真夏の祭典と呼ばれるMLBオールスターゲームの中継放送は2001年来、FOXスポーツが死守している。FOXスポーツは、このスポーツイベントを新しい放送技術の検証の場として活かしており、ハイスペックな技術を用いて、秋とポストシーズンの放送にも反映させることを視野に検証を行っている。

昨年のポストシーズンで効果的だった技術をさらに進化させ、今回は特に4K中継のワークフロー、HFRカメラとオンエアグラフィックの強化を実施した。ターゲットフィールド球場には、Game Creek Video FXシリーズno ハイグレードな大型中継車が揃う。また今回、初めての試みとして、Aerial Video SystemsのパーテナヴィアP68オブザーバー航空機からの空撮も行われた。

スタジアムには36台のカメラが設置され、ハイスピードカメラは、2台がハイスピードカメラPhantom、3台がX-Moと呼ばれるファントムカメラを使ったカメラシステムだ。X-MoはFOXスポーツが誇るスローモーション撮影技法で、2007年に野球中継で起用されて以来、カメラ技術の向上と共にオペレーションを磨き上げてきている。現在はファントムv642を搭載し、通常は420~480fps(球場のライティングやカメラ配置位置によって調整)で撮影する。今回は1台がセンターフィールドの上方に、2台が左右ベースラインに配置された。ファントム単体は2000~3000fpsの撮影が可能だ。2台のファントムは、ファーストとサードベースラインのカメラ位置に配置された。

また今年は、540fpsで捉えるグラスバレーのLDX XtremeSpeed 6Xハイスピードカメラも1台、“Super-Mo”と名付けて使われた。同カメラは今シーズンのファーストハーフの中継で場を踏んできたもの。

140718_FX.jpg

4Kワークフローは昨年と同様にHD環境の中で取り入れたが、今年は新しい4Kカメラ2機種を“スーパーズーム4Kカメラ”として採用した。4K/120fpsの撮影ができるAJA CIONとVision Research Flex4KをAJA Corvid Ultraサーバに接続したシステムで、それぞれをスタジオの各定点に設置し、撮った4K映像の一部をHDとして切り出して利用する。この“4K映像からHD切り出し”の技術は、2年前の放送で既に実現している。今後のスポーツ中継において、4Kで捉えるならば60fps以上のHFRは必然的なものになってくると見ており、ポストシーズンでも引き続き撮影手法は然り、映像のクオリティを検証していくとしている。

(山下香欧)