取材・文:編集部

CINEMA EOS SYSTEMの高画質と動画機能、EOS Rの小型軽量ボディと機動性を掛け合わせた「EOS C70」

CINEMA EOS SYSTEM初のRFマウント。ショートバックフォーカスにより、ボディの奥行きを短縮した小型ボディ設計を実現

シネマカメラの中では機動力と小型軽量ボディを売りとするCINEMA EOS SYSTEMに、さらに小型軽量を実現した「EOS C70」(以下:C70)が登場した。

※360°「回転」「拡大」「縮小」が可能で本体細部確認できます。

C70は、CINEMA EOS SYSTEMのもつ高画質性能や動画機としての性能を受け継ぎながら、EOS Rシステムで実現したRFマウントによる小型軽量ボディ、機動性を掛け合わせて誕生した新コンセプトモデルとなる。ここではC70の注目すべきポイントをピックアップして紹介しよう。

3ダイヤル+ジョイスティックを配備した多機能グリップを搭載

C70は2020年11月発売で希望小売価格はオープン。市場想定価格は約60万円。ラインナップの位置づけは、報道やブライダル向けのC100シリーズやC200シリーズに近い感じだが、C100シリーズの後継機種「C100 Mark III」というわけではない。今までの3桁番台のCINEMA EOS SYSTEMの流れとは少し異なり、2桁番台の名称が付けられている。

また、キヤノンのイメージング機器の型番には、エポックメイキング的な製品に「7」を使う慣わしがある。例えば、CINEMA EOS SYSTEMのフラフシップモデル「EOS C700」やXFシリーズ「XF705」などの歴代主要製品が挙げられるが、C70も「7」を使った特別な思いが込められた新製品といえる。

C300 Mark IIIと同じ4Kスーパー35mmDGOセンサーを搭載

C300 Mark IIIで初搭載したDGOセンサーを搭載

特徴は、最大16+Stopsのダイナミックレンジの4Kスーパー35mm DGOセンサー搭載だ。C70は小型カメラでありながら、C300 Mark IIIと同じイメージセンサーを採用している。記録フォーマットはXF-AVCとMP4で、サンプリングは4K 4:2:2 10ビット、フレームレートは4K120Pのハイエンドな動画性能を備えている。Cinema RAW Lightには未対応だが、中身はほぼC300 Mark IIIといった感じだ。

DGOセンサーはセンサー1画素に異なるゲイン出力するアンプをもっており、異なるゲインを同時出力して高度なリアルタイム合成処理を特徴としている。片方は飽和優先ゲイン出力を行うアンプで、ハイの部分のグラデーションをしっかり残し、もう片方はノイズ優先ゲイン出力を行うアンプで、暗部の階調をしっかり残す。

2パターンのゲイン出力をリアルタイムで合成して、ハイからアンダーの部分までなだらかな階調を最大16+Stopsのダイナミックレンジで実現する。ノイズレベルは低ノイズを採用し、基本的にどのISO感度で撮ってもノイズレベルの低さがDGOセンサーの特徴だとしている。

他社のシネマカメラはデュアルネイティブISOのような方式で、ベース感度を2段階もってノイズレベルを抑えていくのが一般的である。一方、CINEMA EOS SYSTEMは基本的にベース感度以上で撮影すれば、ダイナミックレンジとノイズのバランスが最適化された状態で撮影可能というのが、キヤノンのノイズ耐性の考え方となっている。この考えはDGOセンサーとなっても受け継がれている。

薄型ビルトインNDユニットを搭載

薄型ビルトインNDユニットを搭載

C70はRFマウントを採用。RFマウントは20mmのショートフランジバックだが、NDフィルターをきちんとボディに搭載している。薄さはEOS C200の約半分となる約6mmに抑えた薄型電動式NDユニットを新開発し、従来のCINEMA EOS SYSTEMと同等に5段階の明るさ調整が可能。ボディ右側面にNDボタンを設置し、CINEMA EOS SYSTEMの操作性を踏襲している。

記録メディアはAスロット、Bスロットで異種同時記録に対応

多様な記録方式に対応したデュアルSDカードスロットを搭載

記録メディアは、SDカードを2スロット搭載。CFexpressカード採用のカメラが増えているが、初期メディア導入コストの問題でSDカード採用を歓迎するビデオグラファーの方も多いのではと思う。

特に目を引くのが、Aスロット、Bスロットでの異種同時記録の対応で、これまではAスロットとBスロットで同じ解像度や記録フォーマットでしか記録できなかったが、C70ではAスロットを「4K」、Bスロットを「フルHD」のように異なる解像度を設定でき、「XF-AVC」と「MP4」などの記録フォーマット違いも設定可能となっている。

さらにブライダル向けの機能としては「4Kバックアップ記録」も注目ポイントだろう。常時記録の機能で、Bスロットは常に最新の映像を記録し続け、AスロットはREC連動設定が可能。万が一逆RECを起こしても、常時記録のBスロットデータからサルベージして救出可能となる。

