Blackmagic Designの発表によると、ProBalanceの公共広告「Stay Home」が、クリオ賞受賞歴のあるキーラン・コーシー監督によりBlackmagic Pocket Cinema Cameraで撮影されたという。この公共広告は、自宅の裏庭で自身の犬ナイジェルと娘を題材に同氏が撮影し、近所に住むカラリストであるチャールズ・ガーストナー氏がDaVinci Resolve Studioでグレーディングを行い、完成させた。

カリフォルニア州ロングビーチを拠点にするコーシー監督は、かつては代理店のクリエイティブ・ディレクターであったが、現在はCM監督として活躍しており、過去にはアジアのブランドのCMを多数手掛けている。マレーシアのペットフードブランドであるProBalanceが、3月中旬、クアラルンプールにある制作会社Directors Think Tankを通して、同氏が家の外で撮影できないことを踏まえた上で、この広告の撮影を依頼してきた。

クリエイティブ・エイジェンシーのImaginary FriendsとDirectors Think Tankと共に制作された「Stay Home」は、忍耐強い犬が、家にいること、そして社会的距離の確保の重要さを教える様子を捉えた作品。同作では、犬と飼い主が西部劇調のにらみ合いを繰り広げ、動かずに家にいることが身を守ることにつながる、と犬が飼い主に教えている。

コーシー監督:マレーシアのリッツ・クラッカーのCMをThink Tankと共に3月に撮影していました。その頃ちょうど、世界各地で国境が閉鎖され始めていたので、仕事を一旦保留にし、アメリカに急いで戻ることにしました。その数週間後、Think TankのプロデューサーがProBalanceの公共広告の撮影を依頼してきました。以前にペットを扱った作品を数作撮影したことがありました。また、先方は私が自宅で制作できる作品を希望していました。

数年前、別のペットCMを撮影した際に撮影監督がPocket Cinema Cameraを使っているのを見た後、自分用に購入しました。また、代理店の多くの美術監督がPocket Cinema Cameraを持っていることにも気づきました。Pocket Cinema Cameraでは、はるかに高額な他のカメラに引けを取らないシネマライクな美しい映像が撮影でき、小型なのでどこでも使えます。そう言った理由で、本作の依頼を引き受けることができ、また社会的な距離を置いたまま仕事を継続できています。

「Stay Home」では、愛犬ナイジェルと同氏の娘が庭に座って違いに見つめ合っている。女の子が椅子から立とうとすると、ナイジェルが軽く吠えて、じっと座って家にいることで、身を守ることができると教えている。2日間で撮影された同作は、犬の肩越しのショットなどを含む、様々なアングルからのクローズアップショットを多数含んでいる。

当初は、携帯電話で撮影するように依頼されました。代理店では、家で仕事している人に対して、プロ仕様のカメラを使用してほしいと依頼するのは無理な注文だと思ったそうです。しかし、私は、素晴らしい映像が撮影できるPocket Cinema Cameraを所有しているので、それを本作の撮影に使用することは考えるまでもないことでした。また、小型なため、面白いアングルから撮影できました。

ナイジェルの肩越しの撮影は、最も難しいショットでした。息子が照明とサンシェードを手伝ってくれ、犬のおやつ係としても活躍してくれたのですが、ナイジェルがじっと座っていることはありませんでした。そこで、私が寝っ転がって、ナイジェルを脚の間に挟んで動かないようにすることで、ようやく上手く撮影できました。Pocket Cinema Cameraは非常に軽量で小型なため、このショットを撮影する上で機敏に動くことができました。

ポストプロダクションは、クリエイティブ・ディレクター兼カラリストのチャールズ・ガーストナー氏が手掛けた。コーシー監督とガーストナー氏は以前に仕事をしたことがあり、偶然にも近所に住んでいた。コーシー監督が撮影し、自身のDaVinci Resolve Studioで簡単な編集とグレーディングを行った後、ガーストナー氏にフッテージを引き継いだ。

ガーストナー氏:私はカラリストで、過去10年以上に渡ってDaVinci Resolve Studioを使用しています。また、自宅の車庫にDaVinci Resolve Studioを軸としたポストプロダクション用の部屋があります。これまで、Pocket Cinema Cameraで撮影された多数のCMをグレーディングしてきたので、作業のしやすい良いフッテージが得られると分かっていました。

同氏はDaVinci Resolve Mini Panelを用いて、DaVinci Resolve Studioでグレーディングすることで、穏やかな感じのルックとフィールを作り出した。

誰もが非常に難しい状況に置かれています。しかし、「Stay Home」では笑顔をもたらすような暖かなルックを与えたかったんです。グレーディングは極めてシンプルで、ショットごとに5つか6つのノードしか使用しませんでした。また、パネルを使用することで希望するルックを得ることに専念できました。

現在アジア各地で放送されている「Stay Home」の制作が終了した現在、コーシー監督は世界各国のブランドの作品を複数手掛けている。また、本作の続編となり得る作品も制作中だ。

コーシー監督:Pocket Cinema Cameraは極めて直感的に使用できるカメラで、背面に大型のスクリーンが搭載されているため、イメージが白飛びしていたり、焦点がずれていることを簡単に把握できます。フッテージはシネマライクです。新型コロナウイルスが出回っているからといって、画面に映し出される広告がすべてモンタージュや古いフッテージである必要はないと思います。

Pocket Cinema CameraのようなカメラとDaVinci Resolve Studioを使用することで、外出禁止令が出ていても、あらゆる場所でオリジナルのコンテンツの優れた作品が作成できます。時として、制限があることで、手元にある物を使ってやりくりする必要に迫られますが、それによってシンプルなアイデアを活かし、いろいろと創意工夫して作品を生み出すことを学べると感じています。