マクソンCEOのDavid McGavran氏
マクソンの「Cinema 4D」は、モデリング、ペイント、レンダリング、アニメーションを搭載した3Dソフトウェアだ。強力なモーショングラフィックスツール「MoGraph」の搭載やAfter Effectsとの統合が充実しており、映像制作の現場でも定番の3Dツールとなっている。
そのCinema 4Dでお馴染みのマクソンのCEOに、アドビでプロフェッショナルオーディオとビデオのエンジニアリング担当ディレクターとして活躍してきたデビッド・マクギャヴラン氏が就任。新たにマクソンの舵取りする新CEOのデビッド氏に、今後のビジョンについて話を聞いてみた。
2018年9月3日に発売したCinema 4D Broadcast R20
――デビットさんは2018年7月よりマクソンの新CEOに就任しましたが、これまでどのようなプロジェクトに関わられてきましたか?
20年前にアドビに入社しまして、プログラマーとしてPremiereの開発に関わりました。その後、Premiere Proを約5年、After Effects、Premiere Proのエンジニアリングマネージャーを経験しました。そこの現場では、Premiere Proをどのような方向に開発をしていくのか?世界中の業界をリードする編集者、監督、コンポジターとお会いして映像制作の現場を意見を聞て回りました。日本にも3、4回は来たことがあります。
その後は、After EffectsやAuditionなどのプロフェッショナルオーディオとビデオのエンジニアリング担当ディレクターになり、2018年にリリースされましたPremiere Rushにも関わりました。
――Cinema 4Dは3Dソフトの中でもメジャーな存在ですが、現在、「モーショングラフィックス」「建築」「ゲーム」「シネマ」のどのジャンルで多く使われることが多いですか?
国ごとに違っています。アメリカでは、放送業界系の比率が非常に高いです。世界全体では、やはりモーショングラフィックスとプロダクトデザインなどのビジュアライゼーションが半々ぐらいの割合で使われています。
――Cinema 4Dといえば、映画芸術科学アカデミー科学技術賞受賞が話題です。MoGraphモジュールの開発者であるPer-Anders Edwardsさんの映画芸術科学アカデミー科学技術賞の技術貢献賞、おめでとうございます。
Edwardsの受賞には大変興奮しております。MoGraphは、いろいろな映画で使われるようになりました。アカデミーがそれに気が付き、マクソンのいろんな人にインタビューをしまして、彼が授与することになりました。
カルフォルニアのロサンゼルスでほかの開発者と一緒に、Edwrdsをお祝いをする予定です。
Cinema 4D R20紹介ビデオより。MoGraphの例
――科学技術賞は会社やソフトが受賞するのではなく、開発者が受賞するのですね。
アカデミー賞自体は会社や商品に賞を授与する形ではなく、開発した人に対して授与する形になります。今回は、アドビのAfter Effectsも同じく受賞しましたが、あちらはAfter Effectsの開発チームとして受賞しました。Cinema 4Dの場合は、MoGraphの開発者が受賞した形になりますね。
Edwrdsは現役でマクソンで働いていますし、Cinema 4Dのオリジナルを開発した3名もまだマクソンで働いています。
――プロニュースの多くの読者の方はAfter Effectsを使っていまして、3Dに関してはAE上で使えるElement 3Dなどにも注目をしています。そこで、Element 3DとCinema 4Dの違いや、Cinema 4Dのアドバンテージなど今一度教えていただけますか?
Element 3Dは、Cinema 4Dと競合するというツールというツールではありません。Element 3Dは非常に優れた製品で、シンプルで使いやすいのが特徴の基本的なツールです。それに対して、Cinema 4Dはモデル、スカルプト、シミュレーション、モーショングラフィックスをトータルなパッケージで実現しています。
そう考えると、Cinema 4DはElement 3Dからさらに3Dを使い込む方向けの商品になっています。また、Element 3Dの開発者であるアンドリュークレーマー氏とは、非常にいい関係を実現しています。マクソンは2019年1月から2月にロンドン、パリ、バルセロナ、ベルリンで行われたVIDEO COPILOT LIVE!のヨーロッパツアーのスポンサーとしても参加しており、VIDEO COPILOTとはパートナーのような関係として共存しています。
Cinema 4D Visualize R20より
――デビッドさんがCEOに就任してマクソンは今度、どのように変わりますか?
一番最初に行ったのは、マネージメントの統合です。マクソンには、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツの4つの会社があるのですけれども、それぞれが独自に動いていました。
今後、グローバルな商品として展開するならば、グローバルな形のマネージメントを実現する必要があります。そこで、今までばらばらだった各マネージメントを一人のワールドワイドセールス担当ヘッドが担当することになりました。
また、クリエイターの皆さんからは、Cinema 4Dに関して高い評価を頂いております。そこで、より簡単にお客さんにユーザーになっていただけるシステムが必要だと思いました。購入する側のお客様の立場になってマクソンのWebサイトにアクセスをしてみると、グレードの違いは何か?自分にはどのグレードが最適なのか?というのがわかりにくい。デモ版をダウンロードしようとしても自分が求めるグレードがダウンロードできているのかわからない。それぞれのプロセス自体も、アメリカとドイツでは違ったりしていました。そういったことを簡単にして、注文できるようにする必要があると考えました。
――マクソンは2013年に「Adobe Systems、MAXONとの戦略的提携」を発表しました。現在もCinema 4D LiteがAfter Effectsに同梱されていて良好な関係だと思いますが、今後、両者の関係に変化はありそうですか?
もちろん、アドビとのパートナーシップは続いています。After EffectsにはCinema 4D Liteが搭載され、Cinema 4DレンダリングエンジンがAdobe After Effectsに統合されています。さらにアドビIllustrator向けの無料プラグイン「CINEWARE for Illustrator」も提供しています。また、アドビのほうで開発しているARオーサリングツール「Project Aero」は、Cinema 4DからProject Aeroに出せるようなものも現在開発中です。
また、アドビの製品は、3Dをモデリングできるツールが存在しないので、そこのエリアに対してわれわれのほうは協力できればと思っています。
――最後の質問になります。マクソンはCinema 4Dを代表する3D CGソフトがメインですが、今後もこの軸はずれないと考えて良いでしょうか?
マクソンは創業以来32年間、クリエイティブ業界向けの3Dソフトウェアの開発会社として一貫してやってきました。その3Dという部分は、今後も変わりません。3Dはさまざまなシーンで使われるようになってきており、使われる場所も広がりつつあります。例えば、Vectorworksでモデリングをした建物をCinema 4Dでよりリアルな形に仕上げて、さらにそれをVRのゴーグルで観る。このような使い方は、今後大きく成長するのではないかと思っています。
3Dは新しい技術でもありますので、われわれがどんどんと広げていくつもりでやっていきます。
――ありがとうございました。