの10月22日に正式な発表がおこなわれ、発売が開始された。

デュアルAIチップによる画像処理、1/1.3インチのイメージセンサーによる最大8K30fpsの高解像度映像、強化された低照度撮影性能、157°の広角レンズなどライカ社と共同開発された光学系や改良されたオーディオ性能など、前モデルと比較して多数のアップグレードが施されている。

主な特徴

Ace Pro 2の主な特徴と改善点をまとめると、以下のとおりである。

  • 1/1.3インチ 8Kイメージセンサー搭載
  • デュアルAIチップを使用
  • ライカSUMMARITレンズを採用
  • 157°の広角撮影
  • 優れた低照度性能
  • 8K30fpsの動画撮影を実現
  • 4K60fps アクティブHDR動画
  • 4K60fps PureVideoモード
  • ライカカラープロファイル
  • 5000万画素写真
  • 新登場のiLogカラープロファイル
  • 新開発ウインドガードと改良されたノイズ低減アルゴリズムによってオーディオ性能が向上
  • マルチアングルが可能な2.5インチフリップ式タッチスクリーン
  • FlowState 手ブレ補正&360°水平維持
  • 12m防水
  • 時間が拡大したプリ録画
  • AI自動編集

外観とスペック

Ace Pro 2の重量は177.2g。大きさは71.9×52.2×38.0mm。

光学系については、絞りがF2.6。焦点距離は35mm換算で13mmである。

最短撮影距離が改善され0.37mとなり、クローズアップ撮影に有利となった。

13.5ストップのダイナミックレンジをカバーする1/1.3インチのイメージセンサーを搭載、4K60fpsのアクティブHDRと8K30fps動画をサポートする。

Ace Pro 2は、デュアルAIチップで画像処理を行う。

具体的には、ノイズ低減と画像処理専用のProイメージングチップに加え、さらなる画像処理とスムーズなパフォーマンスを実現するための5nm AIチップの2つを搭載している。これらデュアルAIチップの分割処理によって、Ace Pro 2の演算能力は、5nm AIチップを1つのみ使用していたAce Proと比較して100%(2倍)向上している。

サイズの比較 左がAce Pro 2、右がAce Pro
Ace Pro 2の重さを計量
5nm AIチップとProイメージングチップから成るデュアルAIチップで画像処理をおこなう

フリップ式タッチスクリーンは、2.5インチとなり、Ace Proより若干大きくなっている。レンズガードは取り外しが可能だ。

ウインドガードも着脱が可能で、水中では同梱のマイクキャップを使用することになる。

マイクは3つ搭載されている。

急速充電リムーバブルバッテリーの容量も増量され、1800mAhとなった。

充電時間は30W急速充電器を用いた場合は47分、5V/3Aで充電した際には75分である。録画可能時間は25℃のラボ環境で1080p 24fps動画をアクティブHDRオフの耐久モードでテストした場合、180分とされている。4K30fpsにおいては、Ace Proより駆動時間が50%長くなっている。筆者の検証では、4K30fpsでアクティブHDRがオフ、アプリに接続していない状態で耐久モードに設定して室内で録画を実行した場合、137分間駆動した(バッテリー寿命は条件によって異なる)。

動作可能温度は、-20℃~45℃である。

耐水性能は、ハウジングなしの状態で12m。ダイブケースを使用した場合は60mとなっている。ジャイロスコープは、6軸ジャイロを搭載している。

0.1インチ大きく、クリアになって見やすくなった2.5インチフリップ式タッチスクリーン
着脱可能なウインドガードとマイクキャップ
1800mAhのリムーバブルバッテリー

画角(FOV)について

新たに追加されたメガビューは、広い画角を保ちながら歪曲を抑えて、まっすぐなエッジが取得できる仕様になっている。

ActionViewは、16:9か9:16を選択することで、最も広い水平FOVや垂直のFOVを得られるので、バイクの撮影やスキーにおけるPOV撮影等で効果を発揮するだろう。以下の図版は、画角の違いの比較である(4K 16:9の動画の場合)。

