2月2日に行われたイングランド・プレミアリーグ第25節では、チェルシーFC対ニューカッスル・ユナイテッドFCの試合放送で、4K中継のフィールドテストが行われた。試合会場は英国のセント・ジェームズ・パーク。
現地英国で中継車の運用やプリプロダクションを営むSIS LIVE社がシステム構築の主管となり、カメラレンズの選択から、どの収録システムが4K中継に適しているかといった技術の検証および4K中継のワークフローの確認を行ったという。スポーツ中継では言うまでもなく、その場の一瞬を見逃すようなエラーは許されない。これに応えられる精密性の高い、信頼のおける機材の選択が重要視される。限られた中継車内スペースを考慮した、極力コンパクトでポータブルな外姿も追求される。
今回のフィールドテストは、BBCのニューカッスル試合ハイライト番組を請け負うSIS LIVEの3G対応、大型中継車OB14を併用し、中継と4K、そしてマルチカメラのワークフローを並行して行った。会場には、フジノン製75mm-400mmレンズを装着した、ソニー製CineAltaカメラ”F65″を設置し、256GBフラッシュメモリカードで内部収録をした。ハイスピードカメラ収録システムを開発する米PsiTech社も今回のフィールドテストに参加し、F65専用の収録サーバの役割でオペレーションを行った。中継車に搭載した、PsiTech社製Vortexシステムで、F65の4K映像から任意の部分を切り出してHDプレイアウトとして使う。F65の収録データは、テレキャスト(720p)に比べ9倍も高解像度なため、 映像の一部を切り出してHDとして使用できる。つまり1台の4Kカメラソースでも、HDのマルチアングルソースとして活用できるわけだ。よってVTオペレーションとプロダクションサイドは、シーンの位置を移動させながらリプレイすることができる。
この手法は昨年、Fox SportsがNFLやNASCAR中継にてF65とVortexを用いた、4K映像から必要部分を「切り取る」スーパーズーム技術を利用したと思われる。
SIS LIVEは昨年のロンドンオリンピックで、NHKと英BBCが実施した試験的8K映像伝送においても、専用中継車とオーディオシステムの組み上げなどの技術支援を行っている。公式発表はされていないが、BBCでは今年のウィンブルドン選手権にて4K中継を実施する計画が進められているという。BBCがスポーツイベント中継放送でよく発注する先がSIS LIVEだ。今回のフィールドテストは、ウィンブルドンの予行とみなしても過言ではない。
(山下香欧)