サムスンとパナソニック、20世紀フォックス(FOX)は、HDR10規格の拡張版であるHDR10+フォーマットを促進するHDR10+アライアンスを結成した。
HDR10+は、SMPTEによるカラーボリューム変換の動的メタデータを定義するST.2094-40をベースに、サムスンによるアプリケーションを適用した、最新のオープンスタンダードフォーマット。今年の春4月20日には、サムスンとアマゾンビデオが、HDR10+を推していくという内容を発表し、市場にHDR10+の潜在力が広く知れ渡った。
サムスンの2017 UHDテレビおよび2016年のUHDテレビでも今年後半にファームウェアアップグレードを通じてHDR10+に対応する予定。アマゾンプライムビデオでもHDR10+に対応するコンテンツが登場する予定
HDR10+は、基本のHDRにST.2094-40に基づいた動的メタデータ(Dynamic Tone Mapping)を追加し、動的メタデータがシーンまたはフレーム毎に輝度レベルを調整することで、より現実に近いコントラストとカラーを作成する。よって、制作側の意図に近いイメージを再現し、視聴体験を向上させることができる。
現行のHDR10規格は、場面固有の輝度レベルがあるにも関わらず、すべてのコンテンツに対して固定トーンマッピング曲線を1つだけ採用する、スタティック(静的)トーンマッピングを充てている。再生中に変化しない静的メタデータを利用するため、一部のシーンで画質が最適でない場合がある。例えば、映画の全体的な配色が非常に明るいが、比較的薄暗い照明で撮影された少数のシーンがある場合、全体のコンテンツを暗くエンコーディングしてしまう。よって、制作側が想像していたよりもかなり暗く再現されてしまうという現象が起こる。
HDRに関して、様々なアプローチが存在する。ITUでは、知覚量子化器(PQ、SMPTE ST 2084)を、CTAではHDR10、BBCとNHKが共同開発したハイブリッドログガンマ(HLG)、STマイクロエレクトロニクス、Philips International BV、CableLabs、Technicolor R&D Franceが共同開発したSL-HDR1が存在する。加えてDolby LaboratoriesによるDolby Visionは、12ビットの色深度と、HDR+と同じく動的メタデータを組み込んだ方式となっている。
HDR10+はDolby Visionに当たる方式になるが、オープンスタンダードでロイヤリティフリーである(ただし名目上、管理費が発生する)。HDR10+アライアンスは、コンテンツ企業、テレビメーカー、Blu-rayディスクプレイヤー/レコーダー、セットトップボックスメーカー、SoCベンダーにHDR10+プラットフォームのライセンスを供与するライセンシングエンティティを開発する。CES2018では、HDR10+テクノロジーのデモンストレーションと、ライセンスプログラムの詳細を発表する予定である。
(ザッカメッカ)