Blackmagic Designの発表によると、受賞歴を持つシッダールト・スリニヴァサン監督の最新ホラー映画、「KRIYA」のカラーグレーディングに、DaVinci Resolve Studioが使用されたという。グレーディングは、デリーに拠点を置くカラリスト、ディヴヤ・ケア氏が担当した。

「KRIYA」は、若きDJ、ニールの悪夢を描いている。ある夜、ニールはシターラという美しい女性に声をかけられ、死期の迫ったシターラの父親を取り巻く、宗教的な魔術と幻想の世界へと入り込む。同作は、2018年にインドにある築150年の植民地時代の大邸宅で10夜に渡って撮影され、2020年ファンタジア国際映画祭でプレミア上映された。

シッダールト・スリニヴァサン監督は、閉所恐怖症を引き起こすような狭苦しく赤味がかったルックと雰囲気を思い描いており、それはポストプロダクションで実現するべきだと考えていた。

スリニヴァサン監督:一箇所の現場、それも精神的に気分が重くなるような現場で、わずか10夜で撮影することは時間との戦いでした。「KRIYA」は予定通りに完成させることが非常に困難な作品でしたね。作品のルックは、ポストプロダクションのカラーグレーディングで仕上げることになると分かっていました。

ディヴヤと私は、大変ではあるけれどやりがいのある試行錯誤を2ヶ月繰り返し、同作の最終的なルックに行き着きました。それは自然で暗く、赤味がかった高コントラストのルックです。いわば、温かみのあるホラー映画ですね。

グレーディングにおける大変な作業は、DaVinci Resolve Studioがすべて行ってくれたので、私は監督としての仕事を円滑に行うことができました。また、ディヴヤと私はフッテージにダイアログを入れる実験ができました。ディヴヤは高度に洗練された美的感覚を持っており、DaVinci Resolve Studioに非常に満足していました。

素晴らしいのは、作品の最終的なルックが定型化されていながらも、RAWフッテージにより“有機的”で自然な仕上がりになったことです。この作品には色が付いているものの、古びたセピア超のフィールを実現できたのではないかと思います。意味が伝わると良いのですが。正直なところ、ディヴヤはフッテージを極限まで調整しましたが、DaVinci Resolve Studioは彼女の意図を汲んでくれました。

ケア氏:私は多くの現代映画、特にホラーのジャンルを、映画の内容への共鳴というよりは、視聴者の想像との共鳴として見ています。今回の作品、あるいはフィルムに収められたものは、視聴者の心に差し挟まれた“合図”にすぎません。その実際の影響は、視聴者の心がその合図から引き出すものです。作品のカラーの深さ/色相を微調整できるDaVinci Resolve Studioの機能のおかげで、私たちが描き出したかった根底の緊張感を強調することができました。

同作では、閉所恐怖症の雰囲気を維持するために、多くのシーンがクローズアップやミドルショットで構成されており、いくつかの超クローズアップも含まれる。作品を通じて、スリニヴァサン監督とケア氏は、ホラー映画の典型的なブルー/グリーンのトーンを避け、すべてのショットで暗さのフィールを強調した。

スリニヴァサン監督:この作品の赤味がかったトーンは、直感的、情熱的、暴力的な感情を無意識のうちに呼び起こします。身動きせずに立っていなければ焼かれる、そしてその延長上にある、逃げることができないという無力感が際立ちます。

このルックを実現するために、スリニヴァサン監督はケア氏にシャドウとスキントーンを活用するよう伝えたという。

「私たちが恐れているのは暗闇ではなく、暗闇に潜む何かである」ということわざがあるように、シッダールトは作品を極限まで暗くして、シャドウを多用したいと考えていました。そこで私たちはDaVinci Resolve Studioでログウィンドウを色々と試して、シャドウとハイライトを調整しました。

シャドウを多用したことで、ショットが閉所の恐怖を強調するものになりました。また、多くのクローズアップやミドルショットには、強めのビグネット効果を適用しました。ウィンドウを使用して人物の顔をトラッキングして、それぞれの異なるスキントーンに応じてシャドウを強調しました。

この作品で一番ドラマチックなショットは、主人公の死んだ父親が暗い廊下をゆっくりと歩くシーンである。彼の目は大きく見開かれ、血にまみれている。このショットは、予告編やプレスキットで使用されており、視聴者が最初の段階で作品の雰囲気を設定するための重要な役割を果たしている。ケア氏は、このショットのグレーディングに関してこのように説明している。

ケア氏:暗くて退屈なルックではなく、暗くてドラマチックなルックのイメージにしたかったんです。カーブウィンドウで、すべてのハイライトをコントロールできました。部屋全体が火明かりで照らされているように見えます。このショットでは、ミッドトーンのディテールを強調して、血が目立つようにしました。ショットを暗くしたことで、血の色が黒に近くなってしまったので、部分的にキーイングして、パラレルノードを使って赤くしました。DaVinci Resolve Studioの輝度カーブウィンドウが上手く機能したので、すべてのショットで血の色を正確に調整できました。

スリニヴァサン監督:そうですね、仕上がったショットを見てワクワクしました。今回撮影監督を務めたカラン・タップリール、ラクシュマン・アーナンド、そして私は結果に大変満足でした。俳優のスキントーン、照明、血糊のすべてが一体となり、優れたショットになりました。カランはそのシーンをジンバルで撮りました。場所は邸宅の玄関ホールで、片側は外の世界に面しています。もちろんフッテージはDaVinci Resolve Studioで加工されました。血の色を暗くしましたが、液体状の血糊が光を反射していたため、とてもリアルに見えました。

「KRIYA」のグレーディングでは、ディヴヤと私は緊密に協力しあいました。彼女がDaVinci Resolve Studioに精通していることが、同作の最終的なルックと雰囲気の制作にどれほど役立ったか、どれだけ誇張してもし過ぎではありません。多くの視聴者もこの事実に同意してくれています。個人的には、色の観点から言うと、私が思い描いていた悪魔をDaVinci Resolve Studioのおかげで映像表現できたと思っています。私が心で思い描いていた、言葉で言い表せないものが、ソフトウェアによっていとも簡単に映像になり、確固としたビジュアルに変換されるのは驚きでしたね。