次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は2月13日、テレビの新規格として、自宅のスマートテレビなどで受信している映像を外出先からインターネットを介してモバイル視聴を可能にする「リモート視聴」のための技術要件「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件 Ver1.0」を公開した。

本文書は、総務省「放送サービスの高度化に関する検討会」の取りまとめ結果を受けて、リモート視聴を次世代スマートテレビに実装するための技術的手法や運用条件等について述べられたもの。

リモート視聴とは、自宅のスマートテレビで受信している(あるいは録画した番組)を外出先からインターネットを介してモバイル端末で視聴できる機能を意味する。視聴者(ユーザー)は、スマートテレビに紐付けられた特定のモバイル端末から、専用アプリケーションを使って、地上波のリアルタイム視聴や録画番組視聴が可能になる。今までの規制では、ライブ放送を外出先で視聴することはできなかった。

「リモート視聴要件」によると、ユーザー側がこの機能を利用するには、「リモート視聴要件」を満たしたテレビ/受信機(親機:リモート視聴対応受信機)と、対応アプリを搭載したモバイル端末(子機:リモート端末)、インターネット接続環境が必要。そして親機と子機は、あらかじめ宅内でペアリングを行なっておかなければならないのが条件。つまり外出先からのペアリングはできない。ペアリングの有効期間は最長で3か月。同時にペアリングを有効化できる子機の台数は6台までで、同時にリモート視聴できる子機は1台までとなる。

この家庭内でしか行えないペアリングを定期的に行なわなければならない規制により、地方への長期滞在などが理由でサービスが途中で受けられなくなってしまうユーザーも潜在するのではないか。

技術的手法や運用条件について、親機に蓄積または記録されたデジタル放送コンテンツを宅外の子機にコピーもしくはムーブすることは禁止され、子機に搭載されるリモート視聴アプリには、視聴中のコンテンツをキャプチャーできる機能は設けてはならないとされている。さらに「明らかにCMスキップを目的とした機能は設けられないことが望ましい」としている一方、早送りや巻き戻しなどは可。

Bluetoothでデジタル音声出力する場合は、接続認証、暗号化通信、A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)およびSCMS-Tを実装し、これらに対応しない機器には音声出力しないようにする。デジタル音声出力する場合は、「コピー禁止」として出力する。アナログ音声出力については、制限なく出力できるようにする。

リアルタイムのリモート視聴については、放送波の制御信号などにより、放送事業者側がチャンネル単位でリモート視聴の可否をコントロールできるようにする。NexTV-Fは「リアルタイムのリモート視聴」の可否について記載した放送事業者のリストを、届け出を行った受信機メーカーに提供する。このリストに基づき、チャンネル単位でリアルタイムのリモート視聴の可否を実装する運用を可能とする。リストが更新された場合、NexTV-Fは受信機メーカーにその旨を通知するとしている。

次のステップとして、このリモート視聴技術要件をARIBから発行されているデジタル放送運用規定(TR-B14/15)に反映させるため、NexTV-Fはデジタル放送推進協会(Dpa)にARIB TR-B14/B15の改定の検討を依頼している。現在のTR-B14/15では、受信機からのIPインターフェイス出力を同一サブネット内に制限している。機器メーカー側はこの改定を待って対応製品を販売することになる。

親機を開発・製造・販売するメーカーは、「リモート視聴要件」の遵守を次世代放送推進フォーラムに届け出ることが要請される。リモート視聴は、「今回のリモート視聴要件を満たすアプリケーションのみで利用可能」としている。

(山下香欧)