エレメンタルテクノロジーズは、主にソフトウェアベースの自社コーデック技術によるデータ圧縮(エンコード)と変換(トランスコード)を持つ。汎用ハードウェアと独自ソフトウェアを使って映像処理システムを構築する「ソフトウェア定義ビデオ」をベースに、放送関連事業者のサービスや映像制作環境向けの映像処理技術を提供している。ソフトウェアベースなので、ハードウェアコーデックよりも短い開発期間で新フォーマットやデバイスに対応できるのが特長。国内においても、ロンドンオリンピックといったスポーツイベントのライブ配信やMSOのVODサービス、4K/HEVCの放送・配信試験の場で採用された実績がある。

米国本社がこの9月に、クラウドでの映像処理サービス展開やクライアントサイドで以前から交流のあったAmazon Web Services社(AWS)の傘下になることを発表しており、日本法人化後の初出展で、業界から注目されていたブースである。

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低ビットレート(15Mbps)でのリアルタイム4K60p/HEVCエンコードし、テクニカラー社製のセットトップボックス(非売品)を介して4Kテレビに再現

展示ブースでは、主に各種製品ごとに映像処理ソリューションを紹介。4K/HDR/HEVCといった新しい技術の実装に向けた事例を実演していた。4K60pのリアルタイムHEVC処理が可能なライブエンコーダー「ElementalLive」の最新1RUアプライアンスモデルを使い、関西テレビ放送の協力により、次世代4K地上デジタル放送に向けた低ビットレートによる映像クオリティを見せていた。関西テレビ放送は今年の1月に開催された大阪国際女子マラソンや情報通信月間参加行事「カンテレテクニカルフェア2015」にて、エレメンタルのライブエンコーダーを採用してISDB-T地デジ方式による4K生放送実験を行っている。

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axle VideoのMAMシステム

複数のビデオファイルをパラレル処理するファイル変換サーバー「Elemental Server」のコーナーでは、実機のデモやメディアソリューションズ社が扱うaxle VideoのMAMシステムとのやりとりなど、システム構築の事例を紹介。axle VideoのMAMソリューションでは、Elemental Serverが扱うコンテンツデータの管理と閲覧が非常に簡単な設定とオペレーションで行うことが可能だ。

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見逃し視聴、nPVR、そしてダイナミック広告挿入といったサービス付加価値を、簡単に実装できる映像配信プラットフォーム「Elemental Delta」のコーナーでは、別途に同社技術でHEVC処理をしたAmazon Primeサービスが提供している「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル(Mozart in the Jungle)」といった、4K HDR対応番組のプロモーションコンテンツをHDR対応ソニー4Kブラビア(X9000C)で再生していた。国内のAmazon Primeサービスでは、まだ4K HDR対応のコンテンツは提供されていない。

(山下香欧)