大阪・関西万博メディアデーレポート

EXPOホール、シャインハットで毎日行われるプロジェクションマッピングショー

大阪・関西万博2025が、いよいよ開幕

大阪・関西万博2025が、いよいよ開幕した。

4月13日から10月13日の半年間、大阪湾の先端に位置する夢洲(ゆめしま)で開催され、開催期間中のべ約2,800万人の入場者数を見込んでいるという。

4月13日の開会に先立ち、4月9日(水)にメディア向けの会場お披露目となるメディアデーが開催された。ここでは会場の一部を紹介しながらその様子をレポートしたいと思う。当日は晴天に恵まれたが、午後13時からのオープンで20時までには完全撤収という条件だったため、半日という限られた中での見学となったが、それでもその内容と魅力が充分に伝わるような万国博覧会になっていた。

ここでは特に映像技術に関わる催し物を中心に、当日見学できたパビリオンをご紹介したいと思う。広大な展示エリアをとても半日だけで見られる広さではないので、ここではそのほんの1部をお伝えしたいと思う。

55年ぶりの大阪万博開催

公式キャラクター、ミャクミャクも人気
公式キャラクター、ミャクミャクも人気

1970年の北千里で行われた大阪万博から55年。前回は戦後25年という節目でもあり、高度経済成長期真っ只中で、日本で初めての万国博覧会開催ということで、「人類の進歩と調和」と言うテーマで多くの話題をさらった。そこから55年の時を経て、今年開催される大阪・関西万博2025は「命輝く、未来社会のデザイン」というテーマのもと、「命を救うーSave Lives」、「命に力を与えるーEmpowering Lives」、「命をつなぐーConnecting Lives」の3つのサブテーマをもとに、各企業や各国のパビリオンで様々な展示が行われている。

トータルコンセプトとしては「People Living Lub」、つまり未来社会の実験上として単に展示を見るだけでなく、世界80億人がアイディアを交換し、未来社会を共生するもので、万博開催前から世界中の課題やソリューションを共有できるオンラインプラットフォームを立ち上げ、人類共通の課題、解決に向け、先端技術など、世界の英知を集め、新たなアイディアを創造発信する場にすることがテーマとされている。

今回の開催場所の夢洲(ゆめしま)は、新たに埋め立てられた大阪湾の海上にある人工島だが、地下鉄中央線の西側の最終駅となっており、大阪主要駅からのアクセスも非常に良く、大阪中心部からどこからでも約30分程度で移動できる場所にあり、この地のりはこれまでの万博と大きく違い、多くの来場者が見込めると思われる。

シグネチャーゾーンの真ん中にあるいのちパーク
シグネチャーゾーンの真ん中にあるいのちパーク

さて今回の万博会場の広さだが、約155ヘクタール、東京ドーム約33個分という非常に大きな会場面積になっており、とても1日で見て回れる規模ではない。その中を大きく分けると4つのエリアがある。まず多くの人が地下鉄を使って入場すると思われる地下鉄中央線の夢洲駅直結の東ゲートエントランスの目の前にある東ゲートゾーンにも多くの映像展示がある。そして多くのメディアで取り上げられている会場のシンボルとなる、

大屋根リングは外径675メートル、幅30メートル、高さ20メートル、全周は約2kmという円形の木製リングだ。この大屋根リングの内側にあるのが、日本の8人のプロデューサー主導する注目のシグネチャーパビリオンと、コネクティングゾーン、セイビングゾーン、エンパワーリングゾーンという、主に海外のパビリオンが出展するエリアになる。 その外側にはフューチャーライフゾーン、そして西ゲートゾーンなど、隅々まで広大なエリアで開催されている。

4500人が参加したメディアデー

今回のメディアデーで筆者が見学できたパビリオンは、東ゲートゾーンに位置するパナソニックグループパビリオンの「ノモの国」、大阪ヘルスケアパビリオン「Nest for Reborn」、シグネチャーパビリオンの中の慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授が手掛ける「Better Co-Being」。

海外パビリオンでは、オーストラリア、アルメニア、サウジアラビアなど、また西ゲートゾーンのパソナグループが運営する「NATUREVERSE」、そしてNPO法人ゼリ・ジャパンが主催する「BLUE OCEAN DOME」、さらには大屋根リングの海に面するウォータープラザで毎日開催される、

