Blackmagic Designの発表によると、パフォーマンス・アート「Nufonia Must Fall」のライブプロダクションが、Blackmagic Pocket Cinema CameraとATEM Production Studio 4Kを使用して撮影およびライブスイッチングを行ったという。「Nufonia Must Fall」は、モントリオールに拠点を置くターンテーブリスト/プロデューサーのエリック・サン氏による同名のモノクロ・グラフィックノベルを基にして制作された映像作品。

同作品は40体のパペット、20のミニチュアセット、ライブのパペット操作を駆使するストーリーがステージで展開される。パペットやセットは非常に小さいためパフォーマンスの撮影、フィルムのライブスイッチング、ステージ上の大画面スクリーンへのプロジェクションには、4台のBlackmagic Pocket Cinema Cameraと1台のATEM Production Studio 4Kで構成されたマルチカムセットアップが使用された。撮影監督のAJコキダキス氏は次のようにコメントしている。

コキダキス氏:このショーで使う機材を選定する際、シネマルックな画が撮れる機材にこだわりました。ライブビデオを扱う場合、ライブスイッチングや撮影用の多くの機材はドキュメンタリー風の映像になっています。しかし、Blackmagic Pocket Cinema Cameraは、優れた浅い被写界深度で16ミリフィルムを思わせるような画が撮れます。これはまさに私たちが求めていたルックでした。

Blackmagic Pocket Cinema Cameraの採用により、舞台をシンプルにセットアップでき、ステージ上に必要な人数を減らすことができた。これは同プロダクションにとって必要不可欠なことであった。

コキダキス氏:ショーの最中にフォーカスを調整できるよう、フォーカスギアを使用したカメラをレールに取り付けました。Blackmagic Pocket Cinema Cameraは非常に柔軟性が高い素晴らしいカメラです。ドリー上の移動や、フォーカス、フレーミングの調整などは、通常複数のスタッフで行うのですが、今回は私一人でステージ上でカメラを操作しました。これが可能だったのは、Blackmagic Pocket Cinema Camera の柔軟性ゆえですね。

原作となったグラフィックノベルは、チャーリー・チャップリンの初期作品に影響を受けたという。これを再現するため、劇場版「Nufonia Must Fall」は白黒のフィルム・ノワールを彷彿させるルックにする必要があった。カラーで撮影したときのドラマ性を損なわずにこれを実現するため、白黒で撮影するのではなく、セットとパペットをグレースケールでペイントし、セット内での照明効果と連動させるという手法が採られた。ステージ上で明るくなりすぎないよう、ミニチュアセットでは小型のLEDライトが使用された。

コキダキス氏:舞台のセットアップ用に小型のLEDライトが必要不可欠だったんですが、これらの照明だけで問題なく使用できるコンパクトなカメラを使うことがこのショーの鍵でした。優れた画を撮るのに膨大な照明量が必要だと、観客にとってメインのスクリーンを見る妨げになってしまいます。MFTレンズを使用して、最高のISO1600で撮影していますが、とてもいい感じです。Pocket Cinema Cameraは本当に使えるカメラですね。

アングルやシーンの切り替えでは、ATEM Production Studio 4Kを操作の司令塔にした。シーンが切り替わる際など、スタッフやパペットを操る人形師たちはステージ上をカメラからカメラへと動き回り、外観ショット、クローズアップショット、合成ショットを撮影している。

サン氏:ただ単にカメラの前のアクションを撮るよりはるかにダイナミックですが、すべての切り替えはATEM Production Studio 4Kで行っています。

コキダキス氏:もしこれが映画であれば、撮影を終えてから編集作業に1週間はかかるでしょう。私たちはこれをすべてステージ上で行っているんです。ストーリーの展開に合わせてコミカルさやインパクトを演出するクロスフェードやハードカットなどのトランジション・エフェクトも使用できます。ATEM Production Studio 4Kがなければ、私たちが理想としていたようなレベルではこのショーは実現できなかったと思います。

ATEM Production Studio 4Kは、Blackmagic Pocket Cinema Cameraの映像を切り替えるだけでなく、ライブカメラのフィードをセットの下に設置されたプレビューモニターに送信した。そのため、人形師たちは操っているパペットからさほど注意を逸らさずにプレビューを見てキューに備えることができたという。また上海での上演時には、ATEM Production Studio 4Kを使用し字幕を映像にオーバーレイした。チリのアントファガスタとサンティアゴでも同様の試みを行った。

「Nufonia Must Fall」は、過去2年間に渡るツアーで、カナダ、アメリカ合衆国、ドイツ、オランダ、オーストラリア、中国、チリなどで上演されてきた。ツアーは現在も継続中で、アメリカ各地での追加上演とアブダビでの上演が予定されている。