動画の撮影性能について

Ace Pro 2の撮影のスペックについては、解像度、アスペクト比、フレームレートなどにおいて様々な組み合わせがあるので、下記に一覧として記載する。

動画解像度:

  • 8K(16:9):7680×4320@30/25/24fps
  • 8K(2.35:1):7680×3272@30/25/24fps
  • 4K(4:3):3840×2880@60/50/48/30/25/24fps
  • 4K(16:9):3840×2160@120/100/60/50/48/30/25/24fps
  • 4K(2.35:1):3840×1632@120/100/60/50/48/30/25/24fps
  • 2.7K(4:3):2688×2016@60/50/48/30/25/24fps
  • 2.7K(16:9):2688×1520@120/100/60/50/48/30/25/24fps
  • 1440p(4:3):1920×1440@60/50/48/30/25/24fps
  • 1080p(16:9):1920×1080@240/200/120/100/60/50/48/30/25/24fps

*アクティブHDRは最大4K60fpsまで、オンまたはオフにできる。

PureVideo:

  • 4K(4:3):3840×2880@60/50/48/30/25/24fps
  • 4K(16:9):3840×2160@60/50/48/30/25/24fps
  • 2.7K(4:3):2688×2016@60/50/48/30/25/24fps
  • 2.7K(16:9):2688×1520@60/50/48/30/25/24fps
  • 1440p(4:3):1920×1440@60/50/48/30/25/24fps
  • 1080p(16:9):1920×1080@60/50/48/30/25/24fps

FreeFrame動画:

  • 4K(4:3):4096×3072@60/50/48/30/25/24fps
  • 2.7K(4:3):2688×2016@60/50/48/30/25/24fps
  • 1440p(4:3):1920×1440@60/50/48/30/25/24fps

スローモーション:

  • 4K(16:9):3840×2160@120/100fps
  • 2.7K(16:9):2688×1520@120/100fps
  • 1080p(16:9):1920×1080@240/200/120/100fps

ビデオのフォーマットは、MP4である。

8K30fps動画

8K30fpsは、晴れた日中の屋外環境で使用することにより威力を発揮する。低照度下や高速の撮影、手ぶれ補正を使用するべき場面などには不向きと言える。

8K(16:9):680×4320@30

アクティブHDR動画

Ace Pro 2では、最大4K60fpsのアクティブHDR動画が使用できるようになった。

動画の安定化と共に、広いダイナミックレンジを確保できるから、昼光下でのスポーツ撮影や移動撮影、逆光時において有用なモードである。HDRにありがちな誇張された表現ではなく、ハイライトやシャドウにおける自然な再現が好ましい。

4K(16:9)60fpsアクティブHDR動画

PureVideo

PureVideoの機能もAce Proの4K30fpsから4K60fpsへアップグレードしている。

4K30fps以下の16:9で撮影する場合は、PureVideo Plusが自動的に有効になり、低照度下の画質向上に貢献する。

低照度撮影 4K(16:9)30fps 16:9 PureVideo (Insta360 Ace Pro 2)

低照度撮影 4K(16:9)30fps 16:9 PureVideo(Insta360 Ace Pro/比較用)

4Kクラリティーズーム

クラリティーズームは、タッチスクリーンを2回タップすることで、2倍のズームインが可能となる機能だ。AceやAce Proにも実装されていたが、Ace Pro 2の場合、8Kのイメージセンサーのおかげで、画質を維持したまま拡大できるので汎用性が高くなった。

4Kクラリティーズーム

FlowState 手ブレ補正&45°/360°水平維持

不安定なアクション動画撮影時の安定化に役立つ水平維持機能。Ace Pro 2では、360°水平維持のカメラ内処理が可能になった。カメラ内の45°/360°水平維持は動画モードでのみサポートされる。