この万博最大のスペクタクルショーと言えるであろう、水と空気のスペクタクルショー「アオと夜の虹のパレード」。そしてEXPOホールのシャインハットの外周壁面で開催されるプロジェクション、マッピングショー、さらには大屋根リングの外側の海上エリアで打ち上げられるドローンショー「ONE WORLD、ONE PLANET」などを堪能した。

当日は、4500人のメディアが入場したそうだが、告知不足からか海外メディアは非常に少なく、また飲食販売などもあまり行われておらず、ほとんどがオープン前の準備段階ということで、開場されていないパビリオンも多かった。それでも各パビリオンでのコンテンツを堪能できた感触は強かったのは印象的だ。

鏡を利用した、ユニークな演出のタイ王国館
鏡を利用した、ユニークな演出のタイ王国館
オーストラリア館の内部。イマーシブな映像体験でオーストラリアの自然を体感できる
オーストラリア館の内部。イマーシブな映像体験でオーストラリアの自然を体感できる
パソナグループのNATURECERSEに展示されている、培養液の中でiPS心筋シートの技術を活用した立体の小さな心臓が動いている様子を観察することができる
パソナグループのNATURECERSEに展示されている、培養液の中でiPS心筋シートの技術を活用した立体の小さな心臓が動いている様子を観察することができる

各パビリオンのテーマに着目

開催前から、建設予算の大幅超過や出展国の離脱、パビリオン建設の遅れ、肥大した予算の負担問題など、何かとネガティブ要素が先行し、あまり期待値を高める報道が少なかった大阪・関西万博だが、実際に各パビリオンを訪れてみると、コンテンツに見られる高い創造性と、その真剣なモノづくりは非常に好感が持てるものが多かった。

ノモの国の内部。自分のクリスタルをかざして、アトラクションを体験できる。
ノモの国の内部。自分のクリスタルをかざして、アトラクションを体験できる。

パナソニックグループパビリオンの「ノモの国」はコンセプトとして「とき放て、心と体と自分と世界」をテーマに、モノと心は映し鏡のような存在であるという架空の世界=ノモの国を、クリスタルガラスのアイテムによって導かれる体験型アトラクションになっている。同社の映像プロジェクターなどの製品テクノロジーを活用して、摩訶不思議な世界を体験できるエリアで、通常のスクリーン投影だけではなく様々な新しい上映方法などが随所に体験できるもの。

このパビリオンに代表されるように、すべてのパビリオンでは、様々な映像技術が用いられているのも、今回の万博会場の大きな特徴であり、おそらくどのパビリオンに行っても多くの最新映像技術が体験できるものになっていると思われる。

見学体験コースの最後にある「大地エリア」と呼ばれる展示スペースがあるのだが、ここには、シアノバクテリアによる食の未来、ベロブスカイト太陽電池による発電するガラスによる未来エネルギー、夜光虫などの発光微生物によるバイオライトの灯りの未来、菌糸パネルやミスト発生技術などパナソニックが培ってきた照明技術やバイオフィリックデザインを組み合わせた人間の五感を刺激するバイオセンサリードームなど、小さなエリアだが、ここはこの現代に行われる万博で最も見るべき価値のある展示がなされている意義を感じ、かなり個人的には注目した展示だった。

パナソニックの大地エリアでは、これからのエネルギー素材を体験できる
パナソニックの大地エリアでは、これからのエネルギー素材を体験できる

その他、映像技術的には、没入型のイマーシブ映像はもちろんのこと、プロジェクションによる新たな展示方法や最新の高精細LEDパネルを使用した映像展示など多くのテクノロジーが映像分野でも見られるのは、この万博の大きな特徴と言える。

開催前から話題となっている落合陽一氏のnull2(ヌルヌル)など、様々なキュレーターを配したシグネチャーゾーンはひときわ注目を集めていた。

河瀬直美監督のDialogue Theater「いのちのあかし」
河瀬直美監督のDialogue Theater「いのちのあかし」

映画監督でもある河瀬直美監督が手掛けた、Dialogue Theater「いのちのあかし」は、奈良と京都の廃校素材を移築して作られた建築で、その中のメインの対話シアターではスクリーンの向こう側の話者と、当日選ばれた来場者の一人が10分間の対話を映画を見るように鑑賞するという斬新な発想。エンディングには河瀬監督ほか6人の映画監督によるエンディングムービーが日替わりで流れるという。

