韓国電子通信研究院(ETRI)は、放送1チャンネルでUHD放送と移動高画質(HD)放送を同時送信・受信することができる階層分割多重(LDM)技術に、HEVCスケーラブル拡張(SHVC/Scalable High-efficiency Video Coding)エンコード技術を融合させた実証実験を成功させた。

LDM技術で1つの地上波チャンネルでUHDと移動HD放送を送受信するとともに、SHVC技術により従来の固定用サービスで使っているコーデック方式よりも最大30%の圧縮効率が可能となり、周波数の利用効率の良い環境でUHD放送サービスが実現する。また、放送環境が悪化して受信が困難なときにはHDで見せるが、環境が良くなればUHDにアップグレードできるといった、アダプティブなコーデック拡張も可能になるという。

ETRIの発表によると7月25日から4日間、済州テクノパークでフィールドテストを実施した。ETRIがネットワーク通信企業CLEVER LOGIC社と共同開発したATSC3.0トランスミッターとレシーバ、そしてテクニカラー社とATEME社のリアルタイムSHVCエンコーダとデコーダ技術を用意し、共同で検証を行った。今回の実験で使用した映像はHDR対応も使われたという。

同実証実験で使われた技術は、創造科学部・情報通信技術振興センター(IITP)の放送通信産業技術開発事業である「融合型実感放送サービスと伝送技術の開発」の一環として開発が進められており、来年2月、韓国の地上波3社を通じて本格的に商用化される計画となっている。

ETRIは、LDM技術をATSCで標準化する申請を行っており、現在はProposed Standardとして承認されている。このLDM技術を含むATSC3.0が国際標準として最終的に承認されれば、特許の確保による技術料創出だけでなくATSC3.0放送市場において有利な位置に立てるものとみている。

(山下香欧)