Viibarと富士フイルムは、東京都品川区にあるViibar目黒オフィスにて「シネマレンズセミナー」を開催した。Viibarは3,000人を超えるのプロのクリエーターネットワークをもつデジタル動画制作会社で、動画制作に関するセミナーを定期的に開催している。

今回のセミナーは、デジタル一眼での動画撮影からシネマカメラやシネマレンズにステップアップしたいと考えている人向けのセミナーで、富士フイルムの光学・電子映像事業部の三須慶太郎氏と、セミナー講師として女流ビデオグラファーの平林亜子氏が登壇。平林氏の作品といえば、最後の意外な事実で話題を起こした資生堂のYouTubeの動画「シセイドウ ビノラボ~女の印象は、自由自在~」が有名だ。

富士フイルムの光学・電子映像事業部の三須慶太郎氏(右)と平林亜子氏(左)

平林氏は、会場に設営された簡易スタジオにシネマレンズとスチルレンズの2台を設置して独自の口調でシネマレンズとスチルレンズの比較を紹介した。まず、座っている女性の目にフォーカスを合わせてズームを変化させた場合に起こる「ズーム焦点移動」という現象を実現。

シネマレンズは引きボケの抑制を実現しているので画角を変えてもフォーカスは変わらない。しかし、スチルレンズは画角を変えていくとフォーカスがずれてしまう現状が見られた。続けて、ズーミング時の「光軸ズレ」の抑制や画角変更(ブリージング)の抑制なども実演した。三須氏は、シネマレンズが焦点移動の抑制できる理由をこう解説した。

三須氏:そもそもスチル用のレンズとシネマ用のレンズではレンズ構成が異なります。スチル用のレンズはスチルを撮るためのレンズですので、画角の変動を想定した設計になっています。対してシネマ用のレンズは変動を加味した設計にしているので、それを限りなく抑えるように設計しています。

会場には簡易スタジオをセットしてMKレンズとスチルレンズの横並びの比較が行われた

MKレンズは、フォーカスの回転角が200度で、0.8mmのギアピッチ、アイリスを無段階で設定できる機能を搭載している。平林氏は特にシームレスアイリスの使い勝手を次のように語った。

平林氏:スチルレンズだと設定できるアイリスが決まっていて、それだと“F4とか明るいけれどもF5.6だと暗い”みたな微妙な場合があります。その微妙な感覚をシームレスであれば“F4絞り目”みたいだったり“F5.6開け目”みたいなことができるのがいいです。

最後に平林氏は、MKレンズを使った映像を3種類公開してレンズの感想を語った。1本目の映像はSpolayというエクササイズメディアの動画でMKレンズを使用した例を紹介。MKレンズは解像感が高く、パキッとした印象だと感想を語った。2本目はナイトシーンでの試し撮り。照明を担当したポリゴンズの濱田氏によると、髪の毛の風で1本1本がふわりと動いているところがシネレンズらしいとコメントした。

3本目は、ドリーバックをしながらズームを同時に行う「めまいショット」を公開。カメラをドリーバックしながらズームインするという映像で、カメラの位置は下がっているが、映像の被写体の大きさは一定というカット。36回繰り返して実現したという。今回のめまいショットの撮影は、光軸ズレやブリージングを抑えたシネマレンズでなければ撮れなかっただろうと解説をしてセミナーをまとめた。

めまいショットのメイキングについて解説するポリゴンズの濱田氏