360°水平維持 FreeFrame動画

I-Logカラープロファイル

新たにカラープロファイルにI-Logが用意されたことで、ポストプロダクションにおけるカラーグレーディング耐性が向上している。

水中モード

水泳やダイビングなどの水中撮影時には、新規に登場した水中モードをオンにすることで、手ブレ補正をおこなうと同時に、光の屈折を最適化して画角や歪みを補正する。

オーディオ

必要に応じて、物理的なウインドガードを取り付けることで、強風下における風切り音を大幅に低減できるようになったので、バイクなど風の影響を受けるシーンの撮影に最適である。カメラの音声処理「風切音低減」と組み合わせてノイズを低減する。

  • 風切り音低減
    バイクやスキーのような高速移動撮影時や強風下での風切り音を最小限に抑えるモードである。Ace Pro 2で記録した場合、従来、副作用的にありがちだった音声のくぐもりは感じられず、音質の向上を実感した。
  • 音声強調
    背景ノイズを低減することで、音声をよりクリアに記録する。Vlog撮影などに最適なモードとされている。使いこなしのポイントとしては、手ブレ補正の低下を避けるため、PureVideo使用時には音声強調モードは推奨されていないので注意したい。
  • ステレオ
    原音を保持して自然な音声を記録するモード。ライブやイベント等の場面に最適である。

その他、DJI MicやRODE Wireless GOなどの外部マイクとの接続もスムーズだ。

CardoやSena等のオートバイ用ヘルメットヘッドセットとBluetoothでペアリングすることでハンズフリーの操作も可能となる。

静止画の撮影性能について

静止画解像度は、以下のとおりである。

  • 50MP(8192×6144)
  • 37MP(8192×4608)
  • 12.5MP(4096×3072)
  • 9MP(4096×2304)

写真のフォーマットは、JPGとDNG RAWである。Ace Pro 2の5000万画素の静止画性能は、多くのデジタルスチルカメラやデジタル一眼カメラよりも高画素を実現している。

ライカ カラープロファイルがプリセット(動画/静止画)に用意されており、上品で重厚な色調を手軽に作品に与えることができる。

写真を書き出す際には、Insta360アプリの設定から「ライカウォーターマーク」を有効にすることで、写真にライカのロゴや撮影設定のデータがあしらわれたウォーターマークを追加できる。

5000万画素を誇る静止画
アプリでライカウォーターマークを有効にして、静止画を書き出してみた

まとめ

近年、ハイペースでカメラの開発を進め、毎年、4機種前後の新製品のリリースを続けているInsta360から、新たに登場したアクションカメラのInsta360 Ace Pro 2。

本記事内で紹介した以外にも、着脱がスムーズな磁気マウント、ジェスチャー&音声操作、同一ファイル内の録画一時停止と録画キャンセル、最長120 秒のプリ録画、予約録画など、各種機能も充実している。 

スポーツや旅行、日常生活など、様々なシーンにおいての使いやすさというアクションカムの命題に応えると共に、解像度、画質や音声品質など、カメラの基本的な性能を、しっかりとアップグレードさせている点に注目したい。

8Kを実現することで、他のミラーレスカメラやビデオカメラとの併用もしやすくなっている。

最高の画質を得るポイントとしては、撮影シーンによって、解像度やフレームレートを適切に選択することが重要である。8K30fpsは、晴天時の動きの少ないシーンに。一般的な場面においては、4K30fpsの撮影を選択すると良い。日中の動きのあるシーンであれば、4K60fps 16:9 アクティブ HDRが有効である。夜間や低照度の屋内では、4K30fps 16:9 PureVideo Plus チラつき防止を選ぶと良い。

Ace Pro 2の価格は、

  • Ace Pro 2 通常版(ウインドガード、バッテリー、標準マウント、マイクキャップ、USB-Cケーブルが付属):64,800円(税込)
  • Ace Pro 2 デュアルバッテリーキット(ウインドガード、バッテリー2個、標準マウント、マイクキャップ、USB-Cケーブルが付属):67,800円(税込)

となっている。

WRITER PROFILE

染瀬直人

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。