Blackmagic Designの発表によると、ドキュメンタリー映画「In to the Now」の撮影において、マイケル・ミュラー監督が2台のVRリグに計18台のMicro Studio Camera 4Kを組み込んで使用したという。
水中の様子をVRドキュメンタリーで伝える同作品は、海洋生物の生態や、今日の海が直面する問題を紹介するシリーズの一作目。「In to the Now」は、サメへの恐怖を乗り越えるミュラー氏の旅を通して、気候変動、汚染、魚の乱獲など、現在の海が抱える喫緊の問題を映し出す。また、同作品は、視聴者がVRを通して海中の世界を体験できる教材としての役割も担っているという。
RSA VRおよびVanishing Oceans社によって制作された「In to the Now」は、2018年トライベッカ映画祭を封切りに、カンヌ映画祭や青島国際VRウィークのSandbox Immersive Festivalでも上映された。また、同作品はスタンフォード大学神経学部の研究の一環でもあり、PSTD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害、他のストレス性障害を抱える患者に対し、VRが与える好影響を調べることが目的でもある。ミュラー氏は、スタンフォード大学神経学部の長であるアンドリュー・ハバーマン氏と、同大学の5人の科学者と協力して試し撮りを行なった。その結果、ミュラー氏は、今回の作品には高品質のカメラシステムが必要であることに気づいたという。
ミュラー氏:世界を旅する資金を調達するために、残された時間は2か月半だけでした。そして、私が必要としたカメラは、その時点では存在しませんでした。海洋動物は移動しているので、時間的な余裕もありませんでした
4K解像度でサイズが小さく、ゲンロックに対応しており、レンズマウントが交換できるカメラが必要でした。条件は他にもありました。幸運にも、VRTULのケイシー・サップ氏とマット・デジョン氏が、優れたソリューションを構築してくれました。それが、Blackmagic DesignのMicro Studio Camera 4Kを内部に設置した、”VRTUL 1” リグです。
サンディエゴを拠点とするVRTULは、ライブアクションVRソリューションを専門とする制作会社。8週間で考案・作成された2台のVRTUL 1リグは、それぞれ9台のMicro Studio Camera 4Kと、Mini Converter SDI Distribution、Mini Converter Sync Generator、Blackmagic 3G-SDI Shield for Arduinoで構築された。2台のリグは、メイン用とバックアップ用として同時に使用された。
ミュラー氏:いくつかの理由から、Micro Studio Camera 4Kが最善のソリューションでした。ゲンロックに対応しているので、カメラをステレオスコピック3Dのペアで並べた時でも、カメラの同期を完璧に維持できました。また、フォームファクターも重要でした。
Micro Studio Camera 4Kは小さいので、人間の平均的な瞳孔間距離を模倣し、カメラを90度回転させて、リアルな3D効果を生み出すことができました。この4Kソリューションと、自分たちで選んだ複数レンズの組み合わせによって、希望通りのピクセル密度が得られました。その結果、映像をつなぎ合わせて、最大6K解像度の映像を作成できました。
また、422信号を使用して、外部レコーダーで高品質のProResファイルを収録できました。これにより、H.264圧縮に依存する他のVRカメラと比べて優れた色忠実度がポストプロダクションで得られました。
さらに、Blackmagic 3G-SDI Shield for Arduino、Micro Studio Camera 4Kの拡張ポート、Blackmagic SDI Control Protocolで全カメラコントロールを統一し、ミュラー氏とチームメンバーは全カメラを1台のカスタムキーパッドから操作した。また、Mini Converter SDI DistributionでMini Converter Sync Generatorの信号を複製し、Mini Converter Sync Generatorで全カメラのシャッターを同期した。撮影は1年をかけて行われ、ミュラー氏とチームのメンバーは世界中を飛び回ったという。
ミュラー氏:続行することも可能でした。また行く予定ですが、今回は最初のシリーズだったので、海中で見られる最も美しいものにターゲットを絞り、9回の遠征に抑える必要がありました。アフリカからガラパゴス諸島まで、世界を縦横に飛び回りました。2018年のリリースに間に合うように、ほぼ立て続けに撮影を行ないました。
プロカメラマンとして30年の経験のうち、ミュラー氏は過去15年を自然界における動物の撮影に費やしている。その活動には、計32回にわたるサメの遠征撮影も含まれる。
ミュラー氏:写真では、動物の姿が正しく伝わらない事を実感していました。そこで、ドキュメンタリー映画であれば、写真で表現できない奥行きや物語性などを伝えられると考えたのです。
新しい世代の人たちにインスピレーションを与えることで、彼らが自然を楽しみ、保護してくれたら嬉しいです。私は、地球が本当に美しい星であり、それを守る時間がまだ残されていることを、皆さんにお伝えしたいのです。人は愛するものを守ります。私は、皆さんがこれまでと違う形で海を愛するようになる上で、お手伝いできる方法を見つけたいのです。
ミュラー氏:私たちは、ロードマップが全くないメディアで物語を伝える、新しい方法を探していました。したがって、新しいカメラシステムを使用してVRコンテンツを作成する仕事は、楽しくやりがいのあるものでした。
Blackmagic Designの製品は、非常に良く機能してくれました。VRで撮影できたので、視聴者は私たちの旅の世界に没入し、シーンの中心に立って、過去に経験したことのない角度で地球を観察できます。