今回の視察では時間制限も多く、それらの内部での体験はどれも人気で入場することは叶わなかったが、どれも様々なテクノロジーを使い面白いテーマに取り組んでいることは多くのメディアがすでに告知しているように、すでに多くの注目を集めているようだ。

55年前の大阪万博に思いを馳せて

前の1970年万博でも大きく注目された、当時の三洋電気が展示して多くな話題となった人間洗濯機を復活させた大阪ヘルスケアパビリオン。ここでは入場後に25年後のアバターを生成し、自分自身のリボーン体験ができるユニークなコンセプトで、最初に身体計測ポッドに入って脈拍や血圧、肌、四角、脳、歯、金骨格、新血管等の自身の状態を計測する。自分の状態をモニタリングし、会場の最後で25年後の自分が、アバターとして元気に踊っている姿などを見ることができる。

話題のミライ人間洗濯機と1970年の三洋電気の展示をオマージュした コンパニオンのユニフォーム
話題のミライ人間洗濯機と1970年の三洋電気の展示をオマージュした コンパニオンのユニフォーム

このパビリオンの中では大阪の多くの企業が健康に関わる個別の展示がなされているが、55年前の大阪万博で人気を博した「人間洗濯機」をここで復活させたという話題は多くのメディアでも取り上げられている。その55年前の万博で人間洗濯機を実際に目の当たりにして魅了された株式会社サイエンスの青山恭明会長が、自身の会社のテクノロジーであるマイクロバブルなどの泡を使ったミラブルテクノロジーを有して、泡洗浄による「ミライ人間洗濯機」として復活させたのはすでに有名なエピソードだ。

非常に注目度も高く、また当時の三洋電機にオマージュしたようなコンパニオンの衣装など、様々な部分で55年前の万博リスペクトしている部分が見受けられた。今回の万博ではこのように1970年の大阪万博で影響を受けた展示物もあり、その精神を現代に蘇らせたいと言う思いで、出店している企業も多いのではないかと思われる。

高品質なノンバーバルコンテンツ

ブルーオーシャンドームでは、竹で作られたパビリオン内に高精細な半球型LEDでノンバーバルな映像が映し出される

映像に着目する点では、どのパビリオンも最新の映像上映技術を配して、魅力的な映像がコンテンツとして上映されている。今回視察した中で特に注目したのは、サラヤ株式会社の会長が代表を務める、特定非営利活動法人ゼリ・ジャパンのパビリオン、BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャンドーム)だ。海への理解を深め、プラスチック海洋汚染防止の持続的発展、海の気候変動の理解促進を世界発信する拠点として展示が行われている。

3つのエリアで構成されている。

  • A:循環、真ん中の抗生剤ドーム型LEDを拝する
  • B:環境、そして様々なセミナーイベントなどが講演会が開催される
  • C:叡智のエリア

Aの循環は、水という物体を巨大な立体アートピースで見つめ直す奇抜な発想で、超撥水塗料を施した真っ白な板面を、さらさらもしくはコロコロ、ニョロニョロという風に、形を変えながら駆け巡っていく水滴群を見学しながら、地球を躍動させる水の循環を体験するもの。建築は竹製のドーム使って建設されており、すべてリサイクルリボーンができる建築構造素材を使って建築され、閉館後はモルジブ共和国への移設を考えているという。

ブルーオーシャンドームでは、竹で作られたパビリオン内に高精細な半球型LEDでノンバーバルな映像が映し出される
ブルーオーシャンドームでは、竹で作られたパビリオン内に高精細な半球型LEDでノンバーバルな映像が映し出される

注目だったのは真ん中の大きなスクリーン巨大な半球体型の高精細LEDを配したスクリーンだ。ここでは青く輝く水の惑星、地球と命の誕生から躍動する魚の群れ、サンゴ礁の豊かな生態系、道との道の深海、生物、そして深海の海底を犯していくプラスチックゴミという深いテーマを、解説や言語一切なしのノンバーバル映像で、誰もが平等に体験できるスペースになっている。こうしたデザインはすべて日本を代表するデザイナーの巨匠、原研哉氏によってデザインされたものだそうだ。

最後の叡智のエリアでは、こちらにも超ワイドなLEDスクリーンを備えたブルー、オーシャンスタジオという場所で、海の課題に立ち向かう企業家企業人、また研究者等の講演会が行われる。ここで興味深かったのは料理研究家・土井善晴氏の企画開発によるスープを販売。「海と山の超純水」と呼ばれるスープは、人の手が加わる以前の自然の恵みを、一杯のカップに表現したもの。

混じり気のない海の塩と熊野古道の山の水を合わせた塩水が人肌の温度に温められて提供される。このドーム内で学んだ知識を最後に味わいとして自分の体で堪能するコンセプトは非常にユニークかつ有意義なものだ。ドーム型の超高精細LEDも会場内で見たものの中では最大級のものであり一見の価値はある。

夜のエンターテインメントも見どころ満載

ウォータープラザで毎日開催される「アオと夜と虹のパレード」20分を超える大作だ。
ウォータープラザで毎日開催される「アオと夜と虹のパレード」20分を超える大作だ。

日没後の夜のエンターテイメントも万博の大きな見物の1つであり、その最大の売り物はウォータープラザで開催される、噴水とプロジェクション映像によるショーだろう。

会期中、毎日日没後に開催される「アオと夜の虹のパレード」は、おそらく本万博の中で最大の呼び物となると思われ、幅200メートル、奥行き約60メートル、総エリア面積約8800平米の巨大な舞台空間で、水・空気・レーザー光・炎・映像・そして音楽が織りなす水上ショーが繰り広げられる。米国ラスベガス等で行われている噴水ショーの規模を超える、巨大な水上エンターテインメントとして構成されたもので、ショー全体で約20分以上の演目となっている。

シャインハットのプロジェクションマッピングショーは、世界各国から応募総数303の作品から厳選された109作品(日本国内41、海外68)が、期間中6回に分けて上映される。
シャインハットのプロジェクションマッピングショーは、世界各国から応募総数303の作品から厳選された109作品(日本国内41、海外68)が、期間中6回に分けて上映される。

1900名収容のEXPOホールであるシャインハットの外壁面でも、毎日プロジェクションマッピングショーが開催される。万博のテーマである「命輝く未来社会のデザイン」に沿ったテーマで、30秒から1分の長さで世界各国からエントリーされた109の作品が選ばれ、半年間にわたり全6回に分けて毎晩上映される予定。その他にもドローンショーや様々なエンタメが用意されているようだ。

大阪・関西万博の意義とは?

夜のパビリオンの夜景にも目を奪われるものが多い。写真はトゥルクメニスタンパビリオンの夜景
夜のパビリオンの夜景にも目を奪われるものが多い。写真はトゥルクメニスタンパビリオンの夜景

筆者自身もまだ幼い時期に両親に連れられ、1970年の大阪万博を見ており、今も非常にインパクトのある記憶として、いまだに鮮明に脳裏に焼き付いている。

今回の万博ではこの半世紀の間で科学も文明も大きく進歩し、日本も世界有数の国家となった中で開催されるものだが、世界には新たな問題や課題が山積している状況の中で、新たなテクノロジーと人間の英知、そしてこの地球の住人として、そして人として守らなければならないものを再認識することができる万博となっていると思われる。

また、各パビリオンで世界のクリエイターが創り上げたコンテンツやエキジビションのクリエイティビティーを、より身近に感じることで、本気で創られたものを実体験ができるのも大きな魅力だろう。各国のパビリオンの建築様式を見るだけでも行く価値は大きい。

そして、とても1日程度では、見て回ることはできない広さだということは改めて実感したが、半日の視察を経て、自分自身も個人として再度訪れたいと感じた展示が多かったのが印象的だった。できれば何度も足を運んでみたいそう思わせる大阪万博。まずは行った方の口コミや情報を頼りに、実際一度は足を運んでみることをお勧めしたい。

もちろんまだ開会直後は、多くのオペレーションが万全では無いことは、各メディアが報じている通りだと思うが、それ以上の価値はあるだろう。

会場内では現金が使えないこと、スマートフォンの酷使を強いられるので予備バッテリーが必携、会場内が広いので歩く範囲も広く、足元の準備やアクセス手段にも万全の準備をお勧めしたい。また飲食店での混雑に備えた携帯用の飲食持参など、様々な注意点は、SNSや各報道で確認してから来場されることをお勧めする。

まずは自分の目で見て、体感することの喜びを感じて頂きたい。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。