日本放送協会(NHK)が2020年までに試験放送を目指しているスーパーハイビジョン(SHV)映像信号の使用が、ITU-R勧告として承認され、テレビの国際規格(ITU-R勧告 BT.2020:Parameter values for UHDTV systems for production and international programme exchange)となった。

国際連合の専門機関である、国際電気通信連合(International Telecommunication Union; ITU)はこの5月に標準規格を議論し、世界規模で放送局に異議を提出する機会を提供した。 ウルトラ・ハイデフィニション・テレビジョン(Ultra High Definition Television)、所謂SHV形式の承認となるITU-R勧告は、8月17日付で書面にて公布された。

NHKでは、「SHV放送を早期に実現するためには、国際的に取り決められた規格が不可欠。今回の国際規格認定により、SHV信号の伝送や家庭用視聴機器を含めたSHV放送を実現するための研究開発を加速していく。SHV放送の早期実現を目指し、SHVの魅力を国内外の方々に知っていただく周知活動にも積極的に取り組んでいく」としている(報道発表文より)。

NHKでは夏季オリンピックにて開発中の3台のSHVカメラを用いて60フレーム/秒の映像を収録し、パブリックビューイングを実施した。今回の勧告には、速く動く被写体の「動きぼやけ」を低減するための規格として、120フレーム/秒と、実物に近い色再現が可能となる色域(表現できる色空間の範囲)の拡張が項目に追加されている。

夏季オリンピックのUHVパブリックビューには、NHKと技術提携しているパナソニック社が開発した145インチ(3.7メートル)のディスプレイが使われた。8Kディスプレイに関しては、現在パナソニックとシャープが先行して挑んでいる。

一方、テレビメーカー全体としては、4Kでコンシューマー市場を活性化するところだ。LGではちょうど84インチの民生用4Kテレビを22000ドルで発売開始した。国産メーカーではソニーやJVCが4Kのホームシアター用プロジェクターを販売している。

UHDTV規格認定の波及効果は、9月6日からオランダ・アムステルダムで開催されるIBC2012でも見られるだろう。またNHKは、本年度IBCでの最高栄誉賞でもある「IBC国際栄誉賞(IBC International Honour for Excellence)」を日本で初めて受賞する。

10月22日からハリウッドで開催されるSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)の会議でも注目のテーマとなっている。NHKは昨年の会議に引き続き、SHV機器開発の進捗について報告する予定(Hz-frame-rate Super Hi-Vision Capture and Display Devices:10月25日)。

(山下香欧)