第26回東京国際映画祭の最終日10月24日に、「『武士の献立』バリアフリー上映」が行われた。
映画や映像コンテンツのアクセシビリティを活性化する運動をしているNPO法人メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)が開発支援をしている、バリアフリー字幕システムをアプリ化した、セカンドスクリーン型バリアフリー視聴システムを、シアター内で配布するという試み。
MASCでは、映画上映からネット配信動画まで携帯端末にバリアフリーデータを配信する構想を計画している。
日本の映画館ではバリアフリー環境への推進が他国に比べて非常に遅れているという。耳が聞こえない、聞こえにくい方には字幕、目が見えない、見えにくい人には音声ガイドが必要だ。現在、地上波の放送字幕のみ総務省の補助金政策(毎年約5億円)もあり字幕付与率は高まっているが、「配信等のメディアの多様化に字幕、音声ガイドなどのバリアフリーはまったく考慮されていない」という(MASCの公式ページより)。
MASCが開発している、映画本編の音声に対してバリアフリー字幕と英語字幕、音声ガイドが同期するバリアフリー字幕システム「おと見」を、携帯端末用アプリにしてiPod touchに搭載したのが今回の試作品である。
日本の映画館にも盗撮防止で使用されているシボリューション社の音声電子透かし技術SyncNowを実装し、データ化した字幕や音声ガイドをマスター音声に透かしデータとして挿入している。
実際はダウンロードしてiPod touchにインストールする。おと見アプリからは、バリアフリー字幕表示のほか、英語字幕表示と音声ガイド再生ができる。当日は50台のiPod touchを貸出したという。
おと見アプリは、来年中に正式にリリースする予定。本アプリでは、バリアフリー字幕の他、英語、中国語など、複数の字幕を選択できるようにすることや、手話への対応、音声ガイドへの対応を検討している。
また、将来の展望として、ヘッドマウントディスプレイ(メガネ)を利用してスクリーンの前に字幕が浮いて見える「Web-shake Air字幕配信」システム(開発元:株式会社キュー・テック)の実用化も進めている。
「Web-shake Air字幕配信」システムのPV
(山下香欧)