スナック永子の勝手にMonthly Video Awardsも、早6回。日々が光の速さで経過しております。さて、今回は半期の〆といいますか、年の瀬にふさわしい企画と申しましょうか。現在まで、Best Video Of This Monthを勝手に授けた作品を振り返り、2009年を総括したいと思いまっす!

ベストビデオで振り返る2009

■Best Video Of June MV APOGEE「1,2,3」Victor Entertainment

間抜けな印象を与えてしまいがちな「パンツ一丁」の下半身を、シュールかつ可愛らしく、甘すぎず辛すぎず、緊張感のある高貴なアイテムへと変貌させた怪作品。監督は田中裕介氏。強烈なインパクトを放つデザインセンスといい、絶妙なバランス采配といい、低予算とは思えない高級感で視聴者を圧倒。

Best Video Of July 椎名林檎「ありあまる富」EMI MUSIC JAPAN

高層住宅の上階から「もの」が落ちて来る。シンプルかつ力強い映像を背景に「本当に大切なものはなにか」と訴えかける歌詞が強調される。映像における画と音の駆け引きのセンスが抜群の児玉裕一監督は、今やCMやWebムービーなどでも持ち前の音感、リズム感を活かした映像表現を追求している。

■Best Video Of August MVSOUR「日々の音色」Zealot / NEUTRAL NINE RECORDS

世界中のSOURファンが自らをWebカメラで撮影。その素材を、アート・ディレクターの川村真司氏らが編集後、You Tubeで配信し、世界各国で話題をさらった。作品の一方的な視聴ではなく、双方的なコミュニケーションを提案するあり方が、共感に加え、ネットプロモーションの成功例としての評価を得た。

■Best Video Of September 中島美嘉「Candy Girl」Sony Music Associated Records

舞台はサーカス一座の芝居小屋。エロティックでミステリアスな中島美嘉の魅力と、荒唐無稽な夢のような、不可思議な空間を描く島田大介ワールドがベストマッチ。エネルギッシュなロックバンドと女性アーティストのビューティーショットの両者を演出できる、島田氏らしい調和のとれた作品。

またしてもっこは、版権の問題で掲載できず…。

■Best Video Of October 長添雅嗣m-flo「SOUND BOY THRILLER feeeeeeeeeeat.LISA」 avex

謎の飛行物体を頭にかぶった少年とその友達が、急にダンスを始めたり、走り出したり、行き当たりばったりの旅を展開。手持ち撮影されたドキュメンタリータッチの臨場感が、見てはいけないハプニング映像を見てしまった時のドキドキ感を煽り、You Tube等のネット動画世代からのアツい支持を受けた。

Best Video Of 2009とこれからのMVへ

Webカメラとネットワーク・メディアを利用した、新しい解釈のMVとの出会いを心より嬉しく思いました。興奮しました。技術的な面だけでなく、ファンとミュージシャンの間に漂う愛情を感じて思わず顔がほころんだり、ビューアーと世界中にいる人々がつながるコミュニケーション・ツールとしてのあり方に可能性を感じたり。群を抜いてフレッシュで、キラキラしていた、SOUR「日々の音色」に今年のベストビデオ賞を授けます!

2009年総括という意味では、ママ、怒ってます!

良い作品およびクリエイターは一握り。それも、昨年も、一昨年も活躍したプロが変わらず奮闘しており、若手がさっぱり出て来ない。時々見かける若手の作品は、プロとしての腕もなければ革新的なアイデアもない、公共の電波にのる資格のない『良くない』作品のさらにまた『劣化コピー』ばかりだ。

つまり、見本となるような、ちゃんとした仕事をする大人が少ないから、ろくな子供が育たないんだよ。MVはそもそも、フレッシュな感性を持った若者の実験の場という解釈があるけれども、かつてはバジェットとクオリティーをきちんと管理するプロデュース的立場の大人がきちんと介在していた。今は低予算とかタダとかで、大人やプロデュースのプロ不在のまま、右も左も社会も知らない学生にMVを作らせたりする。そりゃあ、公共の電波にのせられない駄作が横溢する訳だ。悪いのは子供たちじゃない。大人だよ。いい加減にしなさいよ。

来年は、独創的なアイデアをプロの技でエンタメ・コンテンツへと昇華させる力作に、たくさん、たくさん、出会いたい!