ARRIの優れた画質を維持しながらネイティブ4K収録に対応したALEXA LF登場

ナックイメージテクノロジーは2月15日、東京・虎ノ門にあるアンダーズ東京にて、ARRIのラージフォーマットカメラシステムの発表会を行った。ARRIは2月2日、ロンドンのBSCExpoにてALEXAセンサーをベースに搭載された「ALEXA LFカメラ」や、これに対応する「ARRIシグネチャープライムレンズ」、ラージセンサーに最適化された「LPLレンズマウント」、従来のPLレンズに互換性を持たせる「PL-LPLアダプター」を発表。待望のALEXAシリーズとALEXA 65の間を埋める新システムが登場とあって、多くの業界関係者が集まっていた。

まず最初にARRI Asiaのポール・アイヴァン氏から、新しく発表された新しいカメラシステムの概要の説明が行われた。

ARRI Asiaのマネージングディレクターのポール・アイヴァン氏

ラージフォーマットセンサーを搭載したカメラ「ARRI ALEXA LF」とラージフォーマットイメージサークルを備えたARRIシグネチャープライムレンズは、これまで実現できなかった人を引き込む魅力的な映像や没入感を作り出だせるとしている。

ラージフォーマットセンサーにより深度の浅い独特のイメージを実現

新しいシステムは、カメラやレンズ、レンズマウントまで一新されているが、既存のPLマウントレンズやALEXA用アクセサリーとの互換性を維持する基本設計を実現。PL-LPLアダプターの併用により、スーパー35mmあるいはフルサイズを問わず、従来のすべてのPLマウントレンズを利用できる。LPLマウントの装着が工具なしで行えるため、撮影現場でも素早くPLとLPLを切る変え可能。また、LPLマウントをほかのメーカーにもライセンス供給を行い、サードパーティーのカメラメーカーでもLPLマウントの製造を可能としている。

Angenieux、Cooke、Leica、Panavisionなどの6社のレンズメーカーはLPLマウントへの対応を表明

ALEXA LFは、エレクトロニックコントロールシステムやビューファインダーといった従来のアクセサリーやレンズをそのまま使用できる。操作パネルやワイヤレスビデオトランスミッターなどのすべての機能がARRI STX Wと同じ仕様なので撮影現場で混乱することはない。ワークフローに関してもこれまでALEXAと互換性を保持している。

LPLレンズマウントは従来のカメラシステムと高い互換性を実現している

イメージセンサーのすべてを使った「LF Open Gate」や16:9などの3種類のセンサーモードを搭載

続いて、ARRI Asiaのカルロス・チュー氏からカメラのシステムの紹介が行われた。ALEXA 65は好調で、全世界で70台が順調に稼働中。しかし、台数が少なく要望に応えられない状況が続いている。そこで、実現したのが今回新しく発表したALEXA LFだという。

ARRI Asiaのシニアマネージャー、カルロス・チュー氏

ALEXA LFセンサーは、54.12×25.59mmのALEXA 65のセンサーに比べて左右が短い36.70×25.54mmで、4448×3096の画素数を実現。センサー自体は、ALEXA 65やALEXAのAMIRAシリーズと同じALEXAセンサーをベースに設計されたものを用いていており、カラーサイエンスや色再現性能、スキントーンなど、ARRIの優れた総合画質を実現。また、35mmのフルフレームフォトよりも若干大きい。そのために、ラージフォーマットの「LF」という呼び方をしてるという。

写真のセンサーはALEXA 65のもの。黄色の線で示したところが、ALEXA LFセンサーのサイズ

ALEXA LF3種類のセンサーモードを搭載。1つが「LF Open Gate」と呼ばれるモードで、センサーのすべての領域をカバーした4448×3096の4.5Kの解像度の映像が可能。ARRI RAW時は最大90pfsのハイスピード収録が可能。

2つ目が「LF 16:9」と呼ばれるモードで、LFで撮れる最少のセンサーサイズになるが、3850×2160のUHDをカバーしている。4K完パケの基準を満たす映像への対応が特長で、イメージサークルは36.35mmとなる。LF Open Gateと同じく、16:9のモードでもARRI RAW時で最大90コマのハイスピード収録が可能。

3つ目が「LF 2.93:1」で、いわゆるシネマスコープモードの画角を獲るために使うモード。ARRI RAWで最大150コマのハイスピード収録が可能。どのセンサーモードも標準感度は800で高感度かつ低ノイズを実現している。

「LF Open Gate」は4448✕3096の映像が可能

「LF 16:9」は4K完パケの基準を満たす3840×2160の映像が可能。黄色い外側の点線は、従来のALEXAから搭載されているサラウンドビュー

「LF 2.39:1」は、最大150fpsの高フレームレートの映像が可能

実際のセンサーモジュール

レンズを外した状態から見たセンサーモジュール

チュー氏は「センサーが大きくなることによるメリットとして、同じ焦点距離で被写体までの距離や感度、レンズの絞りを同じにした場合は、センサーの大きいカメラのほうが被写界深度が非常に浅くなり、被写体を際立たせる表現が可能となる。従来よりも人を惹きこむ映像を実現できる」と紹介した。

映像の出力に関してもALEXA SXT Wと同じく、4系統個別に出すことが可能。1つはEVFで、あとはモニタなどを3種類個別に設定して出力可能。SDIは、ALEXA Miniなどと同じく6Gのアウトを備えている。動作環境温度は、これまでのARRIのカメラと同じで-20°から+45°まで対応。業界標準の0°から+40°までのものが多いが、それより広くレンジをとっているという。

ALEXA 3機種を上から底面から覗いた図。左側がALEXA 65で、中央がALEXA LF、右がALEXA SXT W。ALEXA LFは若干縦と横が大きくなっている

12mmから280mmの16本をラインナップするARRIシグネチャープライムレンズ

続いて、ARRIシグネチャープライムレンズをアイヴァン氏が紹介。いままでのARRIの長いレンズの作成経験、また未来に含めての希望というものを含めてシグネチャープライムと名付けたという。レンズは全部で16本のセットで、12mmから280mmをラインナップ。2019年の中頃にすべてのレンズが出揃う予定。

シグネチャープライムレンズは、美しくて自然なスキントーンやクリーミーな独特なボケ感を特長としている。レンズの鏡胴の部分に新しくマグネシウム素材を使うことによって非常に軽量に作られている。また、レンズの後部にフィルターホルダーがついており、エフェクトのついたフィルターを装着できる。前玉と後玉を交換ができ、フレアーを追加するなど、1つのレンズで複数の可能性を作ることにも対応している。

出荷時期に関しては、3段階に分かれており、2018年の6月に標準4本セットとして出荷を開始する予定。最後のテレ側とワイド側のレンズに関しては、2019年の中頃をめどに出荷を進めているという。

ナックイメージテクノロジーは、ALEXA LFのハンズオンを2月26日に港区赤坂にあるナックレンタルにて開催するという。詳しくは同社のサイトをチェックしてほしい。