米国最大テレコムのAT&Tが衛星放送事業者DirecTVを490億ドル(日本円相場価格4.9兆円)で買収する。これでAT&T側はDirecTVの国内加入者数2000万世帯を得て総合数2600万世帯と増え、AT&T側のU-VerseなどのIPTVやマルチスクリーンサービスの加入者にもDirecTVのコンテンツを提供することが可能になる。DirecTVは中南米でも約1800万件の加入者数を保有している。
広い国土の米国では、まだ高速インターネットのインフラがない地域が多い。AT&Tでは、高速インターネットサービスのない1500万世帯の地域をカバーできるとし、同社のVIPブロードバンド拡張計画線上をいくものとしている。これによりインターネットを利用した映像配信サービスの拡充も期待される。
今回の買収については、先週金曜日のAT&Tの最終値をベースに、DirecTVの1株当たり95ドルでの現金と株式を組み合わせて行われる。この買収は12か月程度で完了する見通し。既に両社の役員は買収の承認をしており、あとはFCC側からの承認を得るのみとなっている。当局の承認を促すため、AT&Tが保有するメキシコの通信大手アメリカ・モビルの株式約8%を売却するという。
今年2月には、ケーブル事業最大手のコムキャストが業界2位のタイムワーナーケーブル社の買収を発表した。Netflixなどインターネットを使った動画配信サービスが普及し、衛星放送やケーブルテレビの加入者数の成長鈍化が見られる現状、通信と放送の業界再編が進んでいる。
(山下香欧)