キヤノンは、「EOS-1」シリーズの最新機種として「EOS-1D X Mark III」を2020年2月中旬に発売する。希望小売価格はオープン、同社オンラインショップでの販売予定価格は税別80万円。
新開発の有効画素数約2010万画素(総画素数約2140万画素)フルサイズCMOSセンサーと、新映像エンジン「DIGIC X」やAF専用のセンサーなど、キーデバイスを一新し、基本性能が向上。これにより、AF・AE(自動露出制御)を追従させながら、光学ファインダー撮影において最高約16コマ⁄秒、ライブビュー撮影において最高約20コマ⁄秒の高速連写を達成。
CMOSセンサーの低ノイズ化と「DIGIC X」によるノイズリダクション性能の向上により、静止画常用ISO 感度が最高ISO102400まで拡大。暗所でもノイズを抑えた撮影が可能。新開発の16点分離ローパスフィルター「GDローパスフィルター」により、4点分離であった従来機種より解像感が向上。斜め方向にも分離することで、斜め方向の色モアレや縦横方向の輝度モアレも効果的に抑制するという。
それぞれのレンズ設計値に基づいた補正を行うことで収差や回折ボケを適切に補正する「デジタルレンズオプティマイザ」がRAW現像時だけでなく撮影時から使用可能(現行のEFレンズデータはカメラ内に保持。TS-Eレンズは非対応)。また、人間の視覚特性に基づくHDR PQガンマによるHEIF(10bit)記録が連続撮影時も可能(電子シャッター撮影時を除く)。ハイライト部での滑らかな階調や深い色合いを再現している。
新ミラー駆動システム
従来機種で開発したミラー振動抑制システムをさらに発展させた新ミラー駆動システムを開発。光学ファインダーにおける像消失時間を短縮し、高速撮影時も被写体を追いやすいファインダー視野を実現。従来のラインセンサーではなく、正方画素を高密度に配置した「High-res AFセンサー」を新たに搭載。最大191 点(クロス測距点最大155 点)の測距点から得られる高解像な信号を解析することで、光学ファインダー撮影時に高い合焦精度を実現し、AF測距輝度範囲が拡大。
光学ファインダー、ライブビューのいずれの撮影時においても、ディープラーニング技術を用いて開発した頭部検出アルゴリズムにより、顔や瞳が検出できないときでも安定した追尾を実現。さらにライブビュー撮影時は、被写体の瞳を検出してフォーカスを合わせる「瞳AF」も併用可能(「顔+追尾優先AF」時に機能)。
高い追尾性を実現する「AIサーボAF IV」を搭載。撮影する被写体に合うAF特性を選ぶだけでAIサーボAF/サーボAF撮影を行える「AFカスタム設定ガイド機能」に、「被写体追従特性」と「速度変化に対する追従性」を自動的に設定するAF特性「Case A(Auto)」を追加。また、動体に対するアルゴリズムの進化により、かげろうや遠ざかる被写体でも精度の高いAIサーボA/サーボAFが可能だとしている。
各画素が撮像と位相差AF の両方の機能を兼ねる「デュアルピクセルCMOS AF」が進化。ライブビュー撮影において、映像表示範囲の最大約100%(縦)×約90%(横)でAFが可能。さらに、自動選択時AFエリア分割数の細密化(最大525分割)により、被写体を捉えて滑らかに追尾することが可能。「DIGIC X」との組み合わせにより、ライブビュー撮影時のAF測距輝度範囲が拡大。
4K/60Pの動画撮影に加え、YCbCr 4:2:2/10bit⁄Canon Logに対応。また、RAWデータでの動画の内部記録も可能。クロップ(切り出し)なしのオーバーサンプリングによる4K/60P動画の撮影を実現。風景などのシーンにおいて、レンズの画角を生かした動画撮影が可能。また、設定を変更することで、クロップした4K動画の撮影にも対応。
スマホなどの携帯端末へのWi-Fi/Bluetoothによる接続に対応。また、撮影地点の位置情報を自動的に記録するGPS機能も搭載している。有線LAN機能で高速インターフェースを採用し、従来機種より高速に画像データの転送が可能。
ネットワーク接続に関するユーザーインターフェースを従来機種から改善。メニューにネットワークタブを新設し、通信機能の設定から活用までを集約。通信設定をあらかじめオフラインで編集可能なため、複数ネットワークの設定も効率化。
FTP、FTPS に加え、SFTPでの転送が可能となり、最新の認証・暗号化通信技術に対応した安全性に優れる通信を実現。LAN接続の認証規格であるIEEE 802.1X に対応し、スポーツイベント会場など、EAP 認証3が求められる環境に対応。
タブレット端末上でほとんどの撮影操作、設定が完結できる機能「Browser Remote」(2020年4月ファームアップ予定)により、タブレット端末とカメラ本体の接続時に、SSL暗号化通信に対応し、遠隔操作時の安全性が向上。従来の「EOS Utility」に加え、「Browser Remote」でも主要な新聞社/通信社の参画するIPTC(国際新聞電気通信評議会)のメタデータが編集可能。
また、「ロボティックカメラシステムCR-S700R」にも対応しており、遠隔操作を実現。
堅牢性と軽量化を両立できる高い剛性を備えたマグネシウム合金製ボディーを採用。カメラ本体の外装部品に新構造を採用し、従来機種より約90g軽量化した質量約1,440gを実現。
CFexpress用のダブルスロットを搭載。CFexpress カード採用による書き込み速度の向上と、RAW+JPEG でも余裕ある連続撮影可能枚数を実現。また、電源には「バッテリーパックLP-E19」を使用。電力消費マネジメントの見直しにより、撮影可能枚数が約2,850 枚に増加しているという。
バックライト対象ボタン(黄色)、スマートコントローラー(赤色)
AFスタートボタン内部に指の動きを光学的に検知するポインティングデバイス「スマートコントローラー」を新たに導入。ボタンから指を離さずにすばやくAF測距点位置を設定することが可能。暗所でのメニュー操作や再生操作をサポートするため、背面の一部の操作ボタンにバックライトを採用している。
ワイヤレスファイルトランスミッター「WFT-E9B」
有線LAN機能や、新製品のワイヤレスファイルトランスミッター「WFT-E9B」(2020年2月中旬発売:希望小売価格税別8万円)を用いて、高速で安定した画像転送が可能。WFT-E9Bは、従来機種の「ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E8B」と同様に2.4GHz帯と5GHz帯の無線LANに対応。最大約150mの長距離無線通信に対応している。