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Blackmagic Designの発表によると、上海に拠点を置くMZスタジオが中国のスマホメーカーvivoの「X9」のテレビCMのカラーグレーディングにDaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Advanced Panelを使用しているという。同CMには台湾人俳優エディ・ポンが起用されている。
同CMは、朝のジョギング、撮影セット、パーティーなど、様々なシーンで自分の姿をスマホで撮影するエディ・ポンの姿を追い、同社のスマホのパワフルなカメラ機能を紹介するという内容。同CMのカラリストである陳崢氏は次のようにコメントしている。
陳崢氏:監督は、これらのシーンにそれぞれ異なるビジョンを持っていました。朝のジョギングの場面では、典型的な上海の朝に感じられる冷たいトーン、撮影セットでの場面は暖かみがある優しいトーン、パーティーはカラフルなルックを希望していました。全シーンを通して透明感を感じられるルックで、肌のトーンは自然にする必要がありました。
例えば、朝のシーンのトーンは、DaVinci Resolve Studioを使用して、低彩度のオリジナルのカメラRAWフッテージを監督の希望するルックに変換したと同氏は言う。
陳崢氏:プライマリーグレーディングでは、フッテージの基本的な色を整える作業を行い、そこから全体的に少し青みがかったトーンにして早朝の冷たさを感じられるようにしました。DaVinci Resolveのカラーホイールのオフセットを使用して、ショットから澄んだ空気感が得られるようにし、青みがかったルックを作成しました。自然なスキントーンを得るために、肌の明るさを上げる必要がありました。カラーホイールのYRGBリフト/ガンマ/ゲインで輝度チャンネルを個別に調整できるので、肌の部分をキーイングし、ゲインまたはガンマの輝度を上げるだけで自然な肌のトーンが得られました。
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グレーディング前
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グレーディング後
パーティーの場面では背景に多くの人が写り込んでいたので、ポンが引き立つようにPower Windowを使い、他の出席者を分離して彩度を下げたり、暗くしたりする作業をしたと言う。また、カメラの動きに合わせてPower Windowで分離した範囲をトラッキングする必要があったという。
陳崢氏:DaVinci ResolveのPower Windowとトラッキングツールは非常にパワフルなツールですね。ウィンドウがすばやく簡単にトラッキングでき、特にDaVinci Resolve 12で3Dトラッキングが使用できるようになってから作業効率が飛躍的に上がりました。
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グレーディング前
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グレーディング後
パーティーの場面は外灘で撮影され、黄浦江の対岸の美しい夜景が画面に広がる。このシーンでは、DaVinci ResolveのSat vs Satカーブを使いサチュレーションを調整したという。
陳崢氏: 他のグレーディングツールでは、サチュレーションを上げると赤と青がクリッピングされやすい一方で、黄色は希望するレベルにならないことが多いのですが、DaVinci ResolveのSat vs Satカーブを使用すると赤と青が潰れることなく、全ての色を鮮明にできました。
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グレーディング前
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グレーディング後
スマホの画面に映し出されるポンのフッテージは、実際はグリーンバックの前で別に撮影された映像を画面上に合成したものだ。
陳崢氏: 合成を行う前にグリーンバックのショットの色を、電話の画面の外の色とマッチさせました。DaVinci Resolve内蔵の合成機能を使用すると、電話の画面内と画面外のショットの比較が簡単に行えたので色の一貫性の確認ができました。
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グレーディング前
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グレーディング後
同氏はDaVinci Resolveのギャラリーやバージョニングが、監督とショットのルックを確認する上で役に立ったとも語る。最後に次のようにコメントした。
陳崢氏:例えば、撮影セットの場面のルックは暖かみがある優しい色合いを監督は希望したので、監督が満足するまで暖色系の色を使ったルックをいくつか作りました。トーンを決める上では、異なるルックの複数のグレードを作成し、ギャラリーに保存できるので、監督と確認を行う際に、DaVinci Resolve Advanced Panelのボタンをクリックするだけでグレードが切り替えられたので便利でした。
また、1つのショットで複数のルックの作成が必要な場合、バージョニングを使用するとタイムライン上に複数のバージョンを作成できるので、書き出しを行う度にギャラリーに保存したグレードを適用する必要がなかったので助かりました。DaVinci Resolveの使用方法はシンプルで、手早く簡単に思い通りの結果が得られるので、クリエイティビティの面により多くの時間を使うことができます。
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