米国大手のテレコムAT&Tは今月24日、米連邦通信委員会(FCC)から衛星事業者DirecTVの買収計画の承認を得て、買収の手続きが完了したことを発表した。現在のAT&Tの米国内の光サービス「U-verse」を通じたテレビサービス加入者は約570万人。DirecTVの加入者を加えれば米国で2,600万人、南米で1,900万人のサービス加入者を取得したことになり、米国最大規模の有料TV事業者のポジションを得るだけでなく、世界規模でもトップの座に躍り出ることになる。DirecTV側でも合併により、今までAT&Tと提携して提供していた、インターネットとTVのバンドルパッケージがより実用的に、また収益性の高いものとして継続していけるようになる。

AT&Tは昨年5月にDirecTVを485億ドルで買収することでDirecTVと合意に至っており、FCCから承認が降りるのを待っていた。AT&Tは買収発表をした当時、2社が合併すれば高速インターネット網のアクセスがない農村地域に対してインフラを改善できることをコミットしており、これが今回FCCが買収を許可した一番の理由だとみられている。

FCCからの買収許可は条件付きで、今後4年間に農村地区に少なくても1,250万人をカバーできる高速光ファイバー網を構築すること、ビデオ配信サービスで差別的慣習を行わないこと、インターネット相互接続の契約についてFCCに報告すること、低所得者へはブロードバンドサービスに割引制度を設けること、となっている。

米最大手ケーブル事業者のコムキャストは、昨年2月に同業市場3位のタイムワーナーケーブルを買収する計画を発表した。しかし、この米国2大ケーブル・ブロードバンド企業の合併により、ブロードバンドサービスをコムキャストが支配する状況は避けられなくなる見解をFCCが示したため、買収案は撤回されている。この2大ケーブル事業者の合併案がなくなった今、AT&TとDirecTVによる新しいテレビ、モバイル、高速インターネットを組み合わせた統合サービスの提供による市場拡大が期待される。

(山下香欧)