txt:手塚一佳 構成:編集部
2019年11月13日。銀座にあるライカプロフェッショナルストア東京にて、ライカカメラ社の新型Lマウントフルフレームカメラ「Leica SL2」の発売が国内発表された。
同カメラは、初のフルフレームLマウントミラーレスカメラである「Leica SL」の次世代機であり、ライカ社の伝統を受け継ぐプロフェッショナルラインのフルフレームカメラだ。11/7に既に国際発表されており、今回は日本国内においての初の実機公開となる。
奇しくも同日はInterBEE2019初日と同じ日であり、動画系機能を重要な機能の一つとして搭載したこの「Leica SL」は、フルフレームセンサー動画の流れを決定的に見せつけることとなった。
この発表会において、ライカカメラAG社主のアンドレアス・カウフマン博士は冒頭、このように述べた。
ライカカメラAG社主のアンドレアス・カウフマン博士自ら来日し、この「Leica SL2」の冒頭プレゼンを行った。ここからもライカカメラ社が如何にSL2に力を注いでいるのかが伺える
「das Wesentliche」であることがライカの、そしてSLシリーズの目指すべきところである。この言葉はドイツ語的な考えで、英語にすると二十以上の意味をもつ(日本語でいう「本質」が一番近い意味となる)。ウルライカから105年、ライカの発売から95年。エルンスト・ライカの「私はリスクを取る」という発言から我が社のカメラは始まった。
そして、55年前初代の(フィルム判レフカメラの)LeicaSL発売。そして4年前、2015年10月の、新しいデジタル版LeicaSLの発売となった。いわば、私としては「SL2=SL4」であり、このSL2は伝統に基づいて作った製品そのものである。
カウフマン博士は「Leica SL2」が同社の伝統的なカメラである事を強く示した
続いて、Global Director Product Division Photoステファン・ダニエル氏はこのようにLeica SL2の特徴を述べた。
Global Director Product Division Photo ステファン・ダニエル氏による安定のプレゼンで、その機能が語られた
SLはデザイン的にも伝統に基づいて作られた。SL2もそのラインに乗っている。我が社らしく既存のSLユーザーはもちろん、ユーザーにならなかった人たちの声も聞き、デザインをしたこのカメラは大変に使いやすく、クリエイターの邪魔をしないデザインになっている。
ボタン配置もメニュー位置もSLやM、Q2等既存の弊社カメラの位置に近く、直感的に使えるようになっている
SLも防滴防塵ではあったが、SL2はそれを更に推し進め、IP54規格に対応し、より厳しい環境でも使える。新開発の47MpCMOSは14bitダイナミックレンジをもち、ISO50000までの高感度にも対応している。SL2はオートフォーカスにも力を入れており、動体を追う設定などもできる。
さらには5軸のボディ内部手振れ補正を持ち、スポーティな撮影にも対応している。576万ドットの高精細EVFは、大変に高速で光学ファインダー並みの撮影体験を約束する。マエストロ3イメージプロセッサーを搭載しており、さらに、カメラ全体の速度アップを測っているのが特徴だ。
動画撮影にも大きな機能の一つとして対応しており、シネマトグラファーの方々への対応もしっかりと考えられているという。特徴的な5K動画の機能に加え、4K60P、フルHDで180Pを実現した高速な映像撮影は十分に納得して貰えると思う、とのことであった。
Leica SL2においては、シネマモードにすると、ISOをASA表示に、シャッター速度が開角度に、F値がT値表記の実際の光量に変わるため、シネマ系ユーザーの人にも使って貰いやすいはずだ、という。 もちろんLeica SL2はLマウントを採用し、アダプターを介して170本のライカレンズ、Lマウントアライアンスのレンズも使える。
説明会場には他社のLマウントレンズもあり、そのレンズ資産の深さ、広がりを示していた。さらには、ついにスマホアプリ「Leica FOTO」がついにビデオ撮影に対応したことも大きい。このアプリはiPadにも対応しており、Lightroom CCに有料で直結したプロバージョンも出すという。
メニューは大きく改善され、従来の配置のメニューの手前に、クイックアクセス画面がある
動画との連携がプレゼン段階でも鮮明に打ち出され、シネマレンズを付けたSL2でカラーグレーディングを行っているであろうイメージ写真も前面に打ち出されていた発表の最後に、ライカカメラ社グローバルマーケティングディレクターのアンドレア・パチェッラ氏とマグナムフォトグラファー、スティーブ・マッカリー氏によるトークショーも開催され、Leica SL2のテスト段階での中国での撮影状況や、その作品などが公開され、大いに会場を盛り上げた。スティーブ・マッカリー氏は映画畑出身と言うことで、PRONEWS読者と近い感性を持っていることだろう。
今まではコダックフィルムカメラを使っていたスティーブ・マッカリー氏であったが、このLeica SL2には大いに可能性を感じたという。特に、わずかな光量でも撮影が可能な点はフィルムよりもアドバンテージが大きく、特に同氏が得意とする日の出日の入りの時間帯の撮影では大いに役立ったという。さらに、構成要素が多い同氏の写真にはディテール描写が不可欠だが、あたかもスタジオカメラをそのまま持ち出したかのようなLeica SL2は、写真構想を邪魔することなく撮影が出来たという。
また、Leica SLシリーズの標準レンズである「ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24~90mm ASPH. 」は全ての撮影において役立ち、特に、歩きながら接近しつつ撮影する今回の撮影スタイルではほぼこのレンズ一本で済ませられるほどの活躍をしたという。
ライカカメラ社グローバルマーケティングディレクターのアンドレア・パチェッラ氏とマグナムフォトグラファー、スティーブ・マッカリー氏によるトークショー。著名なテストユーザー自らがカメラの長期運用の様子を語った
実機のタッチ&トライコーナーでは、多くのSL2が用意され、その感覚を実際に味わうことが出来た。
一見すると元々のSLと変わらないように見えるが、明らかに操作性は向上しており、特に、動画回りの機能は洗練され、非常に撮りやすくなっていた。マイク端子とヘッドフォン端子も装備され、USB-C(USB3.0)とHDMIが用意されていることで入出力も大いに期待できるだろう。
会場では「ATOMOS NINJA V」とのREC連動もC4K24P環境では実機運用できており、動画撮影も本格的なものであることが期待できる。本体内収録もC4Kであればフルフレームセンサーで4:2:2 10bitでの60Pまでの収録が可能であり(5Kではセンサークロップとなった)、L-Log2020のもつ階調表現力を加味すれば、確かにプロ動画機としても可能性は感じる。
残念ながら29分制限はこのLeica SL2においてもまだ継承しているようで、ドキュメンタリーやインタビュー撮影など長回しは、難しいかも知れないが、カット撮影であれば29分で事足りることであろう。
Leica SL2が多数用意され、その性能を試すことが出来た
動画はC4Kが充実しており、フルフレームセンサーで60Pまでの出力が可能だ。5Kだとセンサークロップとなる
「ATOMOS NINJA V」とのREC連動もC4K24P環境では実現していた
多数のレンズ資産を抱えるLマウント群。先代SLから始まったフルフレーム向けLマウントレンズ群は、今や一大勢力となっている
Leica SL2は11月23日に日本でリリースされるとのことで、非常に発売が楽しみである。