米衛星放送のDISH Networkが米携帯電話3位のスプリント・ネクステル取締役会に、ソフトバンク対抗の買収提案を出していることが明らかになった。DISHは今年1月にも、スプリント・ネクステルの子会社クリアワイヤに対しても買収提案を出していた。
情報通によると、DISHはソフトバンクが提示している「201億ドルで約70%取得」に対して「255億ドルで68%取得」を提案しており、買収資金を現金173億ドルと株式82億ドルで支払う計画だという。DISHによれば、スプリント・ネクステルの株主は、1株当たり4.76ドルの現金とDISHの0.05953株(約2.24ドル相当)を受け取れる。ソフトバンク提案に対して現金の部分で18%、株式を含めて13%のプレミアムを上乗せした水準としている。
ソフトバンクとの手続きが頓挫となるかは、最終的にスプリント・ネクステルの判断となる。本来は、ソフトバンクとの取引は7月上旬に完了する見込みであった。スプリント側は「取締役会で慎重に検討する」とのコメントを発表している。
DISHの衛星TVサービスは、ケーブル業者と対抗して好調に加入者数を伸ばしてきたが、この3年間はその増え方はフラットのままとなっていた。衛星TVサービスはケーブル事業者のようなインターネットアクセスがあるトリプルサービスの提供がなく、世代トレンドから後退した格好となっていた。そこでDISHはワイヤレスサービスに着目、無線ブロードバンドおよび携帯電話サービス用のスペクトル権を取得して準備を整えてきた。
実はDISHの会長であるチャーリー・アーゲン氏がドイツテレコムAGへ、同社傘下のT-Mobile USA部門との合併の可能性を示唆したことも発覚している。DISHからの提案は、ドイツテレコムがT-Mobileの傘下である米国モバイルフォンサービスプロバイダのメトロPCSコミュニケーションズへの入札を発表したタイミングに合わせて、4月10日前後に行われたという。このことが実行されれば、DISHはスプリントに代わってT-Mobileと、ワイヤレスと衛星TVをバンドルしたサービスを拡充できるようになる。T-Mobileは米国で加入者数第4位の携帯電話事業者。スプリント・ネクステルは対して米国で加入者数第3位。
(山下香欧)