モバイル放送株式会社は7月29日、移動体向け衛星デジタル放送サービス「モバイル放送」(モバHO!)の事業を来年3月末に終了すると発表した。無料で視聴できるワンセグ放送の開始等もあり十分な会員数獲得にいたらず、事業の継続が困難、と判断したためだという。
モバHO!は、2004年にスタートした移動体向けの有料デジタル放送サービスで、音声番組(40チャンネル)や映像番組(8チャンネル)、データ放送を提供していた。既存のCS・BS放送と異なり、Sバンド(2.6GHZ帯)を使用 することで、受信アンテナの小型化が可能となり、自動車を中心とした移動体を対象に、交通情報、気象情報、音楽、ニュースやスポーツ等の番組を屋外で受信できるのが最大の特徴であった。
Sバンド帯は、降雨による減衰を受けないため、これまで電波が届かなかったところにも的確に防災情報を伝えることができる。とりわけ緊急を必要とする災害情報の伝達には大きな効果を上げるものと考えられ、事実、災害地で大いに活躍した実績がある。最近では6月に起こった岩手・宮城内陸地震の災害地において、受信機の関係機関への無償貸与を行っていた。
サービス開始から3年で200万会員獲得を目指していたが、現在の会員数は約10万たらず。同社の資本金は368億6795万円。2006年3月期は売上高6億円に対し営業赤字が112億円に上り、筆頭株主の東芝が昨年の3月に再建を目指して連結子会社化を実行した。同社には、東芝のほかシャープ、松下電器産業、トヨタ自動車、NTTデータ、USENなど88社が出資している。
韓国では、TUメディア(SKテレコムの子会社)が同じ放送衛星を使った放送サービスを行っているため、モバHO!事業終了後も、放送衛星の運用は継続していく、という。