業務用途に応えるインターフェイスを搭載

2系統のminiXLRに加えてヘッドフォン端子、フルサイズHDMI端子を搭載

インターフェイスは、miniXLR端子のインプット端子1、インプット端子2を搭載。BMPCCでも採用されているお馴染みの端子で、通常のXLRには変換が必要。マイク端子やヘッドフォン端子、リモート端子も備えている。

HDMI出力端子はType-Aを搭載。Micro HDMIコネクタやMini HDMIコネクタでは業務用途では不安が残るが、しっかりと広口タイプのType-Aを備えている。Wi-Fiアダプター用のUSB端子のType-Cを搭載し、市販のWi-Fiアダプターを使えば、ブラウザリモートが可能になる。

前面側にはT/C入力端子用のBNC端子を搭載。マルチカム運用も想定しており、これまで3連リング搭載のビデオカメラで撮っていた現場をC70で置き換えることも視野に入れている。

取り回しやすい4:2:0 10ビットを新規搭載

記録ファイルフォーマットに関しても特徴がある。10ビットのさまざまなビットレートがあり、C70では4:2:2 10ビット1択ではなく、4:2:0 10ビットを用意している。

LUTを充てたり、自分でカラー編集する場合は10ビットのサンプリングはほしいが、4:2:2が常に必要ではないだろう。であれば、SDカードになるべく効率よく収録でき、かつ10ビットを維持できる生産性とクオリティが両立した4:2:0 10ビットのフォーマット対応は便利だ。

ルックファイル機能により、オリジナリティのあるルックで収録可能

キヤノンによると、C70は映画撮影のようなワンカットずつ大事に撮影してポスプロに入れてクリエイティブを追い込んでいくカメラではなく、撮影から納品までをスピード重視で行うためのカメラだとしている。本来は時間をかけるクリエイティブをスピード重視で実現できる新機能が「ルックファイル機能」だ。

ルックファイル機能は「.CUBE」ファイルをカメラに登録、インポートでき、カスタムピクチャーに割り当てられる機能で、SDカードにダイレクト収録が可能になる。例えば、ブライダルでは式が始まって何時間後かにはエンドロールを完パケしてプロジェクターで流すなど、基本ブライダル案件は短納期だが、そんな案件にもオリジナリティのあるルックで収録可能となる。

頭部検出に対応するEOS iTR AF Xを搭載

CINEMA EOS SYSTEMとして頭部検出アルゴリズムを搭載したEOS iTR AF Xを初搭載

オートフォーカスは、デュアルピクセルCMOS AFを採用。EOS R5ほどではないが、ディープラーニングによる頭部検出対応のEOS iTR AF Xを搭載している。

これまでの顔検知は、顔が正対していれば枠が出てできてフォローするが、横顔になるとフォーカスが外れてしまうことがあった。C70では頭部をしっかり検出してくれるので、横顔でもフォロー可能だという。人物撮影のインタビューなどで、フォーカスワークの安定が期待できそうだ。

C70専用のマウントアダプター「MOUNT ADAPTER EF-EOS R 0.71×」を新開発

EF-EOS R 0.71×を使うとフルサイズの画角を維持しつつ、約1段明るいFナンバーで撮影が可能になる。

C70専用に0.71倍の縮小光学系を採用したマウントアダプター「MOUNT ADAPTER EF-EOS R 0.71×」が登場する。EF24-105mm F4L IS II USMのレンズと組み合わせ使うと、EF24-105mmフルサイズそのままの画角で使用でき、F2.8となる。EF-EOS R 0.71×の発売時点でフルサポートの対応レンズは「EF16-35mm F2.8L III USM」「EF24-70mm F2.8L II USM」「EF24-105mm F4L IS II USM」の3機種。

フルサポートしていないレンズを搭載した場合、非対応の確認表示が表示されるが、撮影自体は可能。撮影情報表示に若干の誤差が出るが、画角もフルサイズの画角になるという。

生産性やスピードを重視した現場に注目のカメラ

100万円以下の動画に特化したカメラゾーンは、現在各社が攻勢をかけてきている。Blackmagic DesignはPocket Cinema Cameraシリーズ、パナソニックはGHシリーズやS1Hなど、競合ひしめく市場になっている。特にRFマウントでスーパー35mmセンサーといえば、REDの6Kシネマカメラ「KOMODO」がプレリリースを開始している。KOMODOはREDCODEのRAWで撮ってポストプロダクションで作り込む用途に重宝されそうだ。

一方、C70は、ワンマンで効率よく撮影から納品までを仕上げていくのに最適なカメラといえるだろう。映像業界では新型コロナウイルスの影響で、ビデオグラファーがワンマンで撮ってすぐに納品をする企業VP案件が増えている。C70は、そんなスピードを求められる現場で重宝される、ビデオグラファー注目のカメラとなりそうだ。

EOS C70の特長を紹介