プログラミングを学びたい全ての人に向けて開発されたまったく新しい教育用ロボット
DJI JAPANは6月26日、DJI初の教育用ロボット「RoboMaster S1」の説明・体験会を開催した。Robomaster S1を一言で説明するならばラジコンロボットだ。DJIといえばこれまでドローンやクワッドコプターなどの空撮システムでお馴染みのメーカーだが、S1は撮影ではなく教育玩具として設計されている。
それでもS1を紹介するのは、ラジコン型ドリーとしてドリーインやドリーアウトなどの移動撮影に使えるかもしれないし、映像業界で大注目メーカーであるDJIの新製品というのも理由だ。まるでゲームセンターの雰囲気だった体験会の様子も含めてレポートしよう。
最初は、プロダクトマーケティングマネージャーの皆川正昭氏が年次開催する次世代ロボットコンテストを紹介。「RoboMaster」とは、DJIが2013年から主催しているエンジニアをヒーローに、というコンセプトを元に最新の工学技術、ゲーム性、エンターテインメント性が1つになった次世代ロボットコンテストで、昨年は世界中から2万人の学生と400校以上が参加しているイベントだという。日本からは高等専門学校、大学、企業の連合チーム「FUKUOKA NIWAKA」が、2018年から参加している。
DJIは、2013年から、ロボット大会の主催を通じて、ロボット工学教育の分野に投資してきたとのこと。
DJIのプロダクトマーケティングマネージャー、皆川正昭氏
DJI初の地上走行ロボット「ROBOMASTER S1」
RoboMasterは、最新の工学技術、ゲーム性、エンターテインメント性が1つになった、次世代ロボットコンテスト
新製品のRoboMaster S1の「S1」は、「Step 1」の省略。AI、エンジニアリング、ロボット工学に初めて触れる人でも簡単に操作できるというコンセプトを元に設計された、最先端の地上走行型のロボットだという。
シンプルな操作性、専用アプリ、わかりやすいUI、豊富なチュートリアルを搭載。また、AIやエンジニアリング、ロボット工学の経験を積まれたユーザーも楽しめる高度な機能を備えている。一見するとラジコンのように見えるが、小さな機体に機能が詰まったロボットとのこと。DJIは、AI、エンジニアリング、ロボット工学を学ぶ人にとってS1は理想の教育用ロボットだとしている。
S1はモジュラー設計で、ねじとケーブルを使いながら、ゼロから構築することができる
機体前方には、FPVカメラを搭載。FPVカメラは操作を行う際に前を見るだけのカメラだけではなく。AIと連動したビジョンテクノロジーにより、他のロボットの認識、走行トラックの認識、記号や標識などの認識が可能。
低遅延のHD FPVカメラを搭載。手元のタブレットやスマートフォンのスクリーンで確認が可能
ブラスターは、S1のためだけに開発されたゲル弾や赤外線ビームの発射が可能。ゲル弾は無害な物質であり、発射角度を自動制御する安全性も備えている。FPVカメラとブラスターはメカニカルジンバルに搭載され、ジンバルの用ピッチ回転範囲は540°×65°で広い視野が可能。
LEDライトでゲル弾や赤外線ビームの発射軌跡を描き、発射音や反動で、バトルシミュレーションに臨場感を演出
周囲の状況を把握するために、S1には数多くのセンサーを搭載。ボディには、31個、ボディーアーマーには、ヒットポイント検査が6個搭載されている。ヒットポイント検知センサーは、バトルモード時に相手からのゲル弾による攻撃を認知できる。また、音声センサーが搭載されており、音のコマンドを認識できるようになっている。
S1には6つのインテリジェント検知アーマーパネルを配置し、ゲル弾や赤外線ビームの攻撃を検知できるようになっている
S1の特筆すべき機能は、360°全ての方向へ移動を可能にする4つのメカナムホイールだ。車輪にはそれぞれ12本のローラーが搭載されて、前方向、後方向、横方向、対角線方向など、あらゆる方向に移動できる。また、S1には最大出力トルク250mNmのパワフルなモーターを搭載している。
S1には、4個のメカナムホイールを搭載し、各ホイールには、全方向移動を可能にするローラーが12個付属
アプリはS1の全ての機能をプログラミングで動かすことができる。コードはわかりやすいビジュアルプログラミング「Scratch 3.0」と上級者向けのAI領域で活躍している「Python」が用意されている。
S1は、ScratchおよびPythonプログラミング言語に対応し、コーディング初心者からエキスパートレベルの人まで目標に応じて学習することができる
購入時は、パーツの状態で届く。46個のプログラミング可能なコンポーネントで構成され、すべての部品を一から組み立てる。日本、アメリカ中国の3カ国で先行発売中。価格は税込64,800円。DJI公式オンラインストアーや一部のDJI正規販売代理店、DJI取扱店で発売中。
ペットに芸をさせるイメージのプログラムをデモ。簡単にプログラムが可能で、入門者にはお勧め
説明会では、3人のゲストスピーカーが登壇。その中でも、ソフトウェアエンジニアの池澤あやか氏は、ペットに芸をさせるイメージのプログラムを製作し、実際に動く様子を公開。その様子は興味深いものだった。
池澤氏は「S1は大変簡単にプログラムが可能で、LEDの色を変えるプログラムならば2ブロックで簡単に記述することができる。プログラムの入門には理想的ではないか」と語った。
プログラムの簡単さを紹介する池澤あやか氏
「1」のマーカーを見せると、ボディがピンク色に光って回転する。
「2」のマーカーを見せると、マーカーを中心に走るする。
「3」のマーカーを見せると、見せたマーカーを追う。
「4」のマーカーを見せると、写真を撮る。
これから流行ること間違いしなし?!複数プレイヤー同時のバトルモードは要チェック
■レースと対戦モードを体験
説明会のあとには、体験会が行われた。体験会でもっとも盛り上がっていたのは、複数プレイヤーで同時に遊べるバトルモードだ。レースと対戦モードが用意されており、レースモードは番号が表示されたビジョンマーカーを正しい順序でスキャンし、すべてを速くスキャンしたプレイヤーが勝ちとなる。対戦モードは、ゲル弾または赤外線ビームを使用して対戦相手と戦う。複数プレイヤー用のバトルモードは、プレイヤーが対戦相手に対して発動できる めまい、電磁妨害、超速、無敵といった4つのミステリーボーナスもある。
体育館が会場。複数プレイヤーによるレースと対戦モードができるようになっていた
レースは、コースに貼られている4つのビジョンマーカーを用いて認識しながら回る。マーカーさえ認識できれば、どこを通っても構わない。
コースの四隅に設置された「1」から「4」までのビジョンマーカー
レースの様子
対戦は、制限寺内により多くの対戦相手を倒したロボットが勝利するゲーム。撃ち続けると打てなくなるので、慎重に打ち込む必要がある。破壊されてHPがゼロになると、ハートマークで回復が可能。
対戦モードの様子
対戦モードは、スクリーン左エリアがシャーシーコントローラー、スクリーン右がジンバルコントローラーになっておりタブレットのみでも操作が可能。オプションでジョイスティックが用意されており、マウスと組み合わせて操作も可能。実際に操作をしてみると、FPV視点によるタブレットの映像だけで操作が可能で、プレイヤー席から実機を見て操作をすることはなかった。なお、映像の遅延は感じられなかった。
対戦モードの操作画面の様子
■ゲル弾発射体験コーナー
対戦ゲーム以外にも、様々なデモが行われていた。S1の発射モードは、赤外線モードとゲル弾モードの2種類から選択できるが、ゲル弾は発射体験体験コーナーが行われていた。物理的なゲル弾を利用することで、四方向にあるインテリジェントアーマーが利用でき、攻撃を受けた方向がわかる。
■自作プログラム体験コーナー
自作プログラム体験のコーナーでは、ロボマスターアプリで提供されている「自作プログラミング」で作成したプログラム「Spotter」を体験できるようになっていた。参加者がランダムで提示した3つのマーカーを自動認識し、該当する数字を順番で当てていく様子をデモしていた。
■自動運転体験デモコーナー
自動運転のデモでは、人が来た、記号を読み取ったらどうなるのか、ラインフォローはどうなっているのか?ほかの車両がきたときどうなるのか?実際にデモが行われていた。S1のライン認識やビジョンマーカー認識などのAI機能とPID制御を利用している。
■ペット体験コーナー
池澤氏のペットをイメージした自作プログラムもコーナーで公開されていた。S1がマーカーを認識し、回ったり、走ったり、プログラムを通じてペットのように可愛く振る舞う姿を